024 救出
「あっれ~? 全然いない……狩りの腕が落ちたか??」
現在は、シモンがプックたちが離れて20分後ぐらい。いちおうプックたちの安全のために、獲物を探すついでに辺りの安全を確認していたが、不幸なことにまったく見付からない。
なのでシモンは森の奥へ奥へと進み、獣の痕跡が見付かると慎重に探す。その甲斐あって、額から角が生えたウサギを一羽発見。逃げられない内に半自動式拳銃で頭を撃ち抜いた。
「1匹だけじゃプックが文句言いそうだな。アイツ、チンチクリンのクセにやたら食うし。栄養、全部胸に行ってるんじゃないか?」
プックの悪口を言いながら、さらに奥へ。狩って来てやるとか言った手前、引くに引けなくなっているのかもしれない。
やっとこさ2羽目のホーンラビットを撃って、これで体裁が保てると血抜きしながら休憩していたら、聞き覚えのある音が森の中に響いた。
「この音は……2発目!? マズイ!?」
拳銃の音だ。プックと約束していた合図を聞いたシモンは、血抜き中の血が滴るホーンラビットを両手に持って走り出す。
獣道を走り、木を避け、草むらを強引に抜ければ、もう間もなくベースキャンプ。そこでシモンは音を消し、気配も消してゆっくりと進む。
「10……13人か……てか、どういう状況だ??」
ベースキャンプ近くの草陰からシモンが盗賊らしき敵の人数確認をすると、全員湖を背にして臨戦態勢。プックとイレーナも2人の盗賊に後ろから見張られている。
プックが「こっちから来ますで~」とチクったから、盗賊はこんな対策万全みたいな配置になっているのだけど、シモンはまったく知らない。
「まぁ何もされてないみたいだから、そこはよかったな。さて……どうやって助ける?」
シモンはいま持っている銃を出して、減っている弾丸も全て補充する。その結果、ライフル銃に1発。回転式拳銃に5発。半自動式拳銃に15発。半自動式拳銃の弾倉が3個で45発。合計66発。
ここから計算して、1人に対する弾丸数を決める。そして盗賊の立ち位置を確認して倒す順番を決めたら、息を整えて集中力を高めるのであった……
「おい……本当にお前たちの主人は戻って来るのか? 逃げろという合図だったんじゃないだろうな??」
プックの口車に乗せられた盗賊の親分は、シモンがなかなか現れないので痺れを切らしていた。
「そんなすぐに来るわけないやろ。でも、必ず戻って来るで。あーしにメロメロやもん。だからあーしに手を出したら、逆に騎士団引き連れて戻って来るで」
「な~んか信じられねぇんだよな~……そっちの女ならまだしも、ドワーフにねぇ……」
「主人はロリ巨乳が好きやねん!!」
「いえ、私の大人の体型が一番好きって言ってたわよ??」
「だよな~?」
「イレーナはんはどっちの味方なんでっか!?」
プックがイレーナに噛み付いた瞬間、親分ともう1人の男が「ぐわっ!?」と悲鳴をあげて倒れた。
「「「「「頭!?」」」」」
「手が! 足が~~~!!」
「いて~~~!!」
「シモンはん!?」
「シモン!?」
シモンの攻撃だ。2人の盗賊は両肘と両膝を撃ち抜かれて同時に倒れたのだから、プックとイレーナは期待に満ち溢れた顔でシモンを探す。
「どこだ!?」
「待て! 人質の確保が先だ!! ぐうぅぅ」
盗賊は隊列を乱して森に突撃しようとしたが、親分が痛みに耐えながらなんとか指示を出した。
その子分たちは誰がプックたちの下に行くかを二言、三言相談して、一番近い2人が背を向けて走り出した。
「「ギャアアァァ~!?」」
しかし、プックたちに近付くこともできずに両肘と両膝を撃たれ、受け身も取れずにのたうち回る。
あとはそれを2回繰り返し。どこからどんな攻撃を受けているかもわからない盗賊たちは、プックたちに近付けなくなった。
残り5人。
「ギャアアァァ~!!」
いや、4人。それから辺りを警戒していた2人が倒れ、残り1人になったところでシモンはホルスターに半自動式拳銃をしまってから草むらから出て来た。
「どれが親玉だ?」
「一番始めに倒れてまんがな~」
「あ、そう。んじゃ、2人ともこっち来い。盗賊どもは、少しでも動いたら殺すからな?」
シモンは興味なさそうに質問してプックが答えると2人を呼び寄せる。2人は恐る恐る転がっている盗賊を避けてシモンに近付く。
「お前! 動けるならその男を殺せよ! 相手は丸腰だぞ!!」
「ホントだ!?」
しかし、1人だけ無傷の盗賊がいる。親分はその子分をけしかけたが、シモンはホルスターから半自動式拳銃を引き抜き、早業の射撃で両肘と両膝を撃ち抜いたからには、その刃は遠く届かなかった。
「シモン!」
「シモンはん!」
「大丈夫だったか? 何もされてないか??」
盗賊が全て倒れると、イレーナとプックはシモンに抱きつく。シモンも心配していたから受け止めたが、喜ぶにはまだ早かったかもしれない。
「クッ……ククク。こんな傷、上級回復薬で一発なんだよ! この俺様を虚仮にしてくれた対価は高く付くぞ~~~!!」
息の根は止めてないのだ。高い薬があれば、治療は御茶の子さいさい。親分は立ち上がると大きな剣を抜いて走り出した。
「つっ……え? 上手く走れない……つつつ……」
だが、いいところ徒歩のスピード。そんな速さだから、プックとイレーナはすでにシモンの後ろに隠れてる。
「やっぱりそうなるか……」
「あん? お前! 俺に何しやがった!? 呪いか!?」
「いや、俺は魔法とかは使えない。ただ、お前の両肘と両膝の骨に鉄の塊が食い込んでるんだ。なのにその傷を治したら……どうなると思う?」
「知るか!!」
「いまのお前の様だよ。歩き難いだろ? もうひとつ助言してやると、その鉄を取るの、また傷を開かないと無理じゃないかな? 痛そうだ~。ククク」
「……はい??」
治してしまったのは時期尚早。またあの激痛を4度も繰り返さないといけないと聞いた親分は、その場にヘナヘナと腰を落とすのであった……




