帰還 2
今日1回目の更新です。
また二日間馬車に揺られたあと、街に帰って来た。
「ああ、楽しかったぁ! 王都に行けて、王様のパーティーにも出れて、綺麗なドレス着れて、ダンスして……一生の思い出だよ! クレハ、誘ってくれてありがとう! アイリーン様、連れていって下さって、どうもありがとうございました!」
「ふふ、どういたしまして。そんなに喜んで貰えて嬉しいわ」
「それじゃアージュ、帰ろうか。動物屋まで送るよ。アイリーン様、私も楽しかったです。新しい材料、たくさん手に入ったし。フレンさん、採取地の護衛、ありがとうございました」
「ふふ、クレハちゃんは、やっぱりそれが一番嬉しい事なのね」
「そのようですね。さて、クレハちゃん。今度の自由市場、出店するでしょ? 申請しておくよ?」
「あっ、はい! お願いします、フレンさん」
「え、クレハ、自由市場にお店出すの?」
「うん。倉庫に余ってる食材を売るんだ」
「へえ! なら私、買いに行くね!」
「わ、ありがとうアージュ。待ってるよ」
「あら、食材って、クレハちゃんが作ってる野菜とかよね? 食べてみたいわね。その日はメイドに買い物を頼もうかしら」
「わ、本当ですか? お待ちしてます!」
「ええ。それじゃあ、またね。クレハちゃん、アージュちゃん」
「はい、失礼します!」
「また来ますね、アイリーン様。それじゃフレンさん、また28日に」
「うん。またね」
私達はハイヴェル邸をあとにした。
私とシヴァくんはそのあと動物屋までアージュを送り、街門をくぐって魔法のじゅうたんに乗ると、ギンファちゃん達が待つ家へと向かった。
「ギンファちゃん! ただいま~! ライルくん、セイルさん! お留守番、ありがとうございました!」
家に帰り、扉を開けて中へ向かってそう声をかけた。
すると、階段からバタバタと駆けてくる足音が聞こえ、セイルさんが姿を見せた。
「クレハちゃん! やっと帰って来てくれた~!! 良かったぁ、これで解放される~!!」
「へ? ……えっ? ど、どうしましたセイルさん? 解放って……?」
確かセイルさんは、暇すぎる有給を消費できるって、喜んでいたはずだけど……。
な、何があったんだろう?
「どうもこうも……あの二人、獣人同士だからか、たった二日間で物凄く仲良くなって……俺、凄くいたたまれなくなって、居心地悪くて悪くて……独り身の俺に、この空間は辛かったよ~……」
「へ?」
あ、あの二人?
獣人同士……?
「セ、セイルさん? それって」
「お帰りなさいクレハ様! シヴァくん!」
「お帰りなさい!」
「あっ! ただいまギンファちゃん、ライルく……!?」
リビングから出て歩いてくる二人を見て、私は固まった。
視界の端でセイルさんが、『ね?』というような視線を向けているのが映る。
……ギンファちゃん、ライルくん。
貴方達はどうして、家の中で手を繋いでいるの……?
「……ただいま、ライル、ギンファちゃん。クレハ様、お茶を飲んでゆっくりしましょう。用意します」
「え、あ、う、うん。ありがとうシヴァくん……」
この状況に動じなかったシヴァくんの提案で、石になっていた私は我に返った。
「え、ええと……そう! 皆にお土産を買って来たんです! お茶、飲みながら、渡しますね!」
「あ、はい! ありがとうございますクレハ様!」
「じゃあリビングに移動しましょうか」
そう言って、ギンファちゃんとライルくんは、そのまま、リビングに移動した。
……あの手はいつ離すんだろう……。
「……クレハちゃん。俺、お土産より、彼女が欲しい……」
「あ、あはは……。……頑張って下さい、セイルさん」
でもそれなら、たぶん、アイリーン様との両思いは無理だから、そろそろ諦めて他に目を向けたほうがいいです……。
その後、どこか甘い空気が漂うリビングで、私は三人にお土産を渡した。
お茶を飲み終わると、ライルくんとセイルさんは街に帰って行った。
ギンファちゃんとライルくんの"しばしのお別れ"シーンは……うん、ちょっと胸焼けしました。
あとでフレンさんに聞いた話によると、その日フレンさんは夜遅くまで、セイルさんにやけ酒につき合わされ、かなり迷惑をしたので、『彼女が欲しいなら、アイリーン様は無理だから諦めて他探しなよ。もう充分わかってるだろ?』と、キッパリと現実を突きつけたとの事です……セイルさん、ファイト。




