124 ドハマり
シモンだけ不本意ながら、プーシーユーはSランクパーティに昇格。最低ランクからの大出世だ。
「これって絡まれる原因になるのでは?」
「まだウダウダ言っとんのか」
「シモンさんならプシュプシュプシュで、プッシュ~どすやん」
「それ、死んでない??」
冒険者カードにランクが新しく刻まれても、シモンはまだ抵抗。でも、ユーチェが変なことを言うから、ちょっとは気分が楽になった。ちなみにユーチェは頭を撃ち抜くイメージをしていたから、2人に「殺し、アカン」と叱られてました。
冒険者ギルドでのやることも終わったのでシモンは外に向かおうとしたけど、プックがタタタッと受付に走り、冒険者新聞を買って戻って来た。
「またウチらのこと書かれてるけど、自由にやらせてええんか?」
どうやら七層では、冒険者新聞のせいで勇者パーティに動向を悟られたから心配で、冒険者新聞が気になったみたいだ。
「いちおう対策済みだ。厄災の魔獣のことは最初はこの層だけで報じて、ダークエルフの王様と連絡を取ってから、いつ各層に報じるかは決めるみたいだ」
「ほへ~。いつの間にそんなんやっててん。リーダーみたいやな~」
「リーダーで間違いないぞ?」
「シモンさんは頼りになるリーダーどす~。ヨッ。Sランク冒険者」
「馬鹿にされてるように聞こえるのは俺だけか?」
プックの憂いもなくなり、ユーチェのヨイショは軽く流したら、冒険者ギルドはおさらば。精神的に疲れたシモンは屋敷に戻ろうとしたが、プックとユーチェがガッシリと掴むから動けない。
「まだなんかあったか?」
「「娼館……」」
「あぁ~……娼館って高いから、まずは安いクラブで試してみない? こう、お姉さんというかぬいぐるみを両手に侍らせられるし……」
「「じゃあ、そんな感じで」」
こうしてプックとユーチェはクラブを気に入って、朝までコースに突入しようとするのであったとさ。
翌日からは、プーシーユーは各々のできることをする。プックは50BMG弾を使ったサブマシンガンの製造。シモンとユーチェは~……やることナシ。
なのでプックから借りたガトリングガンの試射。振動が強いからか、あのシモンですら狙いを外す結果となった。
非力な2人では使い勝手が悪いから、これもプックに相談。サブマシンガンが完成してから取り掛かってくれるそうだ。
夕方前になると、鍛冶場から金槌の音が消えたから「考え中か?」とシモンが思っていたら、お風呂上がりで普段着に着替えたプックがリビングに入って来た。
「さ、行こか」
「は~い」
「どこへ??」
「クラブや」
「連日!?」
理由はこういうこと。獣人のクラブ嬢をモフモフしたいからって、仕事を早く切り上げたのだ。
シモンはついて来なくていいと言われたけど、プックたちは猫メイドに夕食を断っていたからシモンの分もナシ。仕方がないのでシモンも外に出て、適当な料理店に入って行った。
プックとユーチェがクラブにドハマりして10日。2人は自分の給料から出しているし、帰りはそこまで遅くならないし、仕事もプックはしてくれてるているからシモンは何も言えない。
ユーチェは仕事なんてしてないけど、自分もしていないので強くは言えない。というか、「ヤキモチどす~?」と嬉しそうにするから面倒なんだって。
シモン的には早く九層を脱出して娼館に行きたい……じゃなかった。蒼き群雄を追いたいと祈っていたら、願いは通じた。
「勇者パーティ、十層に向かったって!!」
そう。九層で娼館漬けと報告されて羨ましいと思っていたあの勇者パーティが、ついに十層に向かったとレオポルト王が手紙を寄越してくれたのだ。
「ええ~……まだええんちゃう?」
「そうどす。勇者パーティならすぐに戻って来はりますよ」
でも、プックとユーチェは動きたくなさそう。モフモフ天国は離れたくないんだね。
「ユーチェの意見は、俺もわからなくはない。でも、ここにいたら、お前たち破産するぞ?」
「「破産??」」
「安いクラブでも普通の飯屋の10倍はある。この額は、普通の冒険者の1日の稼ぎが吹っ飛ぶ額だ。1ヶ月も続けたら、これまで貯めた給料は底を突くぞ? パーティ資金に手を付けるのか? 俺は許さないぞ? 借金してまで続けるのか?」
「「……」」
2人も貯金がガンガン減っていたのは自覚があったみたいだ。
「そんなヤツ、俺は五万と見て来た。仲間からは見放され、男は犯罪に走って鉱山奴隷送り。女はクラブや娼館で働く借金奴隷。いま、まさに、2人が入り浸っている場所だ……」
「「うっ……」」
今まで獣人にセクハラしまくっていた2人だ。自分も同じことをされたらと思って顔が青くなった。
「夢の世界はたまに行くから楽しいんだよ。充分楽しんだだろ? 楽しみは帰りに取っておけ」
「せやな……ちょっと羽目を外し過ぎたわ」
「ウチもどす~。そりゃ出禁にされますわ~」
「ちょちょちょ、君たち、俺が見てないからって何したんだ??」
説教は通じたけど、2人はモフリ過ぎてそのうち入れる店はなくなっていたから「説教する必要なかったんじゃね?」と、損した気分になるシモンであったとさ。




