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銃の知識ゼロの世界で弾丸補充スキルを授かった冒険者、案の定Bランクパーティにクビにされる~銃を手に入れてから狙撃無双で英雄と呼ばれる件~  作者: ma-no
二章 逃亡生活

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068 一方的な攻撃


 ここは勇者パーティから1,2キロ離れた岩山の頂上。シモンたちは3人並んで椅子に座り、シモンは三脚で固定したアサルトライフルのスコープで。プックとユーチェは双眼鏡で勇者パーティを覗いている。


「こんな距離からようあんな細い物に当てられるな」


 現在は賢者トモヤの杖を撃ち落としたところ。プックは驚きを通り越して呆れている。


「「それは~……武器のおかげ?」」

「ええねんで? お互い褒めようとしてたのにあーしに変えんでも。そもそもこんな使い方、想定外や」


 シモンはユーチェの風を読む力、ユーチェはシモンの正確な射撃と動きを読む力を褒めようと見合ったけど、照れたのかプックのおかげにしたみたい。

 しかしプックはここまでの距離を撃つために作っていなかったから、褒められても受け取るに受け取れないみたいだ。


「しっかし、急に勇者パーティが現れたから肝を冷やしたな~」

「ああ。馬車で片道4日をどうやって来たんだか」

「飛んで来たとか? そんなワケありまへんよね~」


 3人が喋っている間に、この作戦の説明。見ての通り、シモンは長距離から射撃して勇者パーティを怒らせようとしているのだ。

 コルネーリア女王と話をした時は、こんな見えないところから攻撃できるのかと言われたが、それはホーンホーク狩りでユーチェに手伝ってもらえば可能だと結果が出ている。


 ただし、勇者パーティを呼び寄せるには誤算が生じた。


 エルフは以心伝心という固有スキルを使って、リレー形式で遠くの人とも連絡できるから、王都でも半日あれば命令は伝わる。

 だから作戦の準備が整ってから女王の居場所の情報を流せと命令したら、いくら勇者パーティの移動速度が速くとも、2、3日は猶予があると思っていた。


 本当はその間にシモンたちは岩山に移動して野営して待つ予定だったが、勇者パーティが1日で現れたからには予定が狂う。

 なのでコルネーリア女王が機転を利かし、元々準備していたパーティー会場にて勇者パーティを接待し、睡眠薬を飲ませて時間を作ったのだ。


 あとはシモンとユーチェが数日掛けて調べた狙撃しやすい場所に勇者パーティを呼び寄せ、不穏な動きをしたらシモンが狙撃する流れとなっている。



「てか、何発撃てば引くんだ? いい加減帰れよ」


 勇者の手を撃ち抜き、それからはダメージがない場所をシモンは狙って当てていたけど、10発もしたらシモンも呆れている。


「やっぱ、1人ぐらい死ななわからんのちゃう?」

「女王様をエロイ目で見るヤツなんか、全員殺してもいいんどすよ」

「それだと邪神が怒るんだよ。俺たちの目的はお灸を据えるだけだ」

「そんなん言うて、自分が死にたくないだけちゃうか? シモンはんも女王様のことをエロイ目で見てたやろ?」

「バッ……見てねぇし!」

「女王様がタイプなんや……」


 シモンたちが軽口を叩いていたら、勇者パーティに動きがあった。


「やっとこっちに気付いたみたいやな」

「15発って……勇者ってのも、思ったよりたいしたことないのかな?」


 勇者パーティはシモンがいる方向を指差して何やら言っていたのだ。


「これからどうするんどすかね?」

「魔法とか? ま、こんなところまで届く魔法なんてないだろ」

「せやろな。ましては、シモンはんみたいに正確に当てられへんやろ」


 ユーチェの質問から無理筋だと決め付けていたが、勇者パーティは何やらおかしい。


「う、浮いとらん?」

「浮いてます……やっぱり飛んで来たんどすえ!」


 ユーチェの冗談から出た(まこと)。勇者パーティは空を飛んで移動を短縮していたのだ。でも、プックとユーチェは驚いているが、シモンは冷静だ。


「この距離で飛ぶなんてアホだろ。ユーチェ、賢者の肩口狙うぞ。アイツが呪文唱えてた」

「あ、はい。いいどすか? カウントダウン始めます」


 不規則に飛ぶホーンホークだって撃ち落とせる腕前だもん。ユーチェのカウントダウン後、シモンは見事に賢者トモヤの肩を撃ち抜き、それと同時に勇者パーティは10メートルほどの高さから落下したのであった……



「くそったれ~~~!!」


 ところ変わって荒野。空を飛んで移動しようとした勇者パーティはシモンに撃ち落とされて激怒していた。


「何が起こっているかわかりんせんが、いい加減諦めたらどうでありんす?」


 勇者パーティとは違い、コルネーリア女王は笑いが悟られないように扇で顔を隠して助言する。


「ふざけやがって……お前の差し金だろ!」

「なんのことかサッパリでありんす。あ、いまの音、聞いたかえ?」

「音だと?」

「ザシュザシュと地面に何かが突き刺さった音でありんす。影の頭の部分を見なっせ」


 勇者パーティが一斉に視線を下に持って行くと、そこには5人の頭を射貫くように穴が開いていたからには、全員血の気が引いた。


「まるでいつでも殺せると言わんばかりでありんすな。これこそ、女神の御業(みわざ)。今日、この時、心を入れ替えないと、その影のようにすると女神様が言っているようでありんす」

「何が女神の御業だ! これはシモンがやってるんだよ!!」

「人がやっているとなったら、(なお)のこと気を付けなあきまへんな~。どんな恨みを買ったか知りまへんが、人の恨みほど怖い物はありまへん。ま、幸いあんたはんたちはまだ殺されてへんのやから、行いに注意しておけば殺されることもありまへんやろ。人の道を外れた場合は、どうなるかわからないでありんすが……」


 コルネーリア女王が冷たい目で見詰めると、勇者パーティは後退(あとずさ)った。


「クソッ! シモンに言っておけ。もしも俺たちの攻撃範囲に入ったら必ず殺してやると……行くぞ!!」


 こうして勇者パーティは捨て台詞を残し、この村から去って行くのであった……


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