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出店 2

本日一回目の更新です。

昨夜は結局、更新できるだけの時間取れませんでした。

もしお待ち戴いてた方いたら、すみませんでした。

お昼近くなると、市場に来る人の波が落ちてきた。

そろそろいい頃合いかもしれない。

そう考えた私は、皆に声をかけた。


「シヴァくん、ギンファちゃん、フレンさん。そろそろ交代でお昼ご飯食べましょうか。フレンさん、人数分のお弁当を作ってきましたから、食べて下さい」

「へえ、ありがとう。でも僕は最後でいいから、三人で先に食べなよ」

「え? いえ、二人ずつで交代にしましょう? 客足が落ちたからって、一人でなんて」

「大丈夫だよ、一人じゃないから。食事する時の為に補助要員を呼んでおいたんだ。ちょうど来たから」

「補助要員、ですか?」

「うん。ほら、あれ」


フレンさんが指差したほうを見ると、そこにはこちらに向かって歩いて来るセイルさんがいた。

セイルさんは私の視線に気づくと、にこ、と微笑んだ。


「やあ、こんにちは、クレハちゃん、シヴァくん、ギンファちゃん。フレン、来たぞ」

「うん、いらっしゃい。待ってたよセイル」

「こんにちはセイルさん。すみません、また手伝って貰っちゃうみたいで」

「え?」

「助かります、ありがとうございます」

「へ?」

「それじゃあ、よろしくお願いします。できるだけ急いで食べちゃいますから」

「え……?」

「急がなくてもいいよ、クレハちゃん。ゆっくり食べなよ。ねえ、セイル?」

「は……?」

「あ……はい、ありがとうございます。じゃあ……。シヴァくん、ギンファちゃん、お昼食べよう」

「はいっ」

「はい」


私達はシートの奥に回り、お弁当を広げた。


「ほらセイル、いつまでもそこに突っ立ってないで、こっちに来て座りなよ」

「は? こっちに……って、そこに? 何で?」

「は? 売り子をやるからに決まってるじゃないか」

「はぁ!? いやいや、待てフレン。俺は買い物に来ただけだよ? わかってるだろう? クレハちゃんが出店するから、客がすく昼時に買いに来いってお前が呼んだんだから」

「うん? 何の事だい? そんな風に言った覚えはないなあ。僕は、客がすく昼時に食事の交代要員に来いって言ったはずだけど?」

「なっ!? ちょ、ちょっと待て! 話が違う!」

「え? 違わないよ? ……ほら、いいから早くこっちに来て座りなよセイル。……それとも、クレハちゃん達にまだ食事を取らせない気?」

「う……! ……くそ、騙された……!」


苦々しげにそう言って、セイルさんはシートのほうに回った。

……えっと……全部聞こえてるんだけど、どうしよう?

手伝うつもりで来たんじゃないんなら、やっぱり、悪いよね……。

私は箸を置き、お弁当の蓋を閉めた。


「あの……セイルさん、ごめんなさい。私、お昼はもう少し後で食べますから、どうぞ買い物して帰って下さい」

「えっ?」

「……ほら、セイルがグダグダ文句を言うから、クレハちゃんが気を使っちゃったじゃないか。そんなだから彼女ができないんだよ」

「なっ! それは今関係ないだろう!? だいたいお前が俺を騙すから……!!」

「ただ買い物をさせるだけなら時間帯まで指定しないよ。セイルの読みが甘いのさ。だから長々と不毛な片思いなんか続けるんだよ」

「な、なっ……!! だからっ、それは今は関係ないだろうっ!?」


あ、セイルさん、ちょっと涙声になった……。


「あ、あの、フレンさん。それくらいで……私はいいですから」

「ああ、更に気を使わせたよ、セイル? ……どうするの? 帰るの?」

「…………いや。いいよ、クレハちゃん。君達が食べ終わるまで手伝う。ここで帰ると、あとでフレンが恐ろしいから」

「当然。女の子に食事を我慢させた酷い男として一生冷たく罵ってあげるよ」

「……ね?」

「あ、あはは……」


一生ですか、フレンさん……。


「というわけだから、お昼、食べていいよ。クレハちゃん」

「あ、はい……じゃあ、すみません。お言葉に甘えさせて戴きます。そのかわり、セイルさんが買われる物、少しだけ値引きしますね」

「わ、それは助かるよ。ありがとう」

「ええ、値引き断らないんだ? 『そんな必要ないよ』ってくらい言える甲斐性ないと彼女できな」

「う、うるさい!!」

「……ちょっと、大声出さないでよセイル。客が来なくなるじゃないか。それくらい考えなよ」

「くっ……!!」


……ええと……フレンさんとセイルさんて、仲のいい友人関係なはずなんだけど……おかしいな?

