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避暑に行こう! 15

今日も一更新です!

お祭り二日目。

今日のイベントはは街の広場で行われる。

午前中に料理・絵画・ファッション・大食いの各コンテスト、午後に美青年と美少女コンテスト、そして夜にカップルコンテストが開催される。

フレンさんが出場する為、私達は料理コンテストにやって来た。

参加者であるフレンさんは、一足先に料理コンテストが開かれる場所に行っていた。

参加者を絞るため、開催前に予選が行われるらしい。

私達は広場に用意された見学者用の椅子に座り、コンテストが始まるのを待った。

やがて時間がくると、進行役の司会者と、審査員三名と、出場者四人が現れた。

出場者は、男性一名に女性三名。

男性はもちろん、フレンさんだった。

四人がそれぞれ簡易調理台につくと、司会者が一歩前に出て口を開いた。


「お待たせ致しました! これより料理コンテストを始めます! 出場者はこの四人! なんと男性が一名予選を勝ち抜きました! 果たして本選も勝ち抜け優勝するのか、はたまた普段から料理をし慣れた主婦の方々のどなたかがその栄光を掴むのか! 見逃せません!」


見学者達のほうを見てそう言うと、司会者はくるりと反転し、出場者達を見た。


「それでは改めてご説明します! この料理コンテストは出されたお題にそって一品作って戴きます。本選のお題は、肉料理です! 皆さん、肉料理を作って下さい! 皆さんが作った料理は、こちらの審査員三名が試食し、判定します! この三名は我が街の各料理店の料理長を務める方々ですからね、審査は厳しいですよ! 制限時間は一時間! それまでに一品を完成させて下さい! さあ、それでは、料理コンテスト、スタートです!」


そう言うと、司会者はピーッと笛を吹いた。

それを合図に、出場者四人は一斉に調理に取りかかった。


「お題は肉料理かぁ……。ねえクレハ、フレンさん、何を作るのかな? 何か聞いてる?」

「さあ。そもそも、お題があるなんて事すら言ってなかったから、フレンさんも、この会場に来てから初めて聞いたんじゃないかな?」

「へえ、そうなのか。……しかしフレンは、手際がいいな。料理ができるのは知ってたが……予選を勝ち抜くとは、正直思ってなかったよ」

「え、そうなんですか? 私は勝ち抜けると思ってましたけど。フレンさん、お料理上手なんですよ? セイルさん」

「へえ~。……なら、フレンをうちに料理人兼家政夫として住み込みで雇うかな。そうすれば毎日美味い食事ができるし。いいかい? クレハちゃん?」

「えっ? ……ええと……」

「あら、それなら私を雇う? セイル? これでも料理の腕には自信があるのよ私。クレハちゃんから野菜を買うようになってから、素材の良さも相まって更に美味しく作れてるし。だから……一生涯、私を雇ってくれていいのよ? セイル?」

「なっ……!? こっ、こら、よせミュラ、こんな所で……!!」


セイルさんの肩に手を置いて、しなだれかかるように体を密着させ、顔を近づけて囁くミュラさん。

そんなミュラさんから真っ赤な顔を反らし、抵抗するセイルさん。

……うん、隣のそんな攻防なんて私には見えないし聞こえない。

コンテスト見学に集中しよう、そうしよう。


「は~いそこまで! 皆さん、手を止めて下さい!」


出場者四人が料理をする様を見ている事しばし。

司会者がまたピーッと笛を吹いて、制止をかけた。

盛りつけに入っていた四人は手を止める。

全員無事に、料理は完成したらしい。


「さあ、それでは審査員による審査タイムです! 審査員の皆さん、お願いします!」


司会者の言葉に席を立ち、審査員の三人は端から順に試食し、点数をつけていく。

そして、フレンさんの番になった。

私は祈るように手を握りしめて、その様子を見つめる。


「いよいよ男性の料理の試食です! お兄さん、これは何を作ったんですか?」

「ビーフシチューのパイ包み焼きですよ。……僕の大切な子が、大好きな料理なんですよ」


そう言って、フレンさんは見学席にいる私を見て、微笑んだ。

…………え?

た、"大切な子"……って?


「……ビーフシチューのパイ包み焼きって……クレハ様がお好きな料理ですよね……?」

「……う、うん……」

「えっ、そうなのクレハ? ……じゃ、じゃあフレンさんの"大切な子"って……!!」

「えっ! ……い、いやいやいや!! そんなはずないよ!! き、きっと、"妹みたいに大切な子"とか、そういう意味だよ!!」

「……。……フレンさんは今夜のカップルコンテストでのクレハ様の相手役ですから、その役の為に布石として、ああ言ったのではありませんか?」

「あ! そうだよ、それだよ! フレンさん、"出場するからには優勝するよ"って言ってたし!」


そう。

あの日アイリーン様に相手役を選ぶように言われ、困った私にフレンさんが差し出してくれたあの即席くじ。

私が引いたのは、フレンさんの名前が書かれたくじだった。

私は今夜、フレンさんの恋人としてカップルコンテストに出場する。


「ありえるわね、それ。フレンたら、こんな時間からもう役に入ってるのね。……でも、クレハちゃん? 優勝は、私とセイルよ?」

「む! 違いますよ! 優勝は私とアレク様です!」

「いいえ、私とライルくんですよ? 負けませんからね皆様!」

「……頑張って。ライル、ギンファ」

「へっ? シ、シヴァくん? 何でライルくんとギンファちゃんだけを応援するの?」

「……友人ですから」

「え、わ、私とフレンさんは? 二人に同じく友達だよね?」

「…………はい。……それなりに、頑張って下さい」

「そ、"それなりに"って……!?」

「さあ! 全ての試食と審査が終了しました!!」

「!!」


私の問いに顔を逸らして答えたシヴァくんに、更に問いかけようとすると司会者の声が響き、私の意識は再びコンテストに引き戻された。


「優勝は……この方です!!」


そう言って司会者が指し示したのは……なんと、フレンさんだった!!


「おめでとうございます!! 優勝トロフィーと賞金は貴方のものです!! よろしければ、一言喜びの声や、賞金の使い道などをお聞かせ下さい!!」

「……そうですね、とても嬉しいです。あの料理は、僕にとって特別な料理ですから。……賞金は、僕の大切な子に使いますよ。彼女が喜ぶ事に。彼女が嬉しそうに笑うと、僕も嬉しいですから」


そう言って、フレンさんは微笑んでまた私を見た。

……うわぁ……。

らしくない台詞だから、完全に演技だとわかりますけど……砂を吐きそうです、フレンさん……。

ちらりと周りを見ると、アージュは顔を赤らめてるけど……ギンファちゃんとライルくんは微妙な顔だし、シヴァくんは不機嫌そうに目を閉じてるし、セイルさんやミュラさんは完全にドン引きしてるし……。

これは、完全にやり過ぎだと思います……。

今夜のカップルコンテスト、あのフレンさんと出場して、私、ちゃんと恋人らしく振る舞えるかなぁ……?

演技派フレン。

きっと俳優になれますww

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