新たな出会い 6
本日三回目の更新。
今日はここまで。
倉庫で薬を詰め終わった後、私はもう一度部屋に戻り、荷物の確認をした。
そうして全ての支度を終え、鞄を持ち、玄関へ向かうと、そこにはすでにシヴァくんとギンファちゃんがいた。
「あっ、ごめん、もしかして待たせた?」
「いえ、それほどではありません」
「クレハ様、忘れ物はございませんか?」
「あ、うん。大丈夫」
そう言いながら、私は慌てて小走りで二人の所に行く。
「ギンファちゃん、セイルさんとライルくんはまだ着いてないの? 私からもきちんとお願いしてから行きたいんだけど……まだ時間かかるのかなぁ」
「あ……いえ、えっと、つい先ほど到着されたんです、けど……」
「え、本当に? じゃあ外にいるの?」
私は玄関の扉を見て、外に出ようと一歩を踏み出した。
すると、シヴァくんが扉の前に立ちふさがった。
「へ、シヴァくん?」
「今は、出ては駄目です」
「え? 何で?」
私が首を傾げると、直後、玄関の扉が開いた。
そこから、セイルさんが姿を見せる。
「!」
セイルさんを見て、シヴァくんは扉の前から退いた。
「あっ、セイルさん! あの、今回は、本当にありが」
『ありがとうございます』と、私はそう言おうとした。
しかし、その言葉は声にならなかった。
扉をくぐり、家に入ったセイルさんの体はふらりと揺れ、その場に崩れ落ちた。
「……え……?」
私はゆっくり視線を動かし、倒れたセイルさんを見る。
着ている服は所々裂けていた。
「……セイルさん? ……嘘……どうして」
「ク、クレハ様、あの……」
「……シヴァくん、ギンファちゃん! フレンさんを呼んできて! すぐに街に運ばなきゃ! アイリーン様に知らせて、お医者様を……!」
「その必要はないよ、クレハちゃん。大した怪我はしてないから」
「え……?」
聞こえたいつも通りの穏やかな声に顔を上げると、フレンさんがそこにいた。
フレンさんはセイルさんを見ると、なんと、軽くその体を蹴った。
「えっ」
「ほら、何こんな所で倒れてるのさ。クレハちゃんが驚いてるじゃないか。それに邪魔。さっさと立ちなよセイル」
「……うう……お前、容赦しなさすぎだろ……」
「何言ってるんだよ。お互い手加減なしって言ったのはセイルだろ」
「……だからって、友人相手にここまでやるか……?」
「いいから立ちなよ。邪魔。……驚かせてごめんねクレハちゃん。僕達、軽く手合わせしてたんだよ」
「て、手合わせ、ですか? えっと……あの、セイルさん、大丈夫ですか……?」
「……駄目。フレンが、いつもより鬼だった……」
「あ。……えっと、はい。ごめんなさい」
「へ……? 何でクレハちゃんが謝るの……?」
……いや、だってたぶん、さっきの私とアイリーン様とのやり取りが原因ですから……。
「どうやら、起きないみたいだね。騎士のくせに情けないなあ。仕方ない。跨いで通っていいよ、ライル」
「えっ、あの……」
フレンさんが横にずれると、ライルくんが姿を現した。
フレンさんとセイルさんを交互に見て、困惑している。
「あ、ライルくん。あの、しばらくの間、ギンファちゃんをよろしくね? えっと、セイルさんも、お願いします」
「あ、は、はい! お任せ下さい、クレハ様!」
「……うん、任せて。クレハちゃん」
「そんな状態で言っても、クレハちゃん安心できないと思うよ、セイル」
「え、いえ、大丈夫です!」
「そう? まあいいや。じゃあそろそろ行こうか、クレハちゃん、シヴァくん」
「あ、はい。……じゃあ、ギンファちゃん。悪いけど、家の事、よろしくね」
「はい、任せて下さい! いってらっしゃいませ、クレハ様、シヴァさん」
「うん、行ってきます」
「行ってきます」
私達は家を出て、再びハイヴェル邸へ向かった。
……家を出た時にフレンさんが、小さく『ああ、すっきりした』と呟いた言葉なんて、私は聞かなかった……。
「あれ、ジュジュさん?」
「あ、クレハちゃん。こんにちは」
ハイヴェル邸へ戻り、応接室へ行くと、そこからジュジュさんが出てきた。
「こんにちは。……ここで会うなんて、初めてですね?」
「ええ、こんなお屋敷、初めて来たわ。アージュが数日お世話になるから、ご挨拶に伺ったの」
「あ、それじゃあアージュ、一緒に行けるんですね!」
「ええ。アージュの事、よろしくね? クレハちゃん。それじゃ、旅行、楽しんできてね」
「はい!」
帰って行くジュジュさんを少しだけ見送って、私は応接室に入った。
「アイリーン様、アレク様、お待たせしました! アージュ、一緒に行けて嬉しいよ!」
「クレハ! 私もだよ~!」
「ふふ、楽しくなりそうね。……目的地が王都でなければ、もっといいのだけれど」
「母上、そんな事をおっしゃらないで下さい。……さあ、参りましょう」
「あっ、はい」
「はい!」
「ええ、わかったわ。行きましょう」
こうして私達は、王都へ向かって出発した。




