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捕獲作戦 7

本日一回目の更新です。

精霊との契約を終えた後、私は家に戻り、リビングで読書をする事にした。

いくつかおを買い揃えたけど、私の一番の愛読書は調合図鑑だ。


「う~~~ん…」

「……六回目」

「え?」

「クレハちゃんが唸った回数。今ので六回目だよ。どうしたの?目の前でそうも唸られたら気になるよ」

「あ…ごめんなさい。フレンさんも読書してるのに…うるさかったですか?」

「そうじゃないけど。で、どうしたの?」

「あ、はい…シヴァくんの防具、何がいいかなぁって迷ってて」

「防具?…ああ、作るんだね?…そうだね、防御力がそこそこある服か、軽鎧がいいかと思うよ。重装備は体に負荷がかかって成長の妨げになる可能性がある。シヴァはまだ12歳だからね。やめたほうがいいかな」

「あ…!…そっか、そうですね。防御力のあるしっかりした鎧がいいかと思ってたけど…そうなると…う~~ん」

「この辺りなら、ラピとかの服とかでも十分だと思うよ?」

「動物シリーズですか?…でも、この辺りを基準にしていいものかどうか…魔物じゃなく、人で、強い人が襲ってきたら…」

「…今いる盗賊のようにかい?…彼らの頭目はどの程度強いんだろうね。まだ捕まっていないようだけど」

「はい…だから、心配で」

「なら、軽鎧だね。それなら作った後、鍛冶屋に頼めば強化もできるし」

「あ、強化!そっか、その手がありますね!…なら…うん、フエの軽鎧!これにします!」

「うん。…自分のも忘れないようにね?クレハちゃんは、ラピの服がいいよ。可愛いし」

「あ、はい!早速作って来ますね!」

「うん」


私は図鑑を手にいそいそと調合室へ向かった。


「…武器を自ら作って与え、更に防具まで。クレハちゃんは本当に可愛いね。…まだ本契約もしてないのに。まあ、大丈夫だと思うけど…灰色猫さんの判断がもし良くないものだったら、ショック受けないかなぁ、あれ」


リビングに残ったフレンさんの呟きは、私の耳には届かなかった。







午後になって、私達はリビングに集まった。


「さて、いよいよ今日の材料採取だね。皆、仕度はいい?」

「はい!」

「はい」

「二人とも、着心地どう?重くない?」

「はい、大丈夫です!ありがとうございます!クレハ様!」

「…大丈夫です。ありがとうございます」

「そう、なら良かった」


シヴァくんとライルくんは今、私が作ったフエの軽鎧を身に付けている。

さっき作ったばかりの新品だ。


「……。…クレハちゃん、ライルの分も作ったの?」

「え?はい」

「……そう……。…まあ、いいや。行こうか」

「はい!」


そう返事を返し、気を引き締め外に出る。

すると、途端に凄まじい轟音が鳴り響いた。


「きゃっ…!?」

「えっ!?」

「あれ…」

「…さっきまで、晴れてたのに」


私達は全員空を見上げ、凝視する。

午前中晴れ渡っていた空は、どんよりとした灰色の雲に覆われ、雲の中には時折光がはしっている。

雷だ。


「…これ…雨も降りますかね?雷も木に落ちると、危ないし…今日は採取、無理でしょうか」

「………いや…大丈夫じゃないかな。きっとすぐまた晴れると思うよ。…しかし、クレハちゃんは本当に不思議だね」

「えっ?」

「『え?』じゃないよ。風の精霊が言っていたでしょう?きっと雷の精霊も、誰が君と契約するか勝負がついたんだよ。だからこの天気に変わったんじゃないかな。さ、待たせるのも悪い。呼んで契約しようか」

「え、え?…えっとつまり、これ、私のせい…?」

「そういう事になるね。…大丈夫。契約が終わればすぐに晴れるよ。だから早く契約しよう?」

「あっ、は、はい!えっと…!…空を駆け、地に轟く雷鳴の卷属、雷の精霊よ。我が声が届いたなら応え来たれ。我は汝との契約を望む者。…来たれ、雷の精霊よ!」


私は文言を唱えた。

次の瞬間、雷鳴が轟き、私の前に、何故か疲れた顔をした黄色い髪に黄色の瞳の男の子が現れた。


「呼んで戴き、ありがとうございます。俺はライカ。よろしくお願いします、マスター」

「あ、うん。よろしくね!」

「はい。……あの、それで、マスター。…光の精霊と契約する気は、本当にございませんか?」

「えっ?」

「…その…光の精霊も、当然呼ばれるものと思って、すでに契約者が決まっていたんですが……マスターに呼ばれないと知って……その……拗ねまして。…契約者に決まった俺の所に来て、涙目で睨む始末で……」

「…へ…!?」

「あ~…やっぱり光の精霊も待ってたんだね。…でもこればかりはね。クレハちゃんの選択だから」

「はい、それは重々承知していますが……マスター、光の精霊も、必ずお役に立つと思いますが、契約なさる気は、やはり……?」

「え、え?で、でも、私もう今ので契約限度数になってるよね?」

「…いえ、精霊との契約に限度はございません。…いつからそんな誤りが伝わったのか定かではありませんが、遥か昔の精霊召喚師達は、数多の精霊を従えておりました」

「へ…?」

「え。…それは、初耳だな。本当に?五人以上と契約できるのかい?」

「はい」

「…へえ…!なら僕も、契約数を増やそうかな」

「…マスター。ですので、あの、もしよろしければ、光の精霊とも…」

「あ、うん。そういう事なら、晴れたらすぐに呼ばせて貰うね」

「…!…良かった…!ありがとうございますマスター。これでキラリの恨めしげな視線から解放されます!」

「あ…あはは。ごめんね、私のせいで迷惑かけたね」

「あ、いえ、とんでもございません!最後と思われた契約に我ら雷の精霊を選んで戴きました事、雷の精霊一同、大変光栄に思っております。ありがとうございました。…それではマスター。ご用の際は、いつでもお呼び下さい」

「うん、ありがとう」


私がそう言うと、ライカは一礼して消えた。

そのまましばらく待っていると、雷は止み、空はすぐに晴れた。


「晴れましたね。…えっと、じゃあ、光の精霊、呼びますね」

「うん、それがいいよ」

「…天空より大地をあまねく照らす光の卷属、光の精霊よ。我が声が届いたなら応え来たれ。我は汝との契約を望む者。…来たれ、光の精霊よ!」


私が文言を唱えると、空から眩しい光が降り注ぎ、その中から、ぽろぽろと涙を流したオレンジ色の髪にオレンジ色の瞳の女の子が現れた。


「…はっ、初めまして…ひっく、わ、私は、キラリと申します…えっく、お、お呼び…ふ、ふえっ…お呼び戴き……っ!……ふぇぇぇぇん!!呼んで貰えたよぉぉ~~~!!」

「えっ!!」


キラリと名乗ったその子は顔を手で覆い、本格的に泣き出してしまった。


「…え、えっと…な、泣かないで?その…ごめんね、せっかく待っててくれたのに、他の精霊選んじゃって…本当に、ごめん」

「ふ、ふぇっ…い、いいんです…!契約は、自由ですからっ……でも、でも……っ、良かっ……呼んで、貰え……う、うわぁぁぁんっ!!マスターー!!」


そう泣き声をあげながら、キラリちゃんは私の胸に飛び込んで来た。

う…なんか、可愛い…。

私はキラリちゃんが泣き止むまで、背中に腕を回し、髪を優しく撫で続けた。

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