捕獲作戦 6
今日四回目の更新。
今日はこれでラスト。
捕獲作戦を今日中に終わらせようと考えたけど無理でした。
あれから、5日が経った。
作戦を開始して家に戻った日に捕まえた人達は、なかなか口を割らないらしく、私は囮作戦を続け、街までは行かないものの、調合の材料採取を兼ねて、日々森の中をかなり広範囲に歩き回った。
その甲斐あって、一昨日新たに捕まえた人が昨日口を割り、騎士様方がアジトに踏み込んでまた何人かを捕まえたらしい。
ただ、全員を捕まえるまでには至らなかったそうだ。
「よし、水やり終わり。コタ、今日も動物のお手伝いありがとう。水やりも終わったから、午前中の作業は終了だよ」
「ウォン!」
「…さて…このあと今日はどうしようか」
いつ盗賊が現れるかわからないこの状況では、さすがにのんびり釣りには行けない。
よって私は、日常スケジュールの変更を余儀なくされていた。
視線を移し庭を見ると、そこには打ち合い稽古をするシヴァくんとライルくん。
2人はこの5日間毎日、私が動物の世話と畑の水やりを終えるまでの間、ああして稽古をしている。
フレンさんは朝がちょっと弱いらしく、起きるのが少し遅い。
けれど私が作業を終えて家に戻ると、まるでタイミングを見計らったかのように、フレンさんの手によってちょうど朝食が出来上がる。
セイルさんとミュラさんは、朝になると家を出ていき、夕方に帰ってくる。
何をしているのかはよくわからないけど、きっと騎士のお仕事だろう。
「シヴァくん、ライルくん!家に戻ってご飯にしよう~!」
「あっ、はい!」
「はい」
私は二人に声をかけ、家の中に戻った。
玄関を開けると、美味しそうな匂いが漂ってくる。
やはり、今日もちょうど、朝食ができたらしい。
「クレハちゃん。今日は強めの風が吹いているから、風の精霊と契約をしてみないか?」
「え」
朝食を食べ、洗濯を終えた私が、再びこの後の予定を考え出すと、フレンさんが現れてそう言った。
「契約する精霊は多ければ多いほどいいよ?できる事も増えるから」
「できる事が…?…わかりました。なら、契約します」
「うん、じゃあ外に出ようか。ついでに、大地の精霊とも契約してしまおう」
「あ、はい」
私はフレンさんに連れられ外に出た。
ふと庭を見ると、また稽古をしていると思っていた二人がいない。
「あれ…?」
「ん?どうかした?」
「あ、いえ…シヴァくんとライルくんがいないなって思って…」
「ああ、あの二人なら探索魔法の訓練ついでに魔物相手の稽古に行ったよ。この近くにはいるはずだから、心配ないよ」
「あ…そうなんですか」
「うん。さ、まずは風の精霊から呼んでごらん」
「あ、はいっ!…時に優しく、時に雄々しく吹き荒れる風の卷属、風の精霊よ。我が声が届いたなら応え来たれ。我は汝との契約を望む者。…来たれ!風の精霊よ!」
私が文言を唱えると、目の前で風が渦巻き、水色の髪に水色の瞳の小さな女の子が現れた。
「…あれ?すぐに来た…?」
これまで二回とも、精霊の出現に時間が空いた私は、思わずそう呟いた。
すると風の精霊はくすくすと笑った。
「当然です。貴女が精霊と契約をしていると知って、事前に契約候補達が集まって勝負しましたもの。他の精霊も、すでに契約者は決まっているはずです。呼べばすぐに参りますわ」
「え…」
「私はフウリ。よろしくお願い致します、マスター」
「あ、う、うん!よろしく!」
私が返事を返すと、フウリはにこりと笑って、姿を消した。
「どうやら、他の精霊もお呼びがかかるのを待っているみたいだね?クレハちゃん。…本当に、君は不思議な子だね」
「あ、あはは…」
次いで、私は大地の精霊を呼んだ。
ノルンという、茶色の髪に茶色の瞳の男の子が来た。
「さて、次はいよいよ光の精霊だね。待ってるみたいだし、この際もう呼んでしまおうか」
「あ、はい…。…あの、フレンさん?さっきフレンさんは、精霊は多ければ多いほどいいって言いましたけど、そんなに何人もと契約できるんですか?」
「うん?…いや、五大精霊と契約すればそれで十分だよ?中には敢えて五大精霊との契約を外して、他の精霊と契約する人もいるけど、六人以上とっていうのは、聞いた事ないかな」
「なるほど…。じゃあ、契約は五人までなんですね。…う~ん。…あの、その他の精霊っていうのは?」
「他かい?そうだね…樹とか、花とか、泉とか、そういう精霊だけど」
「…樹に、花に、泉…。…あの、雷、とかは?」
「雷の精霊?…いるけど…五大精霊、揃えないのかい?」
「…えっと…」
…どうしよう。
「クレハちゃん?」
「…その…私、光魔法より、雷魔法が好きかなぁ、なんて…」
「………」
あ、フレンさん、絶句してる…。
「……そう。まあ、好きなら、そのほうがいいかもね。どの精霊と契約するかは、人それぞれだし」
「えっ…い、いいんですか?」
「クレハちゃん次第だよ。クレハちゃんの精霊なんだから」
「あ…。………なら、うん。…私、最後は雷の精霊にします!」
「うん、わかった。じゃあ、雷が鳴った日にまた、だね」
「はい」
こうして私の五人目の精霊は、雷の精霊に決定した。
雷……いつ鳴るかなぁ?




