避暑に行こう! 7
今日一回目の更新です。
今日はここまで。
馬車に揺れる事、三日。
シュピルツの街に着いた私達は、ハイヴェル家の別荘に荷物を置くと、街に観光に出た。
「わぁ、これが湖なんだね! 凄いな、大きいな~!」
「そうだね。あ、あれが更衣室みたいだね。行こうアージュ! ギンファちゃん! ミュラさん!」
「うん!」
「はい!」
「ええ。それじゃあ後でね、男性陣。 ……私の水着姿、楽しみにしてなさいよセイル?」
「なっ……! ば、馬鹿!」
うわぁ……積極的……!!
ミュラさんはセイルさんの耳元にそう囁いて、私とアージュに続いて更衣室へ向かって歩きだした。
私達が住んでる街から加わった護衛の騎士様は、セイルさんとミュラさんの二人だった。
仕事を兼ねているとはいえ、慣れ親しんだ二人と共に旅行ができて、私は嬉しかった。
「うわぁ……! ミュラさん、セクシー!」
「お、大人の魅力ですね……!」
「わぁ……わ、私もいずれは、こんなふうに……!」
更衣室で水着に着替えると、私とギンファちゃんとアージュは、ミュラさんの姿に羨望の眼差しを向けた。
ミュラさんはそんな私達の視線に、少しだけ顔を赤らめた。
「……本来なら、ビキニはあんまり好きじゃないんだけどね。セイルに振り向いて貰う為に、なりふり構わない事にしたのよ。この旅行も、きっちり利用させて貰うわ。あ、もちろん、仕事は仕事としてきっちりやるから、心配しないでね?」
「はい。……頑張って下さいね、ミュラさん! 仕事も、恋も!」
「私達も、できる事があれば協力します!」
「そうですね! ミュラさんにもセイルさんにも、幸せになって欲しいですし!」
「ふふ、ありがとう、クレハちゃん、アージュちゃん、ギンファちゃん。それじゃ、水着姿を披露しに、男性陣の元へ行きましょうか」
「「「 はい! 」」」
私達が更衣室を出ると、すでに男性陣はその出入口の近くで待っていた。
「お待たせしました! アレク様!」
「アージュちゃん。……うん、水着姿も可愛いね。とてもよく似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます! ……アレク様も、水着姿も素敵です!」
嬉しそうに微笑むアレク様に、頬を赤らめはにかむアージュ。
うん、ごちそうさまです。
「ギンファちゃん、水着姿も可愛いよ! 見れて嬉しいな」
「ありがとうライルくん。私も嬉しい。一緒に旅行に来れて良かった!」
「そうだね。せっかく来れたんだから、楽しもうね!」
「うん!」
そう言って、さっそく手を絡ませ合う二人。
……ギンファちゃん、ライルくん……人前では程々に……いや、何も言うまい。
馬に蹴られてしまう。
「……どう、セイル? 私の水着姿」
「な、ど、どうって……お前、何でそんな水着持ってるんだよ? そういうの、趣味じゃないだろうに?」
「あら、私の趣味なんて知っててくれたの? それは嬉しいわね。で、どう?」
「い、いや、その……あんまり近づくなよ。目のやり場に困る……」
「嫌よ。前に言ったでしょ? 私、猛アタックするから、覚悟しなさいって。忘れたの?」
「……いや、覚えてる。覚えてるが……頼むから、もう少し離れてくれ……」
「イ・ヤ」
「うぅ……」
ほんのり頬を赤らめながら迫るミュラさんに、それ以上に顔を真っ赤にして視線を逸らすセイルさん。
が、頑張って下さい、ミュラさん、その意気です……!!
「……全く……何をしてるんだろうね、あの二人は。さっさとくっつけばいいのに」
「積極的な女性だな。あの騎士は押しに弱そうだし、時間の問題じゃないのか?」
「クレハ様。クレハ様も、その水着、よく似合っています」
「あ、そうだった。うん、可愛いよ、クレハちゃん」
「そうだな。よく似合っている」
「……ありがとうございます。でも、そんな思い出したようにお世辞を言って戴かなくても結構ですよ」
「……拗ねないでよ、クレハちゃん」
「ちゃんと本心だぞ?」
「クレハ様は可愛いです」
「はいはい。ありがとうございます」
そのあと、私達はそれぞれ湖でのひとときを楽しんだ。
海にも湖にも来たことがないらしいアージュは、アレク様に手を引かれながら、泳ぎを教わっていた。
ギンファちゃんとライルくんは、かなり遠くまで泳いで行ってしまった。
仕事も兼ねてるセイルさんとミュラさんは、足首だけを湖に浸し、ずっとアレク様やフェザ様を見守っていた。
私とシヴァくんとフレンさんとフェザ様は、アージュと同じく、湖に来たことのなかったらしいシヴァくんに泳ぎを教えたり、私が作っておいた擬似ビーチボールで遊んだりした。
そうしてひとしきり楽しんだ私達は別荘に戻り、一人別荘に残り、優雅に寛いでいたアイリーン様と合流した。




