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銃の知識ゼロの世界で弾丸補充スキルを授かった冒険者、案の定Bランクパーティにクビにされる~銃を手に入れてから狙撃無双で英雄と呼ばれる件~  作者: ma-no
二章 逃亡生活

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055 大猟の褒美


 プックとユーチェがシモンを取り合う喧嘩をしていたら、ユドークスがやって来てシモンだけ怒られた。どうやらユーチェはユドークスの娘だったらしい……

 二股男には娘をやらん的な説教をされ、シモンが小さい胸は好みじゃないと拒否したら、ダブルで殴られた。そりゃお父さんの気持ちも娘の気持ちも踏みにじったらそうなるわな。プックは嬉しそうに見てる。


 そんな騒ぎは、ホーンホークが近付いて来たらおしまい。他のエルフがユドークスを羽交い締めにして引き離してくれたのだ。


 この日は太陽が沈む前まで続けたら、シモンが撃ち落としたホーンホークの数は44羽。大猟(たいりょう)だ。


「すごいすご~い! これなら全員に行き渡るどす。おおきに~!!」


 今まで見たことも聞いたこともない成果なのだから、ユーチェはテンションも上がってシモンの手を取って感謝感激。プックにその手は叩き落とされたから喧嘩になってるけど。


「それにしても、こんなに狩って大丈夫なのか? 生態系がおかしくならないか??」


 2人を無視してシモンはユドークスに質問する。巻き込まれたくないのだろう。


「ああ。問題ない。ホーンホークは害獣やからな。その昔、ここは緑豊かな山が広がっていたんやけど……」


 ユドークスはどこまでも広がる土色の山脈を見ながら昔話を始めたので、シモンは離れたい。

 どうやらホーンホークが現れるようになってから、森が荒らされ獲物も少なくなって、森じたいが消えてしまったとのこと。さらには、人間や家畜も襲われるから、ホーンホーク被害は各地で絶えないそうだ。


「だから、狩れば狩るだけ喜ばれる魔獣ってことやな」

「やっと帰れる」

「ちゃんと聞いてたか??」


 シモンはここまで詳しく聞いてない。他のエルフも片付けが終わりそうなので、さっさと帰りの身支度をするシモンであった。



 帰りも下山でプックが難儀していたので、シモンが背負ったりしていたら、ユーチェに「そんなこともできないんどすね~」と笑われていた。

 なのでプックの反撃。おんぶされている時に「フッ。ええやろ~?」と返しただけで、ユーチェは羨ましいと激怒だ。


「ウチも背負ってや~」

「なんでだよ。君、ピョンピョン下りてるだろ」

「足! 足捻った~」

「オヤジさんに背負ってもらえ」

「ええ~。あんな加齢臭くさいオッサンの背中なんてイヤや~」

「オヤジさんが聞いたら泣くぞ??」


 ユーチェもシモンと密着したいからの嘘。バレバレなのでシモンは断っていたら、ユドークスに流れ弾が当たって倒れた。聞こえていたみたいだ。

 シモンがユーチェに塩対応だからプックは気分良し。下山したら馬に乗って村に帰る。


 村では、すでにホーンホークの料理が作られていたが、狩りの立役者が帰って来たと聞いたのか村の外まで出て来て、大々的な出迎えとなっていた。


「パパに手柄やって本当によかったんどす?」


 最後尾はシモンたち。ユーチェもそこにいたので質問している。


「こういうの苦手なんだよ」

「変わってまんな~。英雄になれてモテモテやのに」

「モテモテ……」

「シモンはん。顔っ!」

「あはは。心の声がダダ漏れどすな~」


 シモンのスケベな顔を見て、目立つのは嫌だけど女にモテたいと受け取ったユーチェ。事実は逃亡中だから目立ちたくないだけだ。シモンは、モテるためなら英雄になってもいいと考えているけど……



 歓迎するエルフたちの道を抜ければ、牧場に到着。そこには偉そうなエルフが待っており、ユドークスが慌てて馬から降りて走って行った。


「ああ~……客人。ちょっとついて来てほしいらしいんだが……」

「嫌な予感しかしないんだけど……」

「それで当たりや。ま、感謝の言葉を掛けられるだけやと思うで。ご馳走も出るんちゃうかな?」

「ご馳走も俺が狩ったんだけど……」


 どんなことを言われてもシモンは超嫌そうな顔。しかしここで逃げると六層での生活は難しくなりそうだから、嫌々指示に従うシモンであった。



 牧場から馬に降りることなく向かった先は、村から離れた岩場。壁にいくつもの穴が掘られているからどういう場所なのかと聞いたら、廃棄された鉱山跡だとのこと。

 その岩場の入り組んだ道を進み、扉が取り付けられた穴の前で下馬。シモンとプックは開かれた扉から中に入った。


「おお~。お城の廊下みたい」

「坑道を廊下に作り変えたんちゃうか?」


 そこは別世界。床や壁、天井までもが平らに整備された空間となっているので、2人はキョロキョロしながら奥に進む。

 そうして豪華な扉まで案内されたシモンたちは、中にいる人物を説明されたので、同時に肩を落とした。


「「やっぱり……」」


 ユドークスがノックをして入ると、シモンとプックはトボトボと歩き、ユドークスが(ひざまず)くと2人もマネをして跪いた。


「女王陛下。客人をお連れしました」

「うむ。ご苦労でありんす」


 そう。シモンたちを呼び出したのはエルフの女王、コルネーリア・ファン・レンセンブリンク。この場所は、もしもの危機にエルフの王族が逃げ込むシェルターだ。


「その方ら。面を上げよ」

「「はい……」」


 シモンたちが顔を上げると、コルネーリア女王はニッコリと微笑んだ。シモンはドキッとしてる。服からはみ出すほどの巨乳だからタイプらしい……プックはジト目でシモンを見てる。


「その方らの協力のおかげで、久し振りに民に栄養のある物を食わせてやれる。エルフを代表して感謝するでありんす」

「は、はは~」


 国のトップの感謝の言葉は、2人ともどう対応していいかわからないらしく、シモンは知恵を振り絞って大袈裟に頭を下げたら、コルネーリア女王にクスクス笑われてしまった。


「そう(かしこ)まらなくてもよい。恩人に頭を下げさせるなんて、(わらわ)もバツが悪いでありんすからな」

「お、恩人なんてとんでもないです……」

「聞いていた通り、欲のない男でありんすな。しかし礼をしないのも女王の名折れ。なんなりと望みを言っておくれやす」

「特にないんですが……しいてあげるなら、人が少なくて鍛冶場が借りられる村か何かがあれば紹介してほしいのですが……」


 シモンは望みを言ってみたが、コルネーリア女王は少し困った顔になった。


「その程度、造作はないでありんす。しかし、妾としては、長くこの地に留まってほしいのだ。ホーンホークをアレだけ狩るには、そなたの力が不可欠でありんす。鍛冶場ならここのを用意するから、どうか考えてくれないかえ?」

「いや、あの……正直言いますと、俺たちがいたら迷惑になると言いますか……」

「迷惑とな?」


 シモンは勇者パーティを怒らせて逃亡していることを語るのであった……


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