表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/125

王都にて 1

本日1回目の更新です。

翌日。

皆で楽しく朝食を取り部屋へ戻ると、扉の前にアレク様と金髪美少年が立っていた。

挨拶を交わし、揃って部屋に入る。


「夫人。父上より、こちらを預かって参りました。どうぞ、お受け取り下さい」


ソファに腰を落ち着けるとすぐに、金髪美少年はアイリーン様に封筒を差し出した。

封筒には、"招待状"と書かれている。


「まあ……新年の宴の招待状ですわね? ……出席しなければ駄目かしら、アレク?」

「母上……申し訳ありませんが、招待状が来た以上は、出席をお願いします、としか申せません」

「案ずる事はございません夫人。父上は、そちらのご友人も一緒にと、申しております」


そう言って、金髪美少年は私とアージュを見た。


「え? 私達?」

「えっと……し、新年の宴って何? クレハ?」

「さ、さあ……?」

「新年の宴とは、毎年1月2日に開かれる、王家主催のパーティーの事だ。父上より、君達も夫人と一緒に出席する許可が下された」

「へえ、そんなパーティーがあるんですね……!」


王家主催のパーティーかぁ。

きっと凄いんだろうなぁ。

そこに私も出席する許可が…………。

はっ?


「しゅ、出席!?」

「うわぁっ、本当ですか!? 聞いたクレハ、凄いよ!! 王様のパーティーだって!! 庶民の憧れの場所だよ!!」

「えっ!? ア、アージュ……!?」

「凄いなぁ、どんなかなぁっ!! 楽しみだねクレハ!!」

「……アージュ」


アージュは目を輝かせ、無邪気に喜んでいる。


「……ふぅ。仕方ないわね。出席させて戴きますわフェザ様。あの子達と一緒に」

「はい、お待ちしています、夫人。……悪いなアレク。夫人を動かす為に、お前と同じ手を使った」

「……謝るのなら、相手は僕じゃないよ。フェザ」

「……そうだな。 だが、喜んでいるぞ?」

「そうだけどね。……アージュちゃん、クレハちゃん。今日はパーティーで着るドレスを選びに行こうか。プレゼントするよ」

「え、あの、いえ、私は……!」

「えっ、ドレス!? そ、そっか!! パーティーだから、ドレス着るんだ!! うわぁぁっ、凄い凄い!! ね、クレハ!!」

「!!」


ああ……駄目だ、これ、行きたくないなんて言えない。

無邪気に喜んでるアージュを悲しませちゃう……。

でも……王家主催のパーティーなんて、庶民が行って楽しい場所だとは思えないけど……はあ。


「アレク様、クレハちゃんのドレスは必要ありませんよ。こんな事もあるかと、以前アイリーン様がプレゼントした物を、僕がクレハちゃんの鞄に入れておきましたから」

「へっ!? あの……フレンさん? それって、私の部屋のタンス……?」

「いや、僕は部屋には入ってないよ。ドレスを取って来たのは精霊さ。だから大目に見てくれると、嬉しいんだけど?」

「え……ま、まあ、それなら……?」

「ありがとう。というわけで、クレハちゃんのドレスはありますから、予定通りクレハちゃんは採取に行きます。マナーについては、夜に僕がきっちり教えますから、ご心配なく」

「……え?」


マ、マナー……って……え、何それ、美味しいの……?


「わかった。なら、アージュちゃん。君には僕が教えるよ。頑張ろうね?」

「え、あ、はい! パーティーの為に、頑張ります!」

「うん。いい返事だ。じゃあ、まずはドレスを買いに行こうか」

「あ、はいっ!!」

「私も一緒に行くわ。アージュちゃんに一番似合う物を、じっくり探しましょうね」

「アイリーン様。僕はクレハちゃんの採取に付き合います」

「ええ、もちろんそうしてちょうだい、フレン。クレハちゃん、気をつけてね?」

「あ、はい。じゃ、じゃあ行って来ます。シヴァくん、フレンさん。出発しましょう」

「はい」

「うん」


シヴァくんとフレンさんの返事を聞いて、私は部屋を出るべく扉へ向かった。

フレンさんのマナー講座の事は……うん、考えるのよそう……。


「待て。採取というと、王都の外に行くのか?」

「え? はい、そうですけど」


扉に手をかけた所で投げかけられた質問に、私は部屋の中を振り返って答えた。

声の主は、金髪美少年だ。


「……そうか。わかった。なら俺も同行する」

「え……ええっ!?」

「護衛は多いほうがいいだろう? これでも腕はたつ」

「え、でも……だって、そんな。昨日会ったばかりの人に護衛なんて……あ、雇うって事ですか? えっと、おいくらでしょう? もうあんまり所持金ないですけど……」

「金などいらない」

「へ? えっと……」

「何だ? 俺では不満か?」

「え、いえ、不満というわけじゃないですけど……」

「なら何だ?」

「ア、アイリーン様、アレク様。この人、アイリーン様の知り合いで、アレク様のお友達……で、いいんですよね?」

「は?」

「あ」

「あら……自己紹介、まだでしたの? フェザ様?」

「自己紹介……? あっ!」

「え……気づいて、なかったんです?」


そう、この金髪美少年は、私にもアージュにも名乗っていないし、私もアージュも、この金髪美少年に名乗っていない。

この金髪美少年はずっとアレク様と話していたし、アイリーン様に挨拶をしたあとはすぐに帰ってしまったから、する暇がなかったのだ。

アレク様との話に割って入って名乗るのも違う気がしたし、王都の人だという事もあって、深く関わる事もないだろうから、まあいいかと思ったし。


「……悪い、失念していた。俺はフェザラッド・ネオスティア。アレクの友人だ。……これで同行させて貰えるか?」

「え? あ、はい……でも、本当にいいんですか?」

「ああ」

「……わかりました。ならお願いします。私はクレハ・カハラです」

「ク、ククク、クレハ、待って……!」

「え? 何、アージュ? ……え」


アージュのどこか固い声に視線を向けると、アージュは何故か驚愕の表情をしていた。


「クレハ……ネオスティア、って……この国の名前だよ……!!」

「へ?」


国の名前?

ネオスティア……。

……フェザラッド・ネオスティア!?

く、国の名前を、自分のフルネームとして名乗るって事は、この金髪美少年は……!!


「この国の、王子様……!?」

「ええ、その通りよ。フェザ様はこの国の第四王子なの」

「剣の修業と称してよく城を抜け出す、困った王子だけどね」

「うるさいぞアレク。……身分など気にするな。ただのフェザラッドとして接してくれ」

「ええ……!?」


いやいやいや、無理でしょう!!

王子殿下に護衛なんてさせられますか!!


「あ、あの、やっぱり私、護衛はフレンさんとシヴァくんで十分なので! お気持ちだけありがたく戴きますです!!」

「何?」

「というわけでさようなら! 行こうシヴァくんフレンさん!!」


私は早口にそう言うとすぐさま踵を返し、扉を開け、脱兎の如く駆け出した。

私の行動が予想出来ていたのか、シヴァくんとフレンさんが後ろに続いてくれた事が、重なる足音でわかって、ホッとした。

しかし。


「おい、待て!!」


という言葉と共に増えた足音に顔だけを動かし振り返ると、そこには追いかけてくる王子様の姿。

嫌ぁぁぁ、ついて来ないでぇぇぇ!!

私は心の中で悲鳴をあげながら、必死で逃げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