住人達の攻防 4
今日二回目の更新です。
先日ちらっと告げた通り、次の更新時にタイトルを変えます。
ご了承下さい。
翌日。
私はギンファちゃんやイリスさんと一緒に動物小屋へとやって来た。
「それじゃあイリスさん、今日は動物の世話の仕方を教えますね。まず、昨日と同じように動物達にエサをあげて下さい。ギンファちゃん、今はとりあえず見学しててね?」
「はい、わかりました。頑張って下さいね、イリスさん!」
「は、はい! 頑張ります!」
イリスさんは棚の所へ行き、干し草を抱え上げ、それをエサ箱に入れる。
棚とエサ箱の間を何度か往復し、動物の数だけエサ箱にエサを入れた。
「できました、クレハさ……ク、クレハちゃん!」
「はい。じゃあ次に、モオの乳を搾って下さい。まず、棚から銀色の容器を持ってきて下さい」
「は、はい! あれの事ですね……!」
イリスさんは棚から銀色の容器を持ってきた。
「イリスさん、それをモモの乳の真下に置いて下さい」
「は、はい」
イリスさんは銀色の容器を置いた。
「はい、それじゃあ……そうですね。一度お手本を見せますので、よく見てて下さい」
そう言うと、私はモモの横に屈みこんだ。
「まず、ここ。乳のつけ根の部分を、親指と人指し指だけで握ります。そのあと、手全体を使って、優しく握ります。そうすると、乳が出ます。……ほら、こんなふうに」
私は説明をしながら、モモの乳を搾った。
銀色の容器の中へ牛乳が溜まっていく。
「……わぁ……!」
その様子を見ていたイリスさんが、興奮したように声を上げた。
ん? こんな反応をしたのは初めてだなぁ。
これは、いいかも?
「イリスさん、それじゃあ、やってみて下さい」
「えっ……あっ、は、はい! 頑張ります!! えっと、まずは親指と、人指し指で……!!」
私と場所を交代すると、イリスさんはぶつぶつとやり方を繰り返し口にしながら、そっとモモの乳を握った。
そのまま乳を搾ると、銀色の容器に牛乳が出る。
「……うわぁ……!!」
「どうです? 楽しいでしょう?」
「は、はい! とっても!!」
「それは良かった。じゃあ、その調子で頑張って下さいね」
「はい!」
イリスさんの表情を見て、私は、初めてモモの乳を搾った時の事を思い出す。
私もあの時、こんな表情をしていたんだろうか。
そんな事を思いながら、やっと見れたイリスさんの楽しげな、生き生きとした表情に、私は密かに安堵の息を吐いた。
イリスさんが乳搾りを終えたあと、私はブラシがけとメメ達の毛がりの仕方を教え、鳥小屋へ移動し、コッコ達にもエサをあげたあと、動物達を放牧した。
「では次に、畑の世話について説明をします」
動物の世話を終えた私とイリスさんは畑に移動した。
ギンファちゃんは、『冷たい飲み物を用意しておきますね!』と言って、家に戻って行った。
「まずは、草むしりから始めます。この時期は伸びるのが早いので、雑草を見つけたら必ず抜いておいて下さい。その際に、えっと……ああ、あった、これです。この草は緑羽草といって、体力回復薬の材料になりますから、これだけは捨てないで取っておいて下さいね」
私はそう言って、緑色の丸い双葉が下に向かってくるんと羽のように広がった草を摘み、イリスさんに見せた。
「え……こ、この草が、薬になるんですか……?」
「はい、そうですよ。昨日言ったでしょう? その辺に生えてる草だって、立派な材料なんです」
「…………」
「さぁ、イリスさんも草むしりを手伝って下さい。それが終わったら水やりですよ。シヴァくんの朝ごはんができるまでに終わらせないと。頑張りましょう!」
「あ、は、はい! 頑張ります!!」
私はイリスさんと一緒に草むしりをしたあとコタを呼び、イリスさんにジョウロを使った水やりの仕方を教えた。
もちろん、ジョウロの水がなくなったら水を汲みに行くのはコタの役目だ。
私がミウちゃんの術で水やりをするようになり、ギンファちゃんが来て動物の世話の手伝いをする必要がなくなっていたコタは、復活したその役目に喜んでいたようだった。
「お、恐れ入ります、ありがとうございます、コタ様!」
「ウォン?」
張りきってジョウロに水を入れてきたコタに、イリスさんはまたもや"様"づけでコタを呼び、ジョウロを受け取った。
コタはそれに疑問に満ちた返事を返す。
「……イリスさん。コタの事は、"コタくん"でいいですよ。ね、コタ?」
「ウォン!」
「えっ……! は、はい、わかりました……!! コ、ココ、コタ、くん……!!」
「ウォン!」
私の言葉にコタが承諾の返事を返すと、イリスさんはコタの呼び方を改めた。




