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避暑に行こう! 2

本日一回目の更新です。


今日はこれのみ。

「あ……! お、お帰りなさい、皆さん!」

「イリスさん、ただいまです。……動物達と、遊んでいたんですか?」


イリスさんは魔法のじゅうたんから降り立った私達を見て、放牧スペースから慌てて駆けてきた。

服には草や土がついている。


「は、はい。動物さん達に遊んで戴きました。私の仕事をつつがなく遂行する為には、やはり動物さん達との関係を良好にすべきかと思いましたので……」

「そうですね、動物達とふれあうのはいいと思います。……楽しかったですか?」

「はい! とても!!」

「そうですか。それは良かったです」


頬を赤くし、どこか興奮気味にそう答えるイリスさんを見て、私は微笑んだ。

イリスさんは家に来た二日目、モモの乳を初めて搾ってから、ほんの少しずつ、明るい顔を見せる事が増えていっている。

主に、動物達の世話をしている時に、それは見られた。


「……クレハちゃん、この人が、イリスさんなのね?」

「あっ、はい、そうです!」

「え……? ……あっ、お、お客様でしたか……! は、はい、私、イリスと申します……! お初にお目にかかります!」


イリスさんは、自分に視線を向けたまま私に声をかけていたジュリアさんと目が合うと、頭を下げ、挨拶をした。


「ええ。初めまして、私はジュリア。この子はレナよ。我が主、アイリーン様のお計らいで、クレハちゃん達が留守の間、私達がこの家に泊まる事になったから、よろしくね?」

「……えっ?」

「あ、あのっ、そうなんです! アイリーン様が、イリスさん一人じゃ寂しいだろうからって事で! それに、ここに女性一人は物騒ですし!」


顔を上げ、きょとんとしたイリスさんに、私は慌てて説明した。


「あ……そ、そうなのですか。それは、お気遣いありがとうございます。私のようなも……っあ、い、いえ、私などを……でも、なくて、あの、わ、私を心配して下さって、大変、嬉しく思います……! ……です、よね? ク、クレハちゃん」

「……はい、そうです。早く言い慣れて下さいね、イリスさん」

「は、はい……! 頑張ります!」


言葉に注意して話すイリスさんに、私はにっこり笑ってOKを出した。

それを見て、ジュリアさんとレナさんは顔を見合わせる。


「……ふぅん、なるほどね。どうやら通常業務で済みそうかしらね、レナ?」

「そうね。……これが素なら、だけど」

「お二人とも、客室に案内しますよ。行きましょう」

「あら、ありがとうフレンくん。クレハちゃん、私達、家に入って荷物を置かせて貰うわね?」

「お邪魔するわね、クレハちゃん」

「あっ、はい! うちでもどうぞ、寛いで下さいね!」

「ええ、ありがとう」

「それじゃ、クレハ様、私も部屋へ戻ります」

「俺も、失礼します」

「で、では私も。もう少し、動物さん達に遊んで戴きますので」

「あ、うん。私はこのあとは、少し調合をするから、調合部屋にいるね」

「はい、わかりました。ではまたあとで」

「うん」


それぞれの自由時間を過ごすべく、イリスさんを残し、私達は家の中へ入った。

そして私はシヴァくんやギンファちゃんと別れ、調合部屋へと向かった。







「う~~~ん……こんなところかなぁ?」


調合部屋へ行った私は、香水に使えそうな花を見繕い、微かに漂う香りを嗅ぎ、候補を絞った。

候補は、次の三つだ。

ほのかな甘い香りが漂う、可愛いピンクの花。

爽やかな香りが漂う、涼しげな青い花。

どこか魅惑的な香りが漂う、凛とした紫の花。


「どれが一番アイリーン様に合うだろう……? ……まあいいや、とにかく作ってみよう!」


まずは、ピンクの花から!

