028 勇者パーティの噂
サブマシンガンの実験をしていたら、弾詰まりになったのであら大変。数発当たったイノシシ型のモンスター、ビッグボアが怒ってシモンを追いかけ回す。
結局のところ、ビッグボアは半自動式拳銃のヘッドショットで一発ご臨終。もうサブマシンガンは使えないので、残りの時間はクイーンアント狩りをして帰路に就いた。
「壊れた……」
「もうでっか!? 怪我は? 怪我はないでっか!?」
あまりにも早い故障にプックもビックリ。それよりもシモンの体の心配をしているので、シモンも文句はやめて結果報告だ。
「弾が出すぎて、無駄撃ちになる場合が多かったんだ」
「確かに……シモンはんの場合は一発やから、必要のない機能だったのかも……いや、一発で倒すほうがおかしないでっか?」
「そんなことは……あるかも? そういえば前衛とかって、余裕がある時は念の為トドメを足してるな。魔法でも一発となるとオーバーキルになるし……」
「やろ~?」
シモンの戦い方が異常すぎるからの苦情だったが、それでも改良はしてほしい。
「ちょっと考えたんだけど、切り替えができたらいいと思うんだ。そしたら、弾を無駄にしないでケースバイケースで使えるだろ?」
「ああ~。ええでんな。単発と連射モードやな。そうなると、一から作り直さなアカンな~……その前に、故障の原因やな」
ひとまず先に晩ごはんにして、お腹いっぱいになったら2人は鍛冶場にてサブマシンガンの分解だ。
「あ、弾の箱のほうかも? かったいな……取れた。やっぱりここで詰まったみたいやな」
「てことは、出先でも直せたのか?」
「どうやろ? また詰まるかもしれんから、そのままで見せてもらったほうがあーしは助かるわ。しっかし、上のほうで詰まらんでよかった~。暴発してたら、一から作り直しやで」
「痛いのもイヤだけどな」
暴発して一番酷い目にあうのは使い手のシモン。プックの意見には、そこまで共感できないままこの日は眠るのであった。
次の日は、プックが徹夜で調整したと言って渡されたサブマシンガンでシモンは狩り。実のところ、2、3時間で直ったことは秘密にしてる。
そのせいなのか、この日もサブマシンガンは弾詰まりを起こして会議だ。
「おっかしいな~? 一回全部調整せなアカンか……」
「昨日は何したんだ?」
「弾の箱を少し削ったり? 要はスムーズになるようにしたんやけど……連射が速いから不具合を起こしやすいのかも?」
「ふ~ん……ま、あとのことは任せるよ」
2日連続でもプックの信頼は揺るがない。シモンはプックに全てを任せて、実験に付き合うのであった。
「今日もダメでしたん? ヘコムわ~」
それから1週間。手直ししては撃ちと1日置きにしていたけど、サブマシンガンは少しずつよくなる程度で、完全には使えない。
プックもヘコンでいるので、今日は外食。といっても、イレーナの酒場で飲むだけだ。
「なんか雰囲気が変じゃないか?」
「ホンマでんな。なんかあったんやろか?」
今日の酒場はどことなく空気が重い。シモンたちはいつもの席に向かう前に、カウンターに座ってマスターから情報収集をする。
「なんかみんな暗くないか? 何かあったのか??」
「なんで冒険者のお前が知らないんだよ。冒険者ギルドは大わらわだぞ」
「いや、今日は……なんか冒険者が騒いでいたな……あ、だからギルド嬢に呼び止められたのか……忙しいってすぐ出てしまった」
「聞けよ。大事な話かも知れないだろうが」
「う、うん。いつものギルマスからの酒の誘いだと思ってブッチしちゃった」
「「行けや」」
ギルマスと言えば、とある世界では大企業の支店長のようなモノ。それを無視するから、プックたちは同時ツッコミだ。
「それはもういいだろ。いったい何があったんだよ」
プックたちから「社会人失格」と罵られていたシモンはなんとか話を戻す。
「勇者パーティがな~……三層に辿り着いたらしい」
「もう!? 召喚されてから3ヶ月も経ってないでっしゃろ?」
「てことは、賭けに負けそうなヤツらがヘコンでるんだな。1年切るなんて賭けたの、俺たちぐらいだろ? 総取りか~」
「そういうことじゃない」
プックは単純に攻略速度に驚き、シモンはガッポリ儲けられると含み笑いをしたが、マスターは神妙な顔で首を横に振った。
「そういうことじゃないって?」
「勇者パーティは、傲慢な連中の集まりらしいんだ」
「んなヤツ、冒険者には五万といるだろ? 俺もしょっちゅう絡まれていたぞ」
「実力だけなら、そりゃ多くいる。だが、実力と権力を持ったヤツなんて極一部だ。それも絶大な権力を持ったヤツなんてな」
どうやらこの勇者パーティは、勇者だからとやりたい放題。暴力は当たり前、殺人も何件もある。挙げ句の果てには女を献上しろと命令したり、犯された女性も多いそうだ。
それを咎められる国も、勇者相手では強く出られない。いや、最初の内は注意していたが、二層の攻略を開始してからはパワーバランス逆転して、咎めた高レベル騎士も倒してしまったのだ。
そこからはさらに調子に乗り、やりたい放題に拍車が掛かる。三層では獣人が気に入ったのか、狩りと称して女性を犯して回っているらしい……
「はあ? 勇者ってヤツは、品行方正なんじゃねぇのかよ? んなヤツが、世界を救えるのか??」
「知るか。俺に言うな。そんなヤツらが来るから、迷宮街の女は疎開させるべきだと言う話も出てんだよ」
「なんだよそれ……邪神やモンスターと変わらねぇじゃねぇか……」
シモン、納得いかないと拳を強く握り締める。プックも似たような気持ちになり、周りの客と同じように項垂れる。
「チッ……酒! プック、飲む……ほどほどに飲むぞ!!」
「そこはしこたま飲むぞやあらへんの??」
その空気を吹き飛ばそうと、シモンは酒を頼んでテーブル席に向かったけど、プックがウワバミなのを思い出してケチ臭いことを言ってしまうのであったとさ。