……いや、遠慮せず何でも言い合う仲なんだ……うん、きっとそうだ。

フレンさんとセイルさんの遠慮のない会話は、私達がお昼を食べ終わるまで続いた。

セイルさんにお礼を言い、私達が売り子に戻ると、セイルさんは野菜をいくつか買って帰って行った。

去っていくその背中が哀愁を漂わせていたのは……きっと気のせいだろう、うん。


「ああ、あったあった。ずいぶん端のほうの出店なのね。探したわ」

「え? ……あ! ミュラーさん!」

「こんにちはクレハちゃん。久しぶりね」

「はい、お久しぶりです!」


この人は、ミュラーさん。

私を狙った盗賊を捕まえる時に協力してくれた、女性騎士様だ。


「ミュラーさん、お買い物ですか?」

「ええ。セイルに、貴女が自由市場で食材を売ると聞いたから来たの。あの時食べた野菜、凄く美味しかったから」

「え、じゃあ、それを買いに? わあ、ありがとうございます! 野菜はこれです! どれにしますか?」

「そうね……わ、どれも美味しそう。どれにしようかしら」

「おすすめはハクナですよ!」

「ハクナ? ……ああ、いいわね。じゃあハクナをひとつと、あとオーネをひとつ貰うわ」

「はい、ありがとうございます!」


ハクナ、オーネは日本で言うところの、白菜と大根だ。


「ねえクレハちゃん、これからは毎月出店するの?」

「あ、いえ、毎月というわけじゃあ。ただ収穫した物が貯まってきたら出店する予定です」

「そう……ねえ、相談なんだけど。これからは定期的に私に売ってくれない? 私、野菜とかの良し悪しはわからなくて、いつも市場で適当に買うんだけど……たまに味がよくない物を買っちゃって後悔するのよ。だけどクレハちゃんの野菜は美味しかったから、クレハちゃんから買うならそんな事もなくなるし。……どうかしら? 私を助けると思って、ね、お願い!」

「あ、はい、わかりました。いいですよ。どこに届ければいいですか?」

「わ、本当? ありがとう! じゃあ私の家にお願い! 家の場所は」

「うちの近所よ、クレハちゃん」

「えっ?」

「あ、アージュ! ジュジュさん! こんにちは!」

「こんにちはクレハちゃん。ミュラちゃん」

「こんにちはクレハ! ミュラお姉ちゃん!」

「アージュちゃん、ジュジュさん! ……え、クレハちゃんと、知り合いなんですか?」

「ええ。クレハちゃんは、アージュのお友達なの。それにしても、いい話を聞いたわ。クレハちゃん、今の話、うちにもお願いできるかしら?」

「え! ジュジュさんも定期的に買ってくれるんですか!?」

「ええ。……並んでる野菜、どれも美味しそうだもの」

「わ……! ありがとうございます! じゃあそうさせて戴きますね!」

「ふぅん……それなら、アイリーン様にもその話をしてみようかな。きっとアイリーン様も定期的に買うだろうし」

「え。わぁ……なら、もう少しだけ畑広げようかな……! でないと逆に足りなくなりそうですけど、でも、喜んで貰えるなら嬉しいですから!」

「うん、ならよろしく。クレハちゃん」

「なら、畑、手伝います。クレハ様」

「私も! いっぱい野菜作りましょうね!」

「うん! ありがとう二人とも!」


こうして、定期的に三軒の家に、野菜を卸す事が決まった。

これなら今後は自由市場に出店する必要はないかな?

とにかく、畑、頑張って広げよう!

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