帰還 1
本日の更新1回目。
今日はこれのみ。
翌日。
朝食を済ませた私達は、宿を引き払うと、幾つかの店を覗き、お土産を買った。
アイリーン様とフレンさんは、ハイヴェル家の人達とセイルさんに。
アージュはアーガイルさんとジュジュさんに。
そして私は、お留守番を任されてくれたギンファちゃんとライルくんとセイルさんに。
私はアイリーン様やフレンさんと同じ人に買うため、品物が被らないように相談して決めた。
お土産を全て買い揃えると、街門に向かった。
いよいよ王都ともお別れだ。
街門に着くと、なんとアレク様とフェザ様の姿があった。
わざわざ見送りに来てくれたらしい。
「それでは母上、次は夏期休暇の時にまた伺います。それまでどうか、お元気で」
「ええ。貴方もね、アレク」
「はい。……兄上も、見送りに来たがっておられたのですが。結局昨日も、他の貴族やご令嬢に捕まり、母上のご友人にご挨拶もできず、とても悔やんでおられましたし」
「え」
「まあ……。アレク、ならアルフに伝えてちょうだい。貴方は忙しい身なのだから、私の周りの事にまであまり気を回しすぎないように、と」
「母上……。……わかりました。そのように伝えます」
「ええ、お願いね」
「あの、アレク様。お世話に、なりました。とっても、とっても、楽しかったです」
「アージュちゃん……僕もだよ。とても楽しかった。……夏期休暇に君の街に行ったら、また僕と会ってくれるかい?」
「えっ……! は、はい! もちろんです!」
「ありがとう。それじゃあ、また。楽しみにしているよ」
「はいっ!!」
わぉ……アージュに一足早い春がきてる……!!
ずいぶん仲良くなってるなぁとは思ったけど、やっぱりかぁ……う~ん、ちょっと羨ましい……。
「クレハ。俺もアレク同様、この数日は楽しかったぞ。いい息抜きになった、ありがとう」
「へっ? ……楽しかったって、採取につき合ったり魔物と戦ったりしたのが、ですか? フェザ様?」
「ああ。いつもは、修行を兼ねて魔物と戦うだけだからな。石や草を集めるのは新鮮だった」
「い、いつもはって……仮にも王子様が、何をしてらっしゃるんですか。そんなに修行して強くなって、どうなさるんです?」
「ん? ……そう、だな……。……国でも守るさ」
「はい? 将来、王子様やめて騎士様にでもなるんです?」
「……さあな。……次の夏期休暇は、俺もアレクにひっついてそちらに行く。また採取につき合うぞ、クレハ。結構楽しいからな」
「え……ええ!? 本気ですか!?」
「もちろんだ。夏に、また会おう」
「え~……。ア、アイリーン様、アレク様! フェザ様こんな事言ってますよ、止めて下さい!!」
「あらあら。お父上の許可は、きちんとお取りになって下さいませね、フェザ様」
「そうだね。でないと連れては行かないよフェザ?」
「ああ、わかっている」
「お、お二人とも……止めないんですか……?」
「無駄だからね」
「ええ、無駄だものね。ふふ」
へえ……無駄、なんだ……。
「……わかりました。じゃあ、また夏に」
「ああ。それまで風邪などひかず、元気でいてくれ」
「……フェザ様も。あんまりアレク様に心配かけちゃ駄目ですよ? 無茶も程々に、です」
「ふ。ああ、わかった」
「……さあ、名残惜しいけれど、そろそろ行きましょうか、クレハちゃん、アージュちゃん」
「あ、はい。じゃあ、また」
「はい。……アレク様、また夏に会いましょうね!」
「うん。約束するよ」
「じゃあな!」
私達は馬車に乗り込み、王都をあとにした。
そこであった新たな出会いと、思い出を、心に刻んで。
王都周辺での採取物
鉱石各種(ミスリルなどの高級品除く)
ハーブとその種
湧き水
溶けにくい氷




