新たな出会い 2
本日二回目の更新です。
今日はここまで。
両手でカップを持って、ゆっくりと口に含み、喉を潤す。
温かいその紅茶は、冷えた体にとてもよく染み渡る。
「はぁ、美味しい。それに凄く温まります。……暖かい服装はしていますけど、魔法のじゅうたんを飛ばして街まで来るのは、やっぱり寒くて。ギンファちゃんなんて今朝くしゃみをしてたから、少し心配なんです。だから街へ来てすぐに暖かい場所で温かい紅茶を飲めるのは有り難いです」
そう言って、私は左隣のギンファちゃんを見る。
ギンファちゃんは今、私が獣人用に改良した、メエぐるみを着ている。
今朝くしゃみをした為、より暖かい服装にと、私が強制的に着替えさせた。
ギンファちゃんは街を歩いていた時も今も、ほんのり顔が赤い。
だけど熱が出たわけではないだろう。
この格好で外を出歩くのは確かに恥ずかしいだろうけど、本格的に風邪をひかない為だ、仕方ない。
……決して、もふもふギンファちゃんに更にもふもふ装備を着せて和んでいるわけじゃあない。
「そうなの……なら、しっかり暖まって頂戴ね。お茶のおかわりはいかが? 遠慮しないで言ってね」
「はい。ありがとうございます、アイリーン様。それじゃあ、いただきます」
「ええ、どうぞ。…………。」
…………うん。
やっぱり、変だ。
アイリーン様を見て、私はそう思った。
ここは、ハイヴェル邸。
アイリーン様のお屋敷だ。
私は『この日に会いに来て』との言葉に従い、シヴァくんとギンファちゃんを連れてやって来た。
けれどアイリーン様は、なかなか用件を話そうとしない。
そればかりかずっとそわそわしていて、会話もそこそこに、窓の外に視線を向けてしまう。
一体どうしたんだろう?
「……あのぅ、アイリーン様? 今日私をお呼びになった理由をお伺いしても、よろしいでしょうか?」
「え?……ああ、まだ話していなかったわね。今日はね、息子が来るのよ」
「息子さん? ……って、王都にいるっていう?」
「ええ。通っている学院が冬季休暇に入ってね。久しぶりに会いに来てくれるの」
「へぇ、そうだったんですか!」
アイリーン様は、息子さんと離れて暮らしている。
後妻としてハイヴェル前侯爵閣下に望まれ結婚したものの、たった数年でご主人がなくなってしまい、その後、義理の息子さんである現ハイヴェル侯爵閣下に遠慮して、数人の使用人だけを連れ、この街に移り住んだのだと、前に聞いた。
実の息子さんを、王都の本邸に残して。
「そのせいか、今日は朝からずっと落ち着かなくて……窓の外にばかり目がいってしまうのよ」
「それは当然ですよ! 久しぶりに息子さんに会えるんですから。……あ、でもそれなら、私お邪魔じゃないですか?」
「あら、そんな事はないわよ? むしろその逆。息子をクレハちゃんに紹介しようと思って、今日来てもらったんだもの」
「え? ……ああ、そうだったんですか。……そうですね、アイリーン様の息子さんなら、私も会ってみたいです!」
「ふふ、そう言って貰えると嬉しいわ。是非、仲良くして頂戴ね、クレハちゃん」
「はい、もちろんです!」
私が大きく頷くと、アイリーン様は嬉しそうに微笑んだ。
そしてその数分後。
ハイヴェル邸に一台の馬車が着き、その中から、アイリーン様の息子さんが、おりてきた。




