126 八層の迷宮ボス
シモンの説教はプックとユーチェの心に響いたけど、命中率はすぐには上がらない。なので、どれぐらいの距離なら動く目標に当てられるかを調べて、この日は地上に戻る。
それから3日。訓練はここまでにして、シモンはパーティ会議を開いた。
「一回で決める?」
「う~ん……賛成と言いたいんやけど」
「猫さん連れて行っていいどす?」
「ダメに決まってるだろ~」
プックとユーチェは猫メイドにメロメロ。なのでシモンは超高級宿屋の外の状況を思い出させて、迷宮踏破の回数を決めた。
そして2日休んで弾丸も孤児院で全て満タンにしてもらったら、荷物を抱えて猫メイドにお別れの挨拶だ。
「猫さ~ん。また戻って来るから撫でさせてな~」
「たぶん失敗するから待っててや~」
「なに不吉なこと言ってるんだよ。ほら、猫さんも迷惑そうな顔してるだろ。手を離せ」
「「猫さ~~~ん!!」」
別れを惜しんでいるのは、プックとユーチェだけ。この数日ひたすらモフられまくった猫メイドは、やっと解放されると涙ながらにプーシーユーを見送るのであったとさ。
迷宮攻略を開始したプーシーユーは、『どんより行こう』。プックとユーチェは猫メイドとの別れが堪えたみたいだ。
なのでシモン1人で『そこそこ行こう』。半自動式拳銃のみで、ヘッドショットを決めまくる。
その攻略速度は、いつもと同じくらい。シモンは弾丸を一発ないし二発で倒してしまうから、2人がいなくても変わらないのだ。
そのことに気付いた2人は、このままではただのお荷物になってしまうと存在感をアピール。無駄弾が増えるから、もう少し落ち込んでいたらいいのにとかシモンは思ってます。
今回の迷宮攻略は、ウィンチェスター弾と50BMG弾をできるだけ節約。多少手こずるモンスターでも、パラベラム弾の銃だけで行けるところまで進む予定だ。
プックとユーチェはサブマシンガンで弾丸を撒き散らし、シモンのヘッドショットを決めれば、だいたいのモンスターは沈黙。
サブマシンガン乱射は素早い獣型に当てる練習にもなっているみたいだ。ただし、夜に弾込めが大変になるけどね。
多少無理したが、パラベルム弾だけで地下4階までクリアー。地下5階からは、ボス戦で使う銃に慣れるようにモンスターを倒して行く。
そして野営で弾倉を満タンにしたら、残りの距離はアサルトライフルを持ったシモンだけで攻略。全て一発で頭を撃ち抜くので、プックとユーチェは微妙な顔だ。いらない子に感じたらしい。
「さあ、ボス戦だぞ。今までの訓練を思い出せ。頼んだからな? 必ず生きて先に進むぞ!」
「「お~!」」
しかし、ボス戦には3人の力が必要。シモンから頼りにされていると感じた2人は、気合いを入れてボス部屋に入って行くのであった。
「ええモフモフやな~」
「ね~? 顔を埋めたいどす~」
「死ぬぞ? さっきの気合い、どこに行った??」
ここの迷宮ボスは、巨大な白いモフモフ。いや、危険度S級の狼に似たモンスター、フェンリルだ。だからプックとユーチェは獣人のモフモフを思い出しているね。
「冗談やがな~」
「噛み付くモフモフは怖くてモフれまへん」
「だといいけど……とりあえずボス部屋は冒険者ギルドで見た地図通りだ。あそこにシールドを設置してくれ」
「うっし!」
「はいっ!」
「行くぞ!!」
シモンが走り出したら戦闘のスタート。シモンが止まってフェンリルにスナイパーライフルをブッ放せば、プックとユーチェも走り出す。
フェンリルは攻撃を受けたのだから、シモンをロックオン。シモンを追い回す。
シモンはジグザグに走って、振り向き様にズドンと発射。そして逃げると繰り返す。
プックたちも慣れたモノで、固定シールドやガトリングガンの設置はスピーディー。設置が終わったら、ユーチェの【風の囁き】でシモンに知らせる。
しかし、シモンはそちらへは向かえない。フェンリルが素早いから、なかなか振り切れないのだ。
それどころか、触れられる距離まで接近を許す。今まさに、フェンリルの牙がシモンを捉えようとしていた。
「喰らえっ!!」
「ギャフンッ!?」
大口を開けたフェンリルを、バックステップでかわしたシモンのスキル5連射。見事に口の内部の喉に直撃して、フェンリルも跳び退いた。
ここがチャンスだとシモンは全力疾走でプックたちの下へ向かったが、そうは問屋が卸さない。フェンリルは痛みを我慢して走り、シモンの横に追いついた。
「狙い通り!」
「「喰らえ~!!」」
そこはちょうどプックとユーチェの射程距離。シモン、プックたち、フェンリルの位置を線で結んだ三角形の一角にフェンリルがいる形だ。
プックのサブマシンガンとユーチェのガトリングガンの集中砲火を受けたフェンリルは、慌てて逃げ出した。
「チッ……思ったより判断が早いな……」
シモンもスナイパーライフルを構えたが、発射できずに逃げられたのでしかめっ面。そのままフェンリルに照準を合わせて撃ちまくるのであった。




