059 第三波
ホーンホークの大量襲来は、1時間で60羽を超えた。
岩山の頂上ではシモン&ユーチェが協力して、ホーンホークを撃ち殺したり撃ち落としたり。その銃弾を抜けたホーンホークは、エルフの戦士がシモンたちを守るように倒して下に落とす。
地上では、上からの指示が入るとホーンホークの落下地点に走り、死んでいれば2人で担いで馬車に運ぶ。生きていれば、複数で囲んで剣や魔法でトドメを刺す。
上でも下でも、誰もが忙しくする中、プックはブツブツ言いながら空になった弾倉に弾込め。1人だけ出番がないから不満なんだとか。
そうこうしていたら、2時間を経過。ホーンホークは150羽近く倒したところで、空には雲以外の物は浮かんでいない景色となった。
「休憩! 休憩や。次に備えろ!!」
これで終わりかもしれないが、隊長のユドークスは緊張を解かずに各所に休憩の指示。頂上の者はドサッとその場に座り、下にいる者は手が空いた者から休憩する。
皆、一斉に水を飲み、20分ほど待つと何か腹に入れておいたほうがいいかと悩んでいたら、次の波が来た。
「おお~い。マジか~」
「はぁ~……今度はキツイで。総員、戦闘準備や~~~!!」
先程より多い。黒い雲が迫って来ているように見えるから、確実な情報だ。
「プックもいつでも行けるように準備しておけ。絶対に仲間を撃つなよ?」
「わかったで! ……大丈夫やろか?」
「自信がないなら一番前で撃て」
「それってあーしが危なない?」
「適当にぶちまけても当たるって。んで、弾丸が尽きたら下がったらいいだけだ」
「当たるかな~?」
プックは自信がないし、最前列には立ちたくない。しかしシモンは返事を待たずに射撃に戻ってしまったので、プックもやるしかない。
シモンがホーンホークを撃ち落とすなか、5羽も頂上に迫る。
「プック! 撃ちまくれ!!」
「ウラアアァァ~~~!!」
「「「「「おお~~~」」」」」
サブマシンガン乱射。プックはサブマシンガンを右から左、左から右に動かして撃つと、ホーンホークに半分は着弾。5羽とも墜落して行った。
さらに遠くにいたホーンホークにも当たったのか、2羽ほど落ちて行ったので、エルフたちから感嘆の声が出た。
「戻れ戻れ。箱を交換しないと次に困るぞ」
「わかってまんがな。てか、あーし、すごない??」
「「「「「すごいすご~い」」」」」
「全員で馬鹿にしとんのか??」
エルフたちは本当に褒めているけど、この言い方ではドワーフには響かないみたい。シモンはすでに銃撃を繰り広げているので、すごすご最後尾に戻るプックであった。
それからもホーンホークは押し寄せていたから、すぐにプックの出番がやってくる。
「行くで~~~!!」
「行くな! 2羽ぐらい他に任せろ!!」
「えぇ~……」
「えぇ~っじゃない。プックは俺たちの切り札なんだから、多い時だけ動いてくれ。じゃないと、すぐに弾切れになるぞ」
「切り札じゃしゃあないな~。切り札やもんな~」
いや、まだ出番じゃないのでシモンの説得。プックは嫌そうにしていたけど、次の瞬間には嬉しそうに下がって行った。
「あの子、意外と単純どすね。フフフ」
「大きな声で言うなよ? マジで切り札なんだから拗ねられると困る」
「そんなに信頼してるんや~。妬けるわ~」
「無駄話してないで早く指示くれよ」
それを面白そうに見ていたユーチェ。しかしシモンの言葉には嫉妬したらしく、頬を膨らませている。
そんな無駄口はすぐに止まり、全員で力を合わせてホーンホークを撃退していたら、戦闘開始から4時間を過ぎた。落としたホーンホークの数は、なんと400羽に迫る勢いだ。
「やっと止まった……さすがにこれ以上は来ないやんな?」
「さあな。俺ならまだ気を抜かない」
「せやろな~……休憩や! 急いで何か腹に入れようや。休憩~」
ユドークスもシモンと同じ考えだったけど、周りにも疲れが見えるからもう終わってほしい。それでも隊長なのだから、全員に指示が行き渡ってからやっと休憩だ。
シモンは軽く腹に入れたら、プックにアサルトライフを見せて整備してもらう。自分は延々と弾込めだ。
「これがいちいち面倒くさいよな~」
「せやな。それ終わったら、プーシー4号のもやってや」
「ムリムリ。最後はギリギリだったんだぞ。自分ので手一杯だ」
「あーしも残り1個しかないんやで? 整備もあるのに~」
「ウチらで手伝おっか?」
2人でグチグチやっていたら、ユーチェが近くにしゃがみ込んだ。
「助かる。こうやって押し込みながら入れてくれ」
「これなら簡単やな。てか、ウチでもその武器使えそう。ウチも欲しいな~?」
「ダメだ。自分たちで使う分しか持ってない」
「あーしの子供を誰がやるかいな」
「えぇ~。ケチ~」
ユーチェがいくら甘えても、2人は拒否。ユーチェも本当に貰えるとは思っていなかったので、他のエルフも呼び寄せて弾込めを手伝ってくれた。
こちらからもくれくれ言われてたけどね。
それからはホーンホークが1羽も現れないから、1時間も経ったら皆も笑顔が増えていたが、スコープを覗いていたシモンが一番最初に顔を強張らせた。
「来たぞ。第三波だ」
「はぁ~あ。もうこんでもええのにな~」
シモンが立ち上がると、プックも後に続いて射撃台に肘を置いてダラダラ喋る。ユドークスも目視で黒い塊を確認したら、各所に通達して気合いを入れ直した。
「なあ? 馬鹿デカイのがいるんだけど……」
「ホンマやな……周りの点々が普通のサイズだとしたら……5倍ぐらい? もっとか??」
「なんやアレ……あんなん見たことないどす……」
「俺にも見せてや!!」
望遠鏡で見ていたシモン、プック、ユーチェが冷や汗を垂らしていたら、ユドークスも驚愕の表情を浮かべる。
「フレズベルクや……」
急転直下。遠く離れたその先にはホーンホークを100羽ほど引き連れた、巨大な怪鳥フレズベルクが優雅に羽ばたいていたのであった……
ストックが限界となりましたので、ここからは一日置きの更新となります。
次回更新は明後日の、10月3日となりますので少々お待ちください。




