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新たな出会い 7

今日一回目の更新です。

街を発ち、ひたすら馬車に揺られること二日、私達は王都に辿り着いた。

街門の所で本邸の執事長さんに出会い、用意された宿へと入った。

宿は一目で一流宿だとわかるほど立派な建物で、ロビーの天井にはきらびやかなシャンデリアがあり、床には赤絨毯が伸びていた。


「うわぁ……っ!」


ロビーを見たアージュは目をキラキラさせ、感嘆の声を上げた。

案内された部屋もとても豪華で、ここでもアージュが感激していた。

その後、旅路の疲れもあり、私達がしばらくソファに身を沈めゆったりと過ごしていると、扉がノックされ、その向こうから、赤毛に青みがかった灰色の瞳の青年が現れた。

青年はアイリーン様を見て微笑むと、口を開いた。


「お久しぶりです、義母上。やっと、またお会いする事ができました」

「アルフレート……。……立派になったわね。見違えたわ」


……この人が、アレク様の兄上様で、アイリーン様の義理の息子さん?

そして、現ハイヴェル侯爵閣下……。

あ、いけない、私達お邪魔かも。


「アージュ、ちょっと散歩に行かない? 私王都を見て回りたいなぁ。つき合ってよ?」

「え? ……あっ、うん、わかった! 行こうクレハ!」

「うん。行ってきます、アイリーン様!」

「え……! 待って、クレハちゃん、アージュちゃん! 王都は……!」

「アイリーン様、ご心配なく。僕が付き添います。行くよシヴァ」

「はい」

「僕も行くよ。母上、兄上、ごゆっくり」

「フレン、アレク……! お願いね!」

「はい」


私達は宿を出て、王都へくり出した。

アイリーン様とアレク様の兄上様、ゆっくりお話できるといいな。







私達は手始めに大通りにあるお店を次々と冷やかして歩いた。

お店の数も品揃えも、私達の街とは比べ物にならないほど多い。

さすがは王都だと、改めて感心した。

そうして大通りを進んで行くと、見慣れた看板が目に入った。


「あ……ここって、王都のギルド?」

「あ、うん、そうだよ。……そういえば僕、結局あの街のギルドに行かなかったね」

「あ、はい。でも王都のギルドには来たことがおありなんですか? アレク様?」

「いや、それもないんだよ。……入る、かい?」

「入りたいですけど……いい? アージュ、フレンさん?」

「うん、いいよ!」

「僕に聞く必要はないよ。入ろう」

「わ、ありがとうございます! シヴァくん、売買カウンターチェックしよう! 新しい材料あるかも!」

「はい」

「行こう!」


私はシヴァくんの手を取り、ギルドへ向かって駆け出す。


「あ、こら、待ちなよクレハちゃん。……ああ、もう、仕方ないな」

「嬉しそうで何よりだね。少しでも王都を楽しんで貰えたなら良かったよ」

「クレハ、置いてかないでよ~!」


背後から三人の声がしたけれど、私は足を止めずに、ギルドの扉をくぐった。

そのまま広いギルド内を通り、売買カウンターに行くと、少年が一人、カウンターの人と話をしていた。

どうやら買い取りの交渉をしているようなので、大人しく後ろに並んで待つ。


「あ、いたクレハ! もう、置いてくなんて酷いよ~!」

「クレハちゃん。次やったらお説教だよ?」

「これがギルドかぁ……ついに入れたよ」

「ん? ……アレクじゃないか」

「え? あっ、フェザ! え、こんな所で何してるんだ?」

「え」


アレク様、この少年と知り合いなの?

アレク様の声に振り向いた少年は、金髪碧眼の美少年だった。

……いや、美少年の中の美少年と言うべきか。

何しろ、私の周りには何故か、美のつく人しかいない。

アイリーン様もフレンさんもセイルさんも、シヴァくんやギンファちゃんやアージュ、更にはギルドのおじさんまで、整った顔立ちをしている。

この世界には美形しかいないのかと疑った事さえあるが、街行く人や冒険者さん達を見ると、決してそうではない。

なのに何故か、私の周りは美形ばかりなのだ。

……誤解のないよう言っておくが、私が美形ばかりを選んで交友しているわけではない。

決してない。


「外で魔物を相手に訓練して来たんだ。それで手に入れた品を売りに来たのさ」

「え、外でって、一人で!?」

「……他に誰かいるように見えるか?」

「うわ、また無茶して……! そういう時は僕を誘いなって言ったじゃないか」

「屋敷を訪ねたが、お前はいなかった」

「なら行かないでよ……」

「暇だったんだ。……それより、お前こそどうしてここに? お前がギルドに用事があるとは思えないが」

「あ、うん。僕は、この子達のお供でね」

「何?」


アレク様が私達に視線を向けて初めて、金髪の美少年は私達を見た。


「……侯爵家の子息がお供とはな。他国の王女か何かか? そんな人物が来るとは聞いてないが」

「へっ?」


お、王女!?


「はは、違うよ。母上の友人さ。一緒に王都に来てね。散歩に出るというから、付き添ってるんだよ」

「何? 夫人が王都に来たのか?」

「うん。今兄上と対面してる」

「……そうか。良かったな、アレク」

「うん。ありがとうフェザ」

「兄ちゃん、お待ち。計算が終わったぜ。これが代金だ、受け取りな」

「あ。……どうも」


金髪の美少年はカウンターの人からお金を受け取った。

お、終わった!

やっと私の番だ!


「あの! 販売リストを見せて下さい!」


私は金髪の美少年の横に回り、カウンターの人に声をかけた。


「お、何か買ってくれるのかい? はいよ、これがリストだ」


そう言って差し出されたリストを受け取って目を通すと、やはりまだ手にした事のない材料の名がずらりと並んでいた。


「うわぁ……っ! シヴァくん、ほら! 見て見て! どれ買う? 何買うっ?」

「……お、落ち着いて下さい、クレハ様……」


私はリストを手にシヴァくんに迫った。

そんな私を、皆が微笑ましげに見ている事に、私が気づく事はなかった。

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