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銃の知識ゼロの世界で弾丸補充スキルを授かった冒険者、案の定Bランクパーティにクビにされる~銃を手に入れてから狙撃無双で英雄と呼ばれる件~  作者: ma-no
二章 逃亡生活

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065 勇者パーティの役割


 ショットガンの試し撃ちから帰ると、ユーチェがデートして来たと嘘をついたモノだから、プックの機嫌は最悪に。

 シモンはホーンラビットを献上しようとしたけど受け取ってくれなかった。料理してから持って来いとか言われていたけど……


 それからシモンはユドークスに事情を説明して、ユーチェがシモンの見張りの仕事をしていたと誤解は解いてくれた。でも、腕を組んでいたのは事実だから、ホーンラビットは全部食べられました。

 このままシモンは温泉に行こうとしたら、メイドに拉致られてコルネーリア女王の私室に押し込まれた。


「な、なんでしょうか……」


 コルネーリア女王の私室とは寝室も兼ねているから、シモンはド緊張。ナイスバディのコルネーリア女王の後ろにはベッドがあるから、「もしかして?」と期待に胸を高鳴らせてるだけだけど。


「勇者のことでありんす。勇者が王都で暴れたらしくてのう。いちおう耳に入れておこうとな」


 でも、まったくの別件。シモンはちょっとガッカリしていたけど、勇者パーティが城の一部を破壊したと聞いてそんな気持ちは吹き飛んだ。


「マジッすか……なんで城なんか壊す必要があるんだ……」

「どうもエルフの女もさることながら、(わらわ)のことも探しているようでありんす」

「女王様を? 女性を隠したから恨まれてるとか??」

「話を聞いた者は、妾の体を狙っているようなことを言っていたそうだ。この歳でモテモテとは、妾の美貌は罪作りでありんす」

「はあ……」


 シモンはここで疑問が浮かんだ。フレズベルクの被害を何回も経験しているようなことを言っていたから、「女王様っていくつなの?」と……


「それでだ……王都には妾の居場所を伝えるように指示を出そうと思う」

「そ、そんなことをすれば、女王様だけじゃなく、他の女性も被害にあうんじゃ……」

「そうでありんすな。まぁ、抵抗などしなければ、命までは取られはしまい」


 コルネーリア女王は覚悟を決めた顔で続きを喋る。


「疎開している女子供(おんなこども)は、半分は他に逃がす予定でありんす。だから、それに(まぎ)れてシモンたちも逃げよ。潜伏しやすい村への紹介状も用意しておいたでありんす」


 この案には、シモンは「約束を守ってくれるんだ」と安心はしたものの、黙っては受け取れない。


「俺を突き出せば、少しはエルフの被害は減らせるんじゃ……」

「それも考えたが、シモンの武器を手に入れた勇者パーティが何をするかわかりんす。エルフを狩り出す可能性も無きにしろ(あら)ずでありんす」

「アイツらなら、やりかねない……」


 勇者パーティの邪悪さを目の前で見たシモンは自分がいると迷惑になると悟った。


「だったら、もう殺してしまえばいい。こんな勇者、いらないでしょ? エルフの猛者全員で掛かれば、なんとかなるんじゃないですか??」

「それはならぬ」

「どうして? 勇者も邪神も変わらないじゃないですか? 人間の尊厳まで殺すんだから、もっと(たち)が悪い。俺は勇者なんていらない!」

「……そうか。人族は寿命が短いから、勇者の本当の役割を知らないでありんすな」


 シモンは思ったことを捲し立てると、女王は冷たい目をして語り掛ける。


「勇者の本当の役割とは、邪神への供物(くぶつ)でありんす」

「く、供物??」

「そうでありんす。女神を破った邪神は、もうこの世界には興味がありんせん」


 コルネーリア女王から語られる奈落の始まり。女神に勝った邪神は、奈落の下層から順に消して行った。この行為は、人々を上層に逃がしてより恐怖を撒き散らして楽しむだけの行為らしい。

 しかし、女神が召喚した勇者パーティのおかげで潮目が変わる。邪神が放ったモンスターを蹴散らして、一太刀浴びせたのだ。


 ただの人間が傷を負わせたのだから、少し待てば勇者パーティも強くなるのでは。その期待を(くじ)けば、人々はもっと恐怖するのではないかと邪神は考えて進行を止めた。

 その結果は、邪神にも思いも寄らない結果に。勇者パーティは回を重ねる事に強くなり、自分を瀕死の重傷にまで追いやる者まで現れたのだ。


 この遊びを気に入った邪神は勇者パーティを最下層で待つようになったが、全てが辿り着くとは限らない。

 調子に乗って無茶をした勇者パーティが迷宮で倒れたり、今回の勇者パーティのように素行の悪い者は上層にて処分されたのだ。


 邪神はモンスターや魔獣の目を通して全てを見ているらしく、前者の場合はその馬鹿な死に様に満足できたが、後者は面白く感じなかった。

 もちろん邪神は遊びを邪魔されたと怒り、ペナルティとして最下層を消したそうだ。


 このことは女神から「如何(いか)なることがあっても勇者パーティの歩みを止めるな」とお告げがあり、各階層の君主だけは言い伝えを守り続けているはずだとコルネーリア女王は予想している。



「それじゃあ、俺たちは泣き寝入りするしかないのか……」


 コルネーリア女王の話を聞き終えたシモンは悔しそうに歯を食い縛る。


「その通りでありんす。勇者パーティを殺せば、邪神によってもっと大きな被害が出る。諦めるしかありんせん。さあ、旅の支度をするでありんす」


 その気持ちを汲んだコルネーリア女王は微笑みながらシモンの手を取って立たせると、ドアまで連れて行った。


「あっ……そうだ……」


 そこでシモンは何かを閃いて振り返った。


「どうせ俺は勇者パーティに狙われてるんだから、もっと怒らせるってのはどうですか?」

「……何をやりたいのでありんす?」

「こういうことを……」


 シモンは思い付いた作戦を話し込んでから、自室に帰って行くのであった……


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