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銃の知識ゼロの世界で弾丸補充スキルを授かった冒険者、案の定Bランクパーティにクビにされる~銃を手に入れてから狙撃無双で英雄と呼ばれる件~  作者: ma-no
二章 逃亡生活

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070 パーティ結成


 勇者パーティが王都から消えてから2日。シモンたちは念のため岩場のベースキャンプに待機していたが、コルネーリア女王からもう大丈夫だと連絡が来たので隠し砦に戻った。


「シモンの策のおかげで、勇者パーティは王都から逃げ出したでありんす。いまは出口の迷宮街にいるらしいでありんす」

「あ、バレなかったんだ。早すぎると思ったんだけどな~」

「その時、勇者パーティは泥酔してたらしいでありんすからな」

「そんな時に撃たれると思ったらたまったもんやありまへんな。相当慌ててたんちゃうか? プププ」


 コルネーリア女王から報告を聞いていたら、プックが話に入って笑いが起こる。実際、勇者パーティは転がるように酒場の裏口から出て行ったと報告されていたから大笑いだ。


 ちなみにこの作戦は皆の合作。シモンが恐怖を染み込ませ、プックが銃声に近い音を出す方法を編み出す。

 あとはコルネーリア女王がシンプルでも恐ろしい文言を王都にいるエルフ兵に伝え、手紙を書かせて渡してもらったのだ。


 その兵士は「こんなので効くのかな~?」と思っていたけど、勇者パーティの慌てように興奮して連絡して来たらしい。

 でも、伝言はリレー形式だから、コルネーリア女王の耳に入る頃には熱のこもっていない箇条書きになっていたからまったく伝わっていない。



「さて……勇者パーティは近々この階層から出て行くでありんす。疎開も、もうええやろ。(わらわ)も城に戻るが、シモンたちはどうするでありんす?」

「俺たちは~……」


 コルネーリア女王の報告が終わったら、これからの話。シモンはプックを見ると、任せるような仕草をしたから勝手に決める。


「もう少し村に残ろうと思います。勇者パーティの動きしだいで、俺たちも下層を目指します」

「そうでありんすか。ならば、この隠し砦を使うといいでありんす」

「こんなところ、いいんですか?」

「なに。エルフの英雄には、感謝が足りないぐらいでありんすよ」

「英雄はやめてくださいよ~」


 シモンが情けない声を出すと、再び笑いが起こる。それから少し世間話をしていたら、コルネーリア女王はユーチェを呼び寄せた。


「そうそう。この者を貰ってくれぬか?」

「お断りします」

「即答!? なんでや~~~」


 しかしとんでもないことを言われたので、シモンはノーサンキュー。ユーチェも崩れ落ちたよ。


「言い方が悪かったでありんす。仲間に入れてやってほしいんどす。また勇者パーティと戦うことになった場合には、ユーチェの力が必要でありんしょう?」

「まぁ……あの長距離射撃は俺だけではできないか……てか、本当に目的はそれだけですか?」

「意外と疑り深いでありんすな。正直言うと、英雄の隣にドワーフだけがいるのも、エルフとしては気持ちのいい物ではありんせん」

「あ、やっぱり仲が悪いんだ……」


 若いエルフはドワーフと絡んだことがないからそうでもないが、年寄りはけっこうな因縁があるらしい。そんな怖い話を聞かされたシモンは、ユーチェを返品したくてしたくて仕方がないのであった……



 コルネーリア女王たちはこれから疎開解除の連絡や帰還の準備があるらしいので、シモンたちは自室にて待機。ユーチェも連れ込んで、これからの話をする。


「まぁ……これからはパーティメンバーだ。よろしくな」

「なんでちょっとイヤそうなん?」

「そりゃ粗忽者(そこつもの)やからやろ。あーしらに迷惑かけんなや」

「ガサツなドワーフに言われたくないどす!」

「誰がガサツやねん!」

「ケンカするなよ~」


 パーティ結成直後、早くも暗雲が立ち込める。コルネーリア女王から聞いた話が尾を引いてるのか、プックとユーチェはいつもより険悪だ。


「仲間になったんだから、俺のジョブのことも言っておくな。ジョブは狙撃手。スキルはこの弾丸ってのを出すことができるんだ。んで、プックのジョブは、この弾丸を使えるように道具を作ってくれる鍛冶師だ。そっちは?」

「あ、ウチも珍しいジョブで、【風使い】と言うどす。スキルは風魔法全般で、風を見ることも……コレは知ってるどすね」


 簡単な自己紹介をしたら、シモンは引っ掛かることがある。


「ところで弓以外にナイフを身に付けていたけど、それも使えるのか?」

「いえ。持ってるだけなんで、近接戦闘はからっきりどす。まぁ風魔法での防御はできるどすけどね」

「ふ~ん……風魔法以外に使える魔法はないのか?」

「残念ながら……エルフはある程度の魔法は使えるのどすけど、このジョブは風魔法一本だけになるというか……」


 ユーチェが急にシドロモドロになったので、プックは嫌な笑みを浮かべる。


「てことは、落ちこぼれってことかいな?」

「誰も落ちこぼれなんて言ってへんやん!」

「あんさんのお父ちゃん、いろんな魔法使って弓も剣も凄かったやん? ちゃうか??」

「パ、パパは、ほら? 剣士のジョブやし……」

「やっぱり落ちこぼれや~ん」


 プックが押し気味に攻めていると、シモンが間に入った。


「ケンカするな。てか、この中で一番落ちこぼれなの俺だから、落ちこぼれ落ちこぼれ言わないでくれ」

「シモンはんは! ……ホンマやな。魔法も使えないし近接戦闘もできまへんな」

「俺までなじるな。慰めろよ」

「あ……ゴメンな。みんなゴメン。言い過ぎたわ」


 プックはこのままでは2対1になってしまうと謝罪したが、ひとつ気になることが頭に(よぎ)った。


「遠距離2人と鍛冶師って……なんなんこのパーティ編成? とても迷宮を攻略するメンバーに見えへんな~」

「本当に酷いパーティだな……」

「ウチ、この中でやって行けるんやろうか……」


 暗雲は、ザーザー降りに。パーティ編成が偏り過ぎた上に非戦闘員までいるので、3人共に不安がのし掛かるのであった。



 全員が不安になることで、パーティとしてひとつになれたシモンたち。次はパーティ名で揉め出した。


「プーシー同好会でええでっしゃろ?」

「いや、もっとカッコイイ名前にしないか?」

「なんでや? みんなプーシーシリーズ使って戦うねんから、それでええやん」

「そもそもプーシーって、なんなんどす?」


 プックの名付けが変なんだもん。ユーチェはついて行けていないので、シモンが武器の名前について説明していた。


「ウチは!? 2人の頭文字だけじゃ、ウチがいないやないですのん!?」

「まぁ……あーしとシモンはんの力で作ってるから、入る余地はないで?」

「ウチも仲間やないの~~~」


 名付けのせいで暗雲は嵐に変化。また喧嘩に発展したのでシモンが間に入り、パーティ名はユーチェの頭文字も入れて、【プーシーユー】というワケのわからない名前に決まったのであったとさ。


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