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住人達の攻防 1

本日一回目の更新です。


お待たせしました、この回を書き上げました!


今日はこれのみです。

奴隷商館を出てアイリーン様と別れ、洋品店でイリスさんの服を買ったあと、私達は街門を出て、魔法のじゅうたんに乗り込んだ。


「イリスさん。もう少し中央に乗って下さい。そんなに端にいたら危ないです」

「……えっ……で、でも、私のような者がそんな……中央にだなんて……端で、十分です……」

「何言ってるんですか? 危ないですよ。落ちちゃいます」

「……い、いえ、大丈夫です……」

「……大丈夫じゃないです。とにかくもう少し」

「はいはい。ほらおいでよ。君はこっち」

「……えっ……!?」


私とイリスさんの押し問答に、フレンさんが呆れたような声を上げ、イリスさんの腕を掴んで、自分とギンファちゃんの間に引きずるように移動させた。


「……え……! ああああのっ……こ、こんな真ん中に私のような者がっ……は、端に……!」

「駄目。君の席はここ」

「それがいいです。じゃあ出発しますよ!」

「ええっ……!!」


戸惑い、おろおろするイリスさんをスルーして、私は魔法のじゅうたんを浮かび上がらせた。







家に帰ると、私はまずイリスさんを放牧スペースに案内した。


「イリスさん。この子達がうちの動物達ですよ! コッコにモオにメエにラピにフエ。名前はあとで教えますから、覚えて下さいね。モオやメエは首輪と首輪についてる鈴の違いで判別するといいです」


私は見分けの難しいこのモオとメエ達に、色違いの首輪と鈴をつけ、見分けがつくようにしていた。


「……それから……コタ~~!! おいで~~!!」

「ウォ~ン!」


私は家の敷地を自由に動き回っているコタを呼んだ。

すぐにどこからか返事が返され、コタが駆けてくる。


「イリスさん、ウォンのコタです。コタはかなり賢いんですよ。コタ、今日から一緒に暮らす事になった、新しい家族のイリスさんだよ。貴方達動物達と畑の世話をお願いする事になったから、前に私にしてくれてたみたいに、イリスさんを手伝ってあげてね?」

「ウォン!」

「……え……! そ、そそそそんな、私のような者を家族だなんて……! そこらに生えてる雑草のように扱って下されば……!!」

「え? ……何言ってるんですか、イリスさん。それに、その辺に生えてる草だって、私が生業にしている錬金術では、立派な調合アイテムの材料なんですよ? 卑下する対象にはなりません」

「……え……」

「さぁ、動物の世話についてはまたあとで説明しますから、家に入りましょう。イリスさんのお部屋へご案内します」

「……あ…は、はい…」


私はイリスさんが頷くのを確認すると、家に入った。







「ここがイリスさんの部屋ですよ」


私はイリスさんを案内して三階に上がり、階段に一番近い部屋に入った。


「……こ、ここ……ですか……?」

「はい。部屋にある家具は、好きに使って下さいね」

「……あ、あの……! わ、私のような者にこんな立派な部屋、もったいないです……!!」

「へ? ……立派な部屋って……ここ、普通の部屋ですよ?」

「そ、そんな事はございません! 広すぎます……! 私のような者は、物置部屋にでも置いて戴ければそれで十分です……!!」

「…………はい?」


私はぱちぱちと目を瞬いた。

も、物置部屋……?


「……そんな場所じゃ、眠れないでしょう……?」

「いいえ、大丈夫です……! どうか私のような者は、物置部屋で……!!」

「……う~~ん。……わかりました」

「は、はい! では、お手数ですが、物置部屋へご案内をお願い致します……!」


イリスさんはそう言って深々と頭を下げた。

……うん、今の"わかりました"は、そういう意味じゃないんだけどね?


「イリスさん。まずはその、"私のような者"って言葉を、言わないようにしましょうか。きっとそれがいけないんです。だから、それを直す事から始めましょう」

「……え?」


私がそう言うと、イリスさんは顔を上げ、ぽかんとした表情で私を見つめた。

対して、私はにっこりと笑みを浮かべる。


「イリスさんの部屋はここです。家具は、自由に使って下さいね」

「……え……っ!?」

「さ、次は家の中を案内しましょうね。はい、荷物はここに置いて。さあ行きましょう!」


私は早口にそう捲し立てながらイリスさんの手にあった荷物を奪い取り、ベッドの上に置いた。

次いでイリスさんの手を取り、部屋を出る。


「え……ああああの、ク、クレハ様……!?」

「やだなぁ、"クレハちゃん"ですよイリスさん? イリスさんは契約奴隷じゃないんですから、様づけする必要はないでしょう?」

「えっ、で、でも、あの」

「そうそう、この家の決まり事として、食事は三食、皆で揃って食べます。お風呂は順番。掃除は自分の部屋だけ自分でやります」

「えっ、あ、あの、お掃除などの家事は、今後全て、私がやりますので……!」

「ええ? 駄目ですよ。掃除はシヴァくんとフレンさんが、料理はシヴァくんが、洗濯はギンファちゃんがすでに担ってますから。もっとも、洗濯は私もやりますけど」

「えっ……な、なら、シヴァ様とギンファ様にご了承を戴きますから……!!」

「"シヴァくん"と"ギンファちゃん"ですよイリスさん? ……でも、そうですね。シヴァくんは二つ兼任してますし、掃除に関してはシヴァくんと交代するよう交渉してもいいですよ」

「えっ……お、お掃除だけ……ですか……?」

「はい、掃除だけです。それも、シヴァくんの了解が取れたら、ですからね?」

「……。……わ、わかり、ました……! シヴァ様のご了承を、必ずや戴きます……!!」

「"シヴァくん"ですよイリスさん。……じゃあとりあえず、シヴァくんの所に行きましょうか」


私達はシヴァくんの部屋へ向かった。

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