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魔法の大工屋さんと増築

本日一回目の更新です。

今日はこれのみ。

「よし、洗濯終わり! シヴァく~ん、ギンファちゃ~ん! お待たせ! 街に行くよ~!」


私は空になった洗濯籠を持ち上げながら、いつものように庭で打ち込み稽古をしているシヴァくんとギンファちゃんに声をかけた。


「はい、わかりました」

「クレハ様、私は今日は、お留守番しています。魔法の大工さんをお迎えに行くだけなら、魔法のじゅうたんの人数制限の為にも、そのほうがいいでしょうし」

「え……いいの?」

「はい! 籠、お預かりします。片付けておきますね」

「あ、ありがとう。ごめんねギンファちゃん。すぐに帰ってくるからね」

「はい、行ってらっしゃいませ!」

「うん、行ってきます」

「行ってきます」


私はギンファちゃんに洗濯籠を渡し、すでに用意してあった魔法のじゅうたんに乗り込んだ。

そして飛び立った後、庭で手を振っているギンファちゃんを振り返った。


「う~ん……」

「クレハ様……? どうされました?」

「あ、うん……あのね、ギンファちゃんて、護衛として雇ったでしょう? なのに、遠出の時とか、お留守番して貰っちゃってるじゃない? 畑や動物の世話の為とはいえ、ギンファちゃん、毎日シヴァくんと稽古して、腕を上げるべく励んでるのに、何だか申し訳ない気がして。……畑と動物の世話、専門にもう一人雇ったほうがいいのかなぁ?」

「……ギンファちゃんは、畑や動物(るすばん)の世話も楽しんでやっているとは思いますが。けれどクレハ様が気になるなら、それもいいかと思います」

「……う~ん……」


そうなんだよねぇ。

ギンファちゃん、お留守番も別に嫌そうじゃないから、前回も前々回もお願いしちゃったんだけど……毎日一生懸命訓練してる姿を見てると、次また遠出する事があった時、またお留守番をっていうのもなぁ~……。


「……今度、一度ギンファちゃんときちんと話をしてみようかな。ギンファちゃんがどう思ってるか聞いて、それから決めても、いいよね」

「はい」


……よぅし、あとでギンファちゃんとしっかり話し合おう!







街へ着くと、魔法の大工屋さんのお店へ向かった。

先日、アージュに親愛の水晶を届けた後、アイリーン様の紹介で魔法の大工さん達に会った。

家の増築をして欲しい旨を伝えると、『じゃあ今取りかかってる仕事が終わってから』と言われ、大工さん達の手が空くまで待つ事になった。

それなら増築が終わって個室ができてからのほうがいいかなと思い、フレンさんの引っ越しは待って貰った。

そして、ようやく私の家の増築に取りかかれると連絡があり、今日、私は家まで来てもらうべく、魔法の大工さん達を迎えに来たのだ。

私の家は街の外だし、魔物が出て危ないからね。


「こんにちは~!」


私は入り口の扉を開け、挨拶をしながら中へ入った。


「ああ、カハラさん! お待ちしていました。ではご自宅までご案内をお願い致します」

「はい。じゃあ行きましょう! 今日はよろしくお願いします!」


私は魔法の大工さん達を引き連れ、街を出た。

魔法の大工さん達は四人。

なので魔法のじゅうたんは二つ用意した。

二人ずつに別れて乗ってもらい、私とシヴァくんで別々に魔法のじゅうたんを操った。


「うわぁ……こ、これは凄い!!」

「空を飛んでる……なんて眺めだ……!!」

「これは爽快だな……!!」

「凄いな、目的地までひとっ飛びか……!!」


……な、なんか、魔法の大工さん達が感動してる……。


「……カハラさん!! 増築の代金は半額にしますから、代わりにこの魔法のじゅうたんを三枚作って下さい!! ハイヴェル様から、貴女は錬金術士だとお聞きしました。これも貴女の作品なのでしょう? 今後、他の街や村の仕事を受けた時に、これは重宝しそうですから……!!」

「えっ、半額!? わ、わかりました! 三つですね!」


やったぁ!

費用は安いに越した事はないもんね!

魔法のじゅうたんで迎えに来て良かった……!!







「ああ……カハラさんの家は、ここでしたか!」

「ここへ来るのは、約一年半ぶりですね、親方」


家に着くと、魔法の大工さん達は懐かしそうに家を見上げ口を開いた。


「えっ、皆さん、うちに来た事があるんですか?」


……ん?

『約一年半ぶり』……?


「おや、お兄さんから聞いてませんか? この家を作ったのは、私達なのですよ」

「え? ……ええっ!? そ、そうだったんですか!?」

「はい。この家の増築なら、簡単です! 何しろ、私達の作品に更に手を加えるだけですからね! 明日までと言わず、今日中には終わらせましょう! さあ皆、始めるぞ!」

「「「 はいっ! 」」」


そう言うと、魔法の大工さん達は作業を開始した。

け、けれどこの家が、まさか魔法の大工さん達が作ったものだったとは……。

てっきりラクロさんが魔法か何かで用意したと思ってたけど……ああでも、そうだよね、モオ達だって『買った』って言ってたんだから、家だって当然……。

い、いくらしたんだろう……散財させてごめんなさい、ラクロさん……。

……あれ?

でも、家とかの話を決めてから、私がここへ来るまで、そんなに時間経ってなかったよね?

来た時にはすでに家は出来上がってて……んん?

アイリーン様は、魔法の大工さんは家を作るのに数日かかるって言ってなかったっけ?

……タイムラグが生じてるよ……?

……あの世からこの世へ来るって、本当は一瞬じゃなかったのかな?

うう、よくわからない……。


「うわああ! 凄~い!!」

「えっ? ……うわぁ……!!」


ギンファちゃんの感嘆の声に顔を上げると、目に飛び込んで来た光景に、私も感嘆の声を漏らした。

魔法の大工さんの横に、ずらりと一列に並んだ丸太。

それらが魔法の大工さんの前までひとりでにくると、スパッと一瞬で均等の大きさに切られ、またひとりでに移動する。

移動した先には別の大工さんがいて、来た丸太に場所の指示を出している。

指示された丸太はその場所に行き、積み上がっていく。

するとまた別の大工さんが積み上がった丸太を固定していく。

最後にこれまた別の大工さんがペンキとハケに指示を出し、塗っていく。

そんな感じで、私の家の増築は滞る事なく進んでいった。

魔法の大工屋さん、という名に、物凄く納得出来てしまう光景だった。

そして、魔法の大工さんの宣言通り、私の家の増築は、たった一日で終わったのだった。


……それにしても、ラクロさんかぁ。

去年の秋以来、会ってないなぁ。

今何してるんだろう……忙しいのかなぁ、久しぶりに、会いたいな……。

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