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「ベートーヴェンは異世界だって最強です? ~"元"悪役令嬢は名曲チートで人生やり直す~」  作者: 呑竜
「第四楽章:二台のピアノのためのソナタ」

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「出版のススメ」

 聞けば、ハンネスのお父さんはグラーツでも5本の指に入る音楽出版社の社長さんらしい。

 音楽出版社、とだけいうと何をしている会社かわからないかもしれないが、要は作曲家から曲を買い取って楽譜として販売する他、音楽新聞や音楽雑誌を発行したり、楽譜自体が高くなかなか手が出せない(1冊辺り金貨1枚、つまり日本円換算で1万円ほどする)層に向けてレンタルしたり、音楽サロンやオペラ、コンクールやコンサートの開催なども行う音楽関係の総合会社なのだ。 


 んで、そこでわたしの曲を出版しないかと、売れば当然利益が出ますよという話。

 もちろんどんな曲でもいいというわけではない。駄曲を出せば会社の看板に傷がつくので、販売担当部長、出版担当部長、社長という3段階の厳しい審査を通らなければならないのだが……。

 

「大丈夫、テレーゼなら、通る、間違いない」


 わたしの曲ならば間違いなく審査を通り商品となるだろう、それどころか近年稀に見るベストセラーになる可能性が高いと、ハンネスは鼻息荒く断言する。


「ああ~……なるほどね~」


 こっちへ来てからわたしが弾いた曲と言えば、ベートーヴェンやらモーツァルトやらショパンやら、向こうの世界の偉大な作曲家たちの名作ばかりだもん。

 あんなの、こっちの世界に持ち込めばそりゃあオーパーツ扱いさ。音楽革命ぐらいの評価は受けるだろうよ。

 基本買い切りで印税などはない世界だが、ものによっては1曲金貨100枚(日本円換算で100万円)を超す儲けだって出るだろうよ。


 間違いなくいい話。出版業界にコネが出来るのも相当デカい。

 んん~、でもなあ~。

 過去の偉大な作曲家たちが血のにじむような努力の末に書き上げた曲を売って金儲けとか、さすがに心が痛むわけですよ。

 人として、ピアノ弾きとしてもさ、わたしにだってプライドがあるんだよおー。


「ごめんね、ハンネス。わたしを買ってくれるその気持ちはありがたいんだけど、受けるわけにはいかないんだあ~」


 胸の前で手を合わせて謝ると、ハンネスは「えっ……」としょんぼり顔をした。

 わたしの曲が出版されるかもしれないと目をキラキラさせていたウィルも、一緒になって「ええ……っ」と泣きそうな顔をした。

 よっぽど期待してくれていたのだろう、見てるこっちが胸を痛めてしまいそうな顔をしている。


「ご、ごめんねふたりとも。別にもったいぶったりしてるわけじゃないし、ハンネスのお父さんの会社を疑ったりしてるわけでもないんだけどさ。ただ単にその、信条の問題でね? わたしってばそうゆー派手な感じのものに向かない性格だから」


「な、なんだったら、匿名とくめいでもいい。顔を出さず、別の、名前で、それでも、いいから」


 ハンネスはなおも諦めない。

 よっぽどわたしの曲を出版したいみたいで、顔を真っ赤にして食い下がる。


「あれを、出さないのは、もったいない。というか、音楽への、冒涜ぼうとくだっ」

 

「そんなおおげさなものじゃないわよ。たまたま巡り合わせが良かっただけ、神様の思し召しというか……」


「もしっ、テレーゼがっ、出さないのだとしてもっ」


 のらりくらりとかわそうとするわたしに、しかしハンネスはどこまでも踏み込んで来る。

 

「きっとっ、誰かがっ、出版するっ」


「誰かがって……ああーそっか……」


 わたしの演奏を耳コピした誰かがそれを楽譜に起こし、あたかも自分が作曲したものだという風に振る舞うかもしれない。

 なにせ録音装置なんてない世界だ。完全に出した者勝ち。

 いったん出版してしまえば、あとから何を言ったところで勝ち目はない。

 偉大なる巨匠たちの名曲は、すべて心無い誰かのものになる。なってしまう。


「しかもっ、それはきっとっ、ちゃんとしたものにはならないっ。おおまかなとこはっ、聞き取れてもっ、細かな部分はっ、真似出来ないっ。結果っ、似てるけどっ、違うっ、微妙な曲になるっ」


 そんなの許せないと、ハンネスは言う。

 名曲が駄曲になり、しかもそれが原曲扱いされるのは絶対ダメ。

 音楽出版社の社長の息子として、それだけは絶対に許せないと。

 

「ん~……んんん~……」


 そこまで言われてしまうと、わたしとしても無視は出来ない。

 数多の巨匠の名曲をこの世に現出させたのは他ならぬ自分であるわけだし、中途半端な真似は出来ない。

 悩んだ末に、わたしはひとつの結論に達した。


「オッケーオッケ、わかった。わかったよハンネス、ウィルもさ。お願いだから半泣きになるのやめて」

 

 ふたりの頭を撫でると、わたしはため息をついた。

 

「やるよ、やる。曲を出版して、他の誰にもパクられないようにする。おっと待った待った、喜ぶのはまだ早い」


 きゃっきゃとハイタッチをかわして小躍りせんばかりのふたりに、わたしはブスリと大きな釘を刺した。


「出版はする。多くの人に買ってもらう。でも、お金は(・ ・ ・)要らない( ・ ・ ・ ・)

現実世界でいうと、ベートーヴェン、モーツァルトなどの超有名どころの曲ですら日本円にして1曲100万ぐらいが関の山だった模様です。


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