「金曜会」
放課後に演奏室を借りて、みんなの要望通りに小品を数曲演奏した。
リリゼットは1曲終わるたび悔しそうな顔をし、アンナはツンデレっぽく評価してくれ、ウィルとクロードは手放しの激賞をくれた。
アイシャとミントは感極まったようにハンカチで目元をぬぐい、ハンネスは小難しい言葉を並べて理屈っぽく褒めてくれた。
それで終わりというのもなんなので、持ち回りでみんなも弾くことにして、ついでにひとりひとり講評まで行った。
今のとこ良かったよとか、もっとこうしたらいいんじゃないとか。
決して責めることはせず、ただただ前向きに音楽について語り合った。
好評につき毎週行われることになったその集まりは、開催される曜日から『金曜会』と呼ばれるようになった。
こっちの世界の曲をあまり知らないわたしにとって、この集まりは非常に役立った。
なぜって、授業で行われる曲はもちろんだけどすべてこっちの世界の曲だから。
作曲家の意図や素性や歴史背景などのわたしが知らない情報をみんなが寄ってたかって教えてくれるので、『音楽解析』がとても捗った。
ちなみに『音楽解析』とは何かというと、曲を分析し構造を理解した上で弾くことでその曲の100%を引き出すための学問だ。
なぜここはハ長調なのか、なぜここは休止符が打たれているのか、なぜここの和音はドミソ、ファラド、ソシレと展開するのか。
楽譜にまつわるいくつもの『なぜ』を原子レベルまで解き明かすことで、その深奥に辿りつけるというわけだ。
生前はママに頼りっきりだった分野だけど、みんなと一緒に取り組むうちに感覚が掴めるようになった。
一度コツを覚えたらあとは簡単で、わたしはみんなが驚くほどの速度で『音楽解析』が出来るようになった。
成果はさっそく表れた。
今まで苦手としていた音楽論や音楽史、読譜などを担当する先生たちからの評価がぐんと上がり、元々得意だったピアノ実技の先生からはべた褒めをいただけるようになった。
クラスメイトたちがわたしを見る目も変わり、話しかけてくれる機会が一気に増えた。
お、これはいいんじゃない?
いい感じの流れが来てるんじゃない?
一気に好転して来た学生生活にワクワクしているところへ、さらなるビッグウェーブがやって来た。
ある時ハンネスが、相変わらずの真面目くさった顔でこう言ったのだ。
「て、て、テレーゼの曲を、うちの、会社で、出版、しないか?」
いつものようにどもりながら、驚くべきひと言を──
まさかの出版、作曲家デビュー!?
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