私はピンクの花を手に、調合釜へ向かった。

蒸留水や中和剤と共にピンクの花を調合釜へ入れ、かき混ぜながらスキップスキルを使う。

すると釜が光り、香水が完成した。

香水を入れる為のガラス瓶を近くに置いておくと、完成した香水は自動的にその瓶に入っている。

ラクロさんにお願いしたスキルの効果とはいえ、どうなっているのか毎回不思議だ。


「よし、候補ひとつ目。さて、どうかな……?」


私は完成した香水の瓶に顔を近づけ、香りを嗅ぐ。


「あ……これ、いいかも。上品な甘い香りに仕上がってる。……う~ん、けどとりあえず、他のふたつも作ってみようかな」


私は香水を棚に置き、青い花を手に取った。







「……う~~~ん……これは、難しい問題だなぁ~……」


数分後、私は三つの香水を交互に見比べ、首を捻っていた。

結果として、作ってみた三つとも、アイリーン様に合うような気がするのだ。

……どれを、渡すべきだろう?


「クレハ様、どうかなさいましたか?」

「へっ!? ……あっ! わ、わわっ!!」

「あっ……!!」


突然後ろから声がかけられ、驚いた私は持っていた香水の瓶のひとつを手から落としてしまった。

けれど間一髪、床に到達する前にシヴァくんが無事にキャッチしてくれた。


「あ、ありがとうシヴァくん。助かったよ」

「いえ、突然声をかけてすみませんでした。部屋に入ったらクレハ様が唸ってらしたので、つい……どうか、なさったのですか?」

「あ……ええとね、この香水なんだけど……どれが一番アイリーン様に合うかなと思って。……そうだ! シヴァくんはどう思う? 嗅いでみて!」


意見を聞こうと思いたった私は、香水をシヴァくんの顔の前に差し出した。


「……香水、ですか……?」


シヴァくんは一瞬困ったような顔をしたけれど、順に香りを嗅いでくれた。


「……どう?」

「……たぶん、どれも合うと思いますが。三つ全部渡すというのは、駄目なのですか?」

「へ……三つ、全部?」

「はい」

「…………」


……そうだ、三つ全部渡せばいいんじゃない。

何で、そんな簡単な事に気づかなかったんだろう、私……。


「……クレハ様?」

「あ、え、えっと……ありがとうシヴァくん。そうするね。そ、それで、シヴァくんは、どうしたの? 調合するの?」


気づかなかった恥ずかしさを誤魔化すように、私は話題を変えた。


「あ……いえ、実は、クレハ様にお願いしたい事がありまして……」

「私にお願い? 何?」

「……俺の武器を、新調して戴けないかと。つい今しがた、フレンさんに、シュピルツの街周辺の魔物は、今まで訪れた場所の魔物よりも強いと聞きまして。なので……」

「え、そうなんだ? わかった、ツインエッジより強い武器を作るね!」

「え……い、いいんですか……?」

「へ? もちろんだよ! 何で?」

「……いえ、その……ツインエッジも、クレハ様が俺に作って下さった武器ですし……まだ、使えるのに……」

「……ああ、そういうこと。構わないよ。相手の強さに応じて武器を変えるのは、当然でしょ?」

「……すみません」

「いいってば。気にしないで? それより、ツインエッジの使い心地ってどうだった? 改善点の要望があるなら考慮するよ?」

「あ、はい……。……それなら、もう少し刀身を細長いものにして戴けると、助かります」

「え、刀身を細長く? ……う~ん……そういうふうにイメージすれば、そうできるかな? とりあえず、やってみるね」

「はい、お願いします」

「うん。……ええと、武器は何がいいかな……今作れるので一番強いやつだと……」


私は棚から調合図鑑を取りだし、パラパラと捲った。


「あ、これかな? 双竜の牙。ドラゴンの牙は、確か王都で買ったから、倉庫にあるはずだよね。取って来るね。少し待ってて」

「はい」


私は倉庫へ行き、ドラゴンの牙を含め、必要な材料を持つと、調合部屋に戻って作成を開始した。

完成した姿を想像しながらスキップスキルを使った結果、シヴァくんの望み通り、刀身の細長い双剣ができて、私はほっと胸を撫で下ろした。

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