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新たな出会い 3

今日の更新はこれのみ。

明日また複数更新頑張ります。

息子さんが到着した事を知ってエントランスに出迎えに来ると、ちょうど息子さんがお屋敷の中に入って来た。


「アレク!」


アイリーン様が嬉しそうにその名を呼ぶと、息子さんは私とアイリーン様のほうを見る。

次いで息子さんは嬉しそうに目を細め、微笑んだ。


「母上! お久しぶりでございます」

「ええ、お久しぶりね。会いたかったわアレク……!」


アイリーン様は息子さんに駆け寄り、その体を抱きしめた。

息子さんも、アイリーン様の背中にそっと手を回した。

二人はそのまま、久々の再会を喜び合う。

……う~ん、やっぱり私、お邪魔なんじゃないかなぁ。

アイリーン様と息子さんは、完全に二人の世界に入ってしまっている。

私は背後にいるシヴァくんとギンファちゃんを振り返り、自分の口に人差し指を当てると、そっと踵を返し、エントランスを後にした。







「まあ、こんな所にいたのね!」


部屋に入るなり、アイリーン様は少し怒ったように言い放った。


「こんな所、っていうのは、どういう意味でしょう?アイリーン様」

「そのままよフレン。アレクを紹介しようと振り向いたら姿がなくて、驚いたのよクレハちゃん? 応接室に戻ったのかと思えばそこにもいないし」

「すみません、アイリーン様。やっぱりお邪魔だと思いまして」

「まあ。そんな事はないと言ったじゃない? ……けれどそれでどうして、元の応接室じゃなく、フレンの部屋にいるのかしら?」

「えと……戻る途中で、フレンさんに会ったから、ですかね?」

「……それじゃあ答えになっていないわ」

「……母上? こちらの方が、僕に紹介したいという方なのですか?」

「あ……ええ。そうよアレク。この子はクレハ・カハラちゃん。まだ小さいのに、凄腕の錬金術士なのよ? クレハちゃん。この子が私の息子、アレクリードよ。仲良くしてくれると嬉しいわ」

「はい、もちろんです。……クレハ・カハラです。初めまして、アレクリード様」

「初めまして。アレクでいいよ、クレハさん。……ここで君に会えて、嬉しいよ」

「えっ?」


……『ここで君に会えて』、って……?


「……さて、母上。それでは支度をお願いします」

「支度? ……どこか、出かけるのアレク?」

「ええ。王都の本邸に」

「…………え?」


アレク様の言葉を聞くと、アイリーン様は目を見開いた。


「兄上も母上に会いたがっておられます。一時だけでも構いません。本邸にお越し下さい母上」

「……アレク。私はもう、本邸には足を踏み入れないと誓ったわ」

「……そうですか。なら母上、本邸でなければ、来て戴けますね?」

「え?」

「兄上からの伝言です。『本邸へのお誘いは受けて戴けないでしょうから、宿をご用意します。気のおけない可愛いご友人と一緒にいらして下さい』との事です」

「え……『可愛い友人』、ですって……!? ……貴方達、私の事を調べさせているの!?」

「すみません。けれどそれだけ、母上の事が心配なのです。ご理解下さい」

「まあ……!」

「……クレハさん。母上と一緒に王都へ旅行に来ないかい? 旅費はこちらで持つから」


アレク様は突然アイリーン様から私へ視線を移し、そう尋ねた。


「へ? ……旅行、ですか?」

「うん」

「えっと……無理です。動物の世話と、畑の水やりがありますから」

「うん、そう言うと思ったよ。……母上、その問題点の解消の為に屋敷の者を泊まりがけで派遣する事は可能ですよね?」

「えっ!?」

「……アレク、クレハちゃんは断っているのよ?」

「強引なのは承知しています。けどクレハさんを巻き込む他に手はないですから。……君には申し訳ないけど、お詫びと協力のお礼に、これを用意してきたんだ。受け取ってくれないかな」


そう言って、アレク様は持っていた鞄から箱を取りだし、蓋を開けて私に差し出した。


「えっ! こ、これ、発光石と幸運の四つ葉!?」

「王都の近くに、それが採取できる森と洞窟があるんだよ。もしかしたら、君の欲しい材料が他にもあるかもね?」

「え……!」

「君の大切な動物と畑の世話は、この屋敷から人材を派遣する。旅費も持つ。だからどうか、受けて貰えないかな?」

「う……!!」


……正直、新しい材料と採取場所は凄く魅力的だ。

これでまた作れる物が増える。

それにアイリーン様との旅行なら、きっと楽しいと思う。

けど……それでも。


「……ごめんなさい。お受けできません。動物達はあそこでずっと一緒に過ごしてきた、私の大切な家族です。いくらこのお屋敷の人達でも、モオ達の世話をした事ない人には任せられません」

「……う~ん……なるほどね。なら、クレハさん。君の護衛の、その子。その子に留守番を頼めないかな? 君と一緒に毎日動物の世話して、慣れてるよね?」

「え」

「えっ、わ、私ですか?」

「うん。君だよ」

「……ギンファちゃんを、一人でお留守番させろって言うんですか……!?」

「ああ、違うよ。そうじゃない。一人は危ないし寂しいでしょう? この屋敷から人を派遣するのは変わらないよ。……それでどうかな?」

「…………」

「あ、あのっ、クレハ様! 私なら大丈夫です!」

「……え?」

「……クレハ様がずっと新しい材料欲しがってるの、私もシヴァさんも知ってます。行って来て下さい、クレハ様。留守の間の事は、私がしっかり任されますから!」

「ギンファちゃん……」

「……それなら、アイリーン様。派遣する人材は、ライルとセイルでどうですか? すでにあの家に泊まった事がある人間のほうが、クレハちゃんも安心でしょうし」

「え?」


それまで黙っていたフレンさんが突然口を開き、そう提案した。


「まあ、フレンまで何を言い出すの? クレハちゃんはまだ承諾していないでしょう?」

「その子が自分から大丈夫だと言った以上、クレハちゃんに断る理由はないでしょう。自分の望みを知った上で送り出そうとしてくれてる気持ちを無にする子じゃありませんし。そうだよね、クレハちゃん?」

「う……。……ギンファちゃん、本当にいいの? 無理してない?」

「はい、してません。だからクレハ様も、無理しないで、新しい材料、手に入れに行って来て下さい!」

「ギンファちゃん……ありがとう。なら、絶対手に入れて来るね。あと、お土産も買って来るから! 楽しみにしてて!」

「はいっ!」

「よし、決まりだね。ありがとうクレハさん。ご協力感謝するよ。本当にありがとう」

「あ……はい。あっ、でも、フレンさん? セイルさんはうちにくるメンバーに入れちゃ駄目なんじゃ……? 騎士のお仕事、ありますよね?」

「ああ、それなら大丈夫。あいつは今、溜まった有給を強制的にとらされてて、鬱陶しいくらい毎日暇してるから」

「え……? そ、そうなんですか……」

「うん」

「……はあ。ならフレン、セイルを連れてきて頂戴。私とクレハちゃんの支度が済み次第発つから」

「はい、わかりました」

「あっ、じゃあ私、他の用事を済ませて来ます!」

「ええ、わかったわ」


私はハイヴェル邸を出た。

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