123 ランクアップ
厄災の魔獣を討伐して王都に帰って来たプーシーユーはお疲れモード。
シモンは慣れない演説を大声でしたから喉が潰れ、その夜に行われた貴族だらけのパーティーにはこれまた慣れない堅苦しい服を着て、王女様を何人も押し付けられそうになったからだ。
プックとユーチェは~……ただのモフモフ酔い。貴族に「ドレス似合ってますね」と口説かれたりもしたけど、モフリ過ぎて「痴漢だ」と泣かせたんだとか……
2日も屋敷に籠もったら、やっとシモンの声もプックたちのモフモフ酔いも治ったので、各々好きに動く。
でも、シモンが外に出ると言ったら、プックもユーチェも腕を掴んで一緒にだ。また娼館に行くと思われたっぽい。
「娼館なんて行かないぞ?」
「なんで行かへんのや?」
「ウチも連れて行ってや~」
「どゆこと??」
どうやら2人は、娼館に行けばモフモフが撫で放題だと思ったらしい。貴族男子を泣かせたことは、ちょっとは悪いと思っていたんだね。
しかし、シモンには行きたい場所がある。そのあとに連れて行くと約束して、3人は冒険者ギルドにやって来た。
そこでシモンは適当にギルド嬢らしき人を選ぼうとしたけど、プックたちはハムスターっぽい人を近くで見たいと誘導した。
「プーシーユーだ。王様が報酬は振込にするとか言ってたんだけど」
「あ、はい。聞いております。カードの提出とこちらにサインをいただけますか」
「ああ……あれ? ダークエルフの王様よりちょっとだけ多い……あの、まさかとは思いますけど……」
「さあ? 偶然じゃないですかね~? 冒険者ギルドは権力に屈しない組織ですから~。ハムスター、ウソツカナイ」
あまりにもハムスター嬢がカタコトなので、シモンは懐疑的だ。
「ダークエルフは受け取りのサイン、勝手にやる気だったぞ??」
「まあ! 王命ならそんなことまでしてええんだ!」
「やっぱり……」
「あっ……」
やはりシモンの口座は覗かれてレオポルト王に報告していたっぽい。ただ、レオポルト王はダークエルフに感謝で負けたくないだけだから、ダークエルフの王様が振り込んだ額だけを聞いて来たそうだ。
「おお~い。どこが権力に屈しないんだよ~」
「今回だけ。今回だけですって。どれだけ払うべきか悩んだらしいんで……あっ! そんなことよりもっ!!」
「情報漏洩が、そんなこと??」
「ランクアップ! プーシーユーはランクアップしないのですか!?」
話を逸らされているのは明白だが、シモンもこの件はすっかり忘れていたのでポンッと手を打った。
「ランクアップってなんですのん?」
「プックの冒険者カードにFとか書いてあっただろ?」
「ああ~。それを上げる手続きでっか」
「プックさんFランクやったんどすか! 最低ランク……プププ」
「はあ? ウチ、こんなに死線乗り越えてるのに最低ランクやったん!?」
プック、ビックリ。基本的にプーシーユーは勇者パーティを恐れて冒険者ギルドでは短時間の滞在しかできなかったから、シモンはすっかり忘れていたのだ。
その上プックは鍛冶仕事で忙しかったから、冒険者ギルドに顔を出すことも少なかったので、ギルド嬢からのアドバイスは受けれなかったのだ。と、シモンはギルド嬢のせいにしてる。
「まぁそう怒るな。プックは依頼を受けたことがないから功績ポイントは少ないたろうけど、パーティのポイントを全て使えばDランクぐらいまでなら上げられるだろう」
「ふ~ん。そんなんできるんや。ちなみにユーチェは何ランクなん?」
「Cどす~。残念どしたね」
「ムカッ! ユーチェはどうせパパさんに優遇してもらっただけやろ!!」
「そんなこと! ……あるかも?」
ユーチェより下ってのが気に食わないプックの反撃は、ユーチェも怒るに怒れない。いまシモンが説明したことを、ユーチェもやってもらったことを思い出したからだ。
「あの~……功績ポイントなんですが……」
2人の喧嘩は早々に終わったので、ハムスター嬢が割って入った。
「信じられないぐらいあるんですけど……それはもう、全員、Sランクになれそうなぐらい……」
「「「はい??」」」
ギルド職員が引くほどの功績ポイント。そりゃ三度も国を救ったのだから、これぐらいあってもおかしくない。3人の君主からの感謝状と推薦状も付いているのだから、間違いなくプーシーユーの実績なのだ。
「えっと……とりあえず、2人ともAランクまで上げとく??」
「なんであーしらだけやねん」
「せや。シモンさんはSランクにすべきどす」
「俺、Sランクの器じゃない気が……」
「何ビビってるねん。あーしもCランクぐらいがいい気がするけど……」
「大丈夫どす! シモンさんならSSSランクでもおかしくないどす!!」
「それや! 余ったのは、全部シモンはんが使えばええねん!!」
「ムリムリムリムリ。トリプルなんて、伝説級の冒険者だぞ」
功績ポイントの振り分けは、控えめのシモンとプックのせいで大揉め。なので決まりそうにないと感じたハムスター嬢はアドバイスしてあげる。
「普通はパーティ内で揉めるからランクアップは個人から優先するのですけど、皆さんあまりランクアップしたくないみたいですし、先にパーティランクを上げてはどうですか?」
「ああ~……そっか。パーティランクも最低ランクのままか。それで受けられる依頼も変わるもんな」
「ええ。このポイントなら……パーティをSランク、リーダーのシモンさんをSランク。残りの2人をBランクにすれば……ピッタリ! あたし、凄くないですか~??」
「凄いけど……俺とパーティがSランク~~~??」
これは出過ぎたマネ。シモンは目立ちたくないもん。
「……ええんちゃう? シモンはんの実力ならそんなもんやろ」
「……うん。ウチもええと思うどす。ウチらとシモンさんの実力はもっと離れてますけどね」
しかしシモン以外は賛成。こうなってはシモンも折れるしか……
「では、そのように手続きいたしますね。皆に自慢してこよっと」
「俺の返事を聞いてからにしろ~~~!!」
折れるまでもなく決定。プックとユーチェが両側からしがみつくので、ハムスター嬢の行動を止めることもままならないシモンであったとさ。




