044 迷宮踏破
迷宮ボスを倒して安全地帯で休んだプックは元気よく出発。シモンは迷宮の機能に驚いてくれずに殴られないかと心配していたが、プックが先を行こうとしたので腕を引っ張って後ろを歩かせる。
今日のシモンは半自動式拳銃を使い、たまにプックにも見せ場を用意。マシンガンを撃たせて、ちょっとでも楽しませようとしてるみたい。
そうして順調に迷宮の中を進んでいたらお昼過ぎに、通路を曲がってしばらく歩いた場所でシモンは足を止めた。
「モンスターでっか?」
「いや、ここで待機だ」
「待機??」
「前から冒険者が来てたから、念の為な」
「前から? そんなの挨拶したらええだけでっしゃろ」
プックにはシモンの心配が伝わらない。
「いいヤツらならいいけど、悪いヤツらもいるからな~。悪いヤツらだったら、いまの人数差はマズイ。確実に襲い掛かって来る」
「そ、そないに悪い人ばっかりなん?」
「わからない。わからないから、冒険者はできるだけ接触を避けるんだ。特に下層はな。人の目がないから、モンスターのせいにできるからな」
「こわっ。人殺しし放題やないか」
プックに冒険者の常識を教えていたら、シモンはそろそろいいかと元の道に戻った。
「素通りしたってことは、あーしらに気付いてなかったってことやんな?」
「いや、向こうも気付いていたと思う。無視して行くってことは、たぶんいい人だったんじゃないか? 後ろは気を付けたほうがいいけど」
「人間不信になりそうでんがな~」
「だろ? 俺も仲間以外は信じない。てか、その仲間もたまにヤバイパーティがあるから気を付けないとな」
シモンが本当にあった冒険者どうしのいざこざを喋りながら進んでいると、プックはこの話を怪談か何かと受け取っていた。どう聞いても怖い話だもん。
その気持ちを紛らわそうマシンガンを乱射していたら、弾詰まり。もう戦えないとプックが肩を落とした頃に、シモンの目的の場所に辿り着いた。
「あった。階段だ」
「やっと地下7階や~……ん?」
シモンが歩きながら指差すと、プックの顔がパッと明るくなったが、それと同時に首を傾げた。
「いまから下層に行くんやんな?」
「ああ」
「じゃあ、なんで上りますのん??」
これがシモンが楽しみに待っていろと言っていたこと。今まで降り階段しか使っていなかったのに、急に上り階段になったからプックは不思議でならないのだ。
「階層移動できる迷宮は、上と下とで繋がっているんだ。下の迷宮もどういうワケか降って行くんだよ。だから、途中から上り階段になるってワケだ」
「ん? ん? ん~??」
「だよな~。言ってる意味わからないよな。もう少し簡単に言うと、ボス部屋から降った階段は、地下6階ではなく、下の階層の地下4階と繋がっていたってことなんだ」
「ちょ、ちょっと待ってや」
プックは頭がこんがらがっているのか足が止まった。
「じゃあ、あーしらが降りて来た階段を戻ったらどうなるんや?」
「下の階層の地下5階に着く」
「はあ??」
「不思議だろ? ボス部屋の階段は特殊で、階層間を移動していると言われているんだ。あ、そうだ。勇者が使っていたテレポートって魔法。いま思うと、アレに近いモノなのかもな」
「えっと……階段を降りていたら、いつの間にか瞬間移動してたってことかいな??」
「そういうことだ。これだけ驚いたんだから、殴るなよ?」
「なんかムカつく~~~!!」
シモンのドッキリは成功。しかし先に聞かされていたのに引っ掛かったプックは、納得いかないと叫び声を上げるのであった。
地下3階に進み、しばらくしたら安全地帯があったので目立たない場所で野営する2人。プックはまだ納得がいかないので「殴ってええ?」とか言っていたけど、シモンはもちろん拒否だ。
いつも通りの冒険者メシを平らげ、銃の整備や弾込めも終われば、体を拭いて就寝。翌朝出発してモンスターを倒しながら進めば、夕方前に、ついに迷宮の出口が見えた。
「空や~~~!!」
ずっと薄暗い中にいたから空が恋しくなったのか、プックは走り出してシモンより先にゴール。
「お疲れさん。それと、六層にようこそ」
追い付いたシモンは、プックの頭をポンポンと叩いた。
「なんか偉そうやな~」
「そりゃ先輩だからな」
「プッ。そりゃそうでんな。こんなに頼りになる先輩はおらんわ。ずっと守ってくれてありがとな」
「気にするな。仲間だろ。こういう時は、迷宮踏破、おめでとうだ」
「せやな……おめっとさん!」
いまはプックも冒険者。長い迷宮攻略を冒険者らしく、祝福の声で祝うのであった……
「いだ~っ! だから殴るなって言ってるだろ!」
いや、背中をバシンと叩いたから、シモンの悲鳴。
「ちょっと背中叩いただけやん。乙女の張り手なんて高がしれとるやろ。てへ」
「わかってやってるよな?」
それと、プックのてへぺろプラス、シモンのツッコミで締められたのであったとさ。




