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避暑に行こう! 11

今日の更新もこれのみです。


「ん~、疲れたぁ」


部屋へと戻った私は、そうひとりごちて、ベッドに向かう。

すると突然、部屋の隅から、光が放たれた。

こ、これって……!

私は即座にその光のほうを見た。

光はすぐにやみ、代わりにそこには、一人の男性が現れる。


「ラクロさん……!!」


私は笑みを浮かべ、その人の名を呼んだ。


「……こんばんは、華原さん。先日は、失礼を致しました」


そう言って、ラクロさんは私を見つめ、ゆっくりと歩いて来た。

……あれ?

ラクロさんとの距離が近くなると、私はその姿にほんの少し、違和感を覚えた。


「……ラクロさん……少し、痩せました?」


ていうか……やつれた……?

最後に会ったのは、ほんの数日前だ。

なのに、この短い間に、ラクロさんは痩せている……というか、やつれている。

な、何があったんだろう?


「あの、大丈夫ですか……? えっと、どうぞ、座って下さい」


私はラクロさんの手を引き、ベッドに座らせた。

次いで、自分もその横に腰かける。


「……お気遣い、ありがとうございます。大丈夫……と言いたい所ですが、正直、少し疲れていますので、助かります」

「え……! あの、それなら、私の所に来るより、少しでも早く休まれたほうがいいんじゃ……!」

「いえ……休んでは、いられません。まだ書類の処理が残っていまして。けれど、エンジュにその書類を取り上げられまして……その上、貴女の元へ行けと強く言われ、執務室を追い出されたのですよ。それでやむなく、ここへ。……あんなエンジュは、初めて見ました」

「エンジュさんが、書類を取り上げて、私の所に行け、って、言ったんですか……?」

「はい」


……それって、やっぱり……仕事をし続けるラクロさんを、無理矢理にでも休ませる為、だよね……。

よぅし、そういう事なら、協力しなきゃ!

ラクロさんを休ませるには、やっぱり寝て貰うのが一番だよね。

ああ、でも、睡眠薬は家だ……!

この別荘じゃあ器具もないから、今から作るってわけにもいかないし……ど、どうしよう!?

ただ『寝て下さい』って言っても、真面目なラクロさんが寝てくれるとは思えないし……う~~~ん……!?


「……。……華原さん。言っていませんでしたが、意識してシャットアウトしない限り、私達天使には、口に出さない、心の声も聞こえます」

「……えっ!?」

「睡眠薬など使っても、私には効きませんよ」

「え!!」


う、嘘、私今の、口に出してないよね?

こ、心の声って、つまり、考えてる事が筒抜けって事!?


「ええ、そういう事です」

「!!」


声に出していない事を肯定され、私は硬直した。

ちょ、ちょっと待って……わ、私今まで、ラクロさんや馬鹿天使やエンジュさんの前で、何考えてたっけ……!?

や、やばい、何か変な事とか恥ずかしい事とか、考えてなかったかな……!?

驚愕の事実に私は動揺し、今までの思考を必死に思い返した。


「……ふ……大丈夫ですよ。特別おかしな事はありませんでしたから」

「えっ!! ……あぅ……そうですか……これも筒抜けなんですね……。……ええい、仕方がありません! 悔やんでももう今さらです! なら悔やむより、今やるべき事をやるまでです!!」

「はい? ……華原さん……?」

「……ラクロさん! 寝て下さい!!」

「えっ……!!」


私は立ち上がってラクロさんの両肩を掴み、体重をかけて押し倒した。

考えが筒抜けだったのなら、私やエンジュさんがラクロさんを休ませようとした事ももうバレているはずだ。

『休んではいられません』と言って帰られる前に、強硬手段に出るしかない。

押し倒した為、私は今、ベッドに倒れたラクロさんの上に馬乗りになっているが、細かい事は気にしていられない。

恥ずかしいとか、顔が熱いとか、そんな事は全部後だ。

ラクロさんが眠った後に、一人で自分がした事に頭を抱えて悶えればいい。

だ、大体、これは別に、ラクロさんを襲ってるわけじゃないんだし!

恥ずかしいけど……もの凄く恥ずかしい状態になってるけど!

ラクロさんに大人しく休んで貰うには、きっとこれしか方法ないだろうし!!

言わば、これは人助けなんだよ、うん!!

……あれ、でも、ラクロさんは人間じゃなくて天使だから、天使助け?

……なんか、言葉がしっくりこないけど、天使助け……が、正しい、ん、だよね……?

……う~~~ん……?


「…………は……はははっ! ははははははっ!」

「……え? ……ラクロさん……?」


思考に沈みかけた私は、突然笑いだしたラクロさんの声に引き戻され、目を瞬いた。


「ははっ……ぷ、くくっ。い、いえ、すみません……そうですね。私は天使ですから、天使助けですね……っぷ、ははは……!!」

「……え……そ、そうですよね、うん、やっぱり」


……でも、それで何で笑っているんだろう?


「ははは……っ。……はぁ。……エンジュが、貴女の元へ行けと言うわけですね。こんなふうに笑ったのは、久しぶりです。……。……華原さん。お言葉に甘えて、今日はこのまま休ませて戴きます」

「え! ほ、本当ですか!? 本当ですね!?」

「はい、本当です」

「や、やった……! わかりました! おやすみなさい、ラクロさん!!」

「はい。おやすみなさい、華原さん」


そう言って、ラクロさんは目を閉じた。

私がそっとベッドを降りると、すぐにラクロさんの寝息が聞こえてきた。

こんなにすぐに寝入るなんて、やっぱりラクロさん、相当疲れてたんだろうなぁ。

……さて、それじゃあ私も……って、あれ?

わ、私、どこで寝よう……?

この部屋、ソファはあるけど、布団が……あっ、でも、今は夜でも暑いし、別に布団はいらないかな。

うん、問題ないや。

そう結論づけた私は、ソファに横になり、眠りに落ちた。


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