王都にて 3
本日一回目の更新です。
キラリちゃんの魔法は徐々に広がって、周囲は真昼のように明るくなった。
「わぁ……! キラリちゃん凄い! さすがは光の精霊だね!」
「え、凄い!? 本当ですか!? 本当にそう思われますかマスター!?」
「え? う、うん……」
「……っ、やったぁぁ!!」
目をキラキラさせて尋ねたキラリちゃんに私がそう答えると、キラリちゃんは両手をあげて喜んだ。
か、可愛い……。
「……凄いのは認めるが、やりすぎだな」
「え?」
王子様の硬い声が聞こえ、私はそちらを見た。
すると次の瞬間、洞窟の先から幾つものギィギィという音が聞こえてきた。
「え? な、何、この音……?」
「ゴモリの鳴き声だ。あいつらは暗い場所を好む。せっかくの好みの場所が明るくなった事でさぞ不機嫌だろうさ。……気を付けろ、来るぞ!」
「えっ!?」
王子様の言葉通り、ギィギィという音はどんどん近くなった。
王子様とシヴァくんとフレンさんが私の前に出て、それぞれ武器を構える。
そして、ギィギィという鳴き声や、バサバサと羽ばたく音と共に、無数のゴモリが現れたのだった。
ゴ、ゴモリって、コウモリの魔物なんだ……!!
ていうか、数多すぎない!?
「うわぁ……これは酷いね。とてもちまちま倒してられる数じゃないな。……フータ、ここへ! 僕の敵を凪ぎ払え!」
「はい、マスター!」
フレンさんの呼び声を受け、フレンさんの風の精霊が現れた。
フータくんは風魔法を発動させ、ゴモリを次々と切り裂いていく。
「う~ん、フレンさん、相変わらず凄いなぁ。……ようし、私も! フエンくん、フウリちゃん、おいで! ゴモリをやっつけて!」
「「 はい、マスター! 」」
私の声に答えてフエンくんとフウリちゃんが現れ、それぞれ火と風の魔法でゴモリを殲滅していく。
「へえ、これはいい。楽ができる。……そこのお前、シヴァといったな? 精霊魔法を突破してきたゴモリは俺達で倒すぞ! クレハの所へは行かせるなよ!」
「はい、承知しています!」
そう言ってシヴァくんと王子様は私の数歩前に移動し、魔法を回避してきたゴモリを次々と切り捨てた。
そうしてゴモリを全て倒すと、辺りにはゴモリのドロップアイテムが散乱していた。
どんな倒し方をしても、ドロップアイテムは必ず残る。
不思議だ。
私達は手分けしてそれを拾い集め、キラリちゃんの光魔法の範囲を自分達の周囲だけに調整すると、洞窟の奥に進んだ。
その後は、材料採取よりも、張り切りすぎて逆に迷惑をかけてしまったと落ち込むキラリちゃんを励ますほうが、大変だった。
採取を終え宿に帰ると、部屋の中でアージュがアレク様の手を取り、くるくると回っていた。
その光景を見て、私は呆然と立ち尽くした。
こ、これは……。
「あら、お帰りなさい皆。見て、アージュちゃん、上手でしょう? 上達が早くてびっくりしたわ」
アイリーン様が私達に気づいて、微笑みながらそう言うと、アージュがこっちを向いた。
「お帰りクレハ! どう? 私ダンスが踊れるようになったんだよ! 凄いでしょう? アレク様の教え方、凄く上手なんだよ! クレハも教えて貰いなよ!」
「そんな事ないよ。これはアージュちゃんが頑張った成果だよ」
「えっ。あ、ありがとうございます……! えへへっ……!」
アレク様に誉められ、アージュは少し顔を赤らめて嬉しそうに笑った。
「さて、それじゃあ、次はクレハちゃんかな。採取で疲れているだろうけど、ダンスの練習、始めようか」
そう言って、アレク様はアージュの手を離し私のほうへ歩いてくる。
「えっ、い、いえ、私は踊らないので、いいです……!!」
「何言ってるの。そんな事言って、当日誘われたらどうするの?」
「そんな、私を誘う人なんていませんよ! 子供だし!」
「そんな事は関係ないよ。少なくとも、僕は誘うよ? たぶん、兄上も」
「ええ!? ……さ、誘わないで下さい!!」
「嫌だよ。君達と踊れば、その間は他のご令嬢の相手をしなくて済むんだ。僕達を助けると思って、ダンス、覚えてよ。ねっ?」
「ああ、そうだな。俺も誘わせて貰うとしよう」
「は!? じょ、冗談……!!」
「いや? 本気だ」
「あらあら、これは大変ね。クレハちゃん、練習、頑張って?」
「そ、そんな、アイリーン様まで……!!」
「だ、大丈夫だよクレハ! ダンスの練習、楽しいよ? 一緒に頑張ろ?」
「……アージュぅ……。うう、わかりました……」
とどめにアージュからも説得されて、私は観念した。
その後、宴の日まで、日中は材料採取をし、夕方から夜はダンスの練習とフレンさんのマナー講座を受けるというスケジュールが組まれ、私はそれを実行した。
何故かダンスの練習にシヴァくんやフレンさんが加わり、毎日の採取には必ず王子様が同行した。
私が『他の予定はないんですか?』と王子様に尋ねると、『第四王子というのはわりと暇なんだ』と返答が返ってきた。
それからはもう、何も言わない事にして、共に採取に出かけた。




