035 新生蒼き群雄
時は遡り、GL258年……
六層に繋がる迷宮を進む、一組の冒険者パーティがいた。
「さすがBランクパーティですね。こんなに楽に進めたの初めてです。アールトさんの指示も的確なので、すっごく戦いやすいです」
「それほどでもないよ。ゾーイの索敵のおかげだよ。それより、みんな歳も一緒なんだから、そろそろ敬語やめない?」
「いえ、新入りなので、歳とかは関係ありませんよ」
アールトと言えば、蒼き群雄のリーダー。つまりこの尻尾をフリフリしているケモ耳女性は、シモンの代わりに蒼き群雄に新規加入したアサシンのゾーイだ。
「確かに関係ないわ。でもね、いざって時に、丁寧な喋り方されると危険とかも伝わらないの。私なんて、4歳上のシモンも呼び捨てよ」
「ああ。あの元メンバーさんの……たった4歳しか差がなかったのですね。もっと年上だと思ってました」
「「シモンさん……」」
「シモン……」
「あ……」
カティンカがシモンの名を出すと、ゾーイ以外の蒼き群雄がズーンっと暗くなる。これは、迷宮に入ってからよくあること。
セシルが戦闘中にシモンを呼んだり、ダフネがシモンの弓を頼ったり。カティンカだって歩いている時に「ねえ? シモン」とか喋り掛けたり、唯一の男子アールトは寝る時に1人で寂しくなったり。
シモンを思い出す度に、蒼き群雄はその都度空気が暗くなっていたのだ。
「もう! あんたたちいい加減にしなさいよ! いない者はいない! ゾーイにも失礼でしょ!!」
「「「そんなふうに怒られたりもしたね……」」」
「思い出すなって言ってるでしょ!!」
シモンブルーは深刻。さすがにこのままでは危ないと、カティンカは休憩を提案して安全な場所に移動する。
「あのね~。アールトがリーダーなんだから、あんたが一番しっかりしないといけないの。こんなところシモンが見たら、『やっぱり俺がいないと何もできねぇんだな~』とか笑われるわよ」
「プッ……めっちゃ似てた……」
「笑うな!!」
「ゴ、ゴメン。そうだよな。僕がしっかりしないと……カティンカも辛いのに、慣れない役やらせてゴメンな。いつもシモンさんをからかうのが役割だったのに」
「後衛! 私のこと、なんだと思ってたの!?」
カティンカがギャーギャーとアールトを説教していたら、セシルとダフネは「シモンさんとカティンカのやり取りを見ているみたい」と呟いている。
ゾーイはそのやり取りをキョロキョロ見ていたが、このままでは溝が生まれそうなので頑張って話に入る。
「一度、思いっきり、シモンさんのことを語ってみてはどうですか? スッキリするかもしれませんし……私も、蒼き群雄の旅の話を聞いてみたいです」
ゾーイに気を遣わせてしまったと、アールトたちはバツの悪そうに顔を見合わせた。
「気を遣わせてゴメン。お言葉に甘えさせてもらうよ。その前に、安全地帯まで進まないと。休憩はここまでだ。行くぞ!」
「「「うん!」」」
「はい!」
蒼き群雄、再始動。集中力が戻った蒼き群雄ならば、鬼に金棒。危なげなく迷宮を攻略して安全地帯に辿り着くのであった。
「シモンさんの話ばかり……」
ただし、蒼き群雄のシモン談は終わりが見えないので、聞いたことを後悔したゾーイであったとさ。
蒼き群雄を足止めしたのは、シモンだけ。話が尽きないので安全地帯で2日も休んでから迷宮攻略を再開した。
全てを吐き出してからはさらに動きがよくなり、モンスターなんて敵ではない。ゾーイは「シモンさんだけが敵だな」と敵認定していたけど……
そのまま順調に進めば、迷宮ボスが守る部屋に到着。このミノタウロスキングは、シモンと戦った時はかなり苦戦していたけど、ゾーイの加入で攻撃力が上がっていたので楽勝だ。
「ふぅ~。遊撃ができるアサシンがいると、僕も戦いやすいな」
「いえいえ。アールトさんとダフネさんが引き付けてくれているから、戦いやすいのは私のほうですよ。セシルさんの補助も回復も的確ですし、カティンカさんの魔法なんて、すっごい高火力なんですからね」
アールトが褒めても、その数倍返すゾーイ。尻尾が大きく揺れているから、嘘ではないのだろう。
「ゾーイ~? いつまで敬語使うの~?」
そこに妖しい目をしたカティンカが後ろから近付いて尻尾を掴んだ。
「あんっ……尻尾はダメです……」
「また敬語。普通に喋れるまでモフモフしてやるんだからね~」
「じゃあ、私はお耳ね」
「アゴはどう?」
「イヤ……ワフゥゥ~~~ン……」
敬語禁止。ゾーイはカティンカとセシルとダフネにモフモフ撫で回されて、力尽きるのであった。
「シモンさん……男が1人だと寂しいですよ~~~」
1人だけ仲間外れにされたアールトは、シモンに戻って来てほしいとまた思い出していたのであったとさ。
こうして蒼き群雄は、新しい仲間を加え、シモンのことも吹っ切り、着実に実力を付けながら下層を目指す旅を続けるのであった……
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