捕獲作戦 5
今日の更新三回目です。
立ち去ったシヴァくんを探して家の中を歩き回ると、お風呂場から音が聞こえた。
行ってみると、シヴァくんはそこにいた。
けれどシヴァくんは、入浴をしているわけではなかった。
「えっと…シヴァくん、何してるの?」
「…掃除をしています」
「う、うん…そうだね。掃除してるね」
それは見ればわかる。
私が聞いているのは、何故掃除をしているのかという事なんだけど…。
…いや、うん、理由にも、想像はつく。
つくけど……一応、聞いてみる?
「…えっと、何で、掃除してるの?」
「…?…貴女に、俺にできる事をしろと、言われました」
…いや、言ってないよ?
言ってないけど……ああ、やっぱり。
これは、やらなくていい、と言うのは、良くないのかな…?
フレンさんにも、シヴァくんに合わせるように言われたばかりだし…。
「そ、そっか…。…えっと、ちなみに、お風呂掃除の他に、シヴァくんがやろうと思ってる事って、何かな?」
「他に…。…家の掃除と、料理と、洗濯です。これは前もやってて、できます」
うん、要するに、家事だね。
ところで、前っていうのは何だろう?
自宅でって事かな?
……う~んと、とりあえず。
「それなら、家の掃除は、お願いするね。料理は私と交代で作ろうか。洗濯に関しては全部私がやるから、いいよ」
何しろ洗濯には下着が含まれる。
これをお願いするのは、恥ずかしい。
「え…」
しかし私がそう言うと、シヴァくんは困ったような顔をした。
う、この案も駄目だっただろうか…。
「えっと、ほ、ほら!私は護衛を探して奴隷商館に行ったわけだし、だから、本来シヴァくんは護衛だけしてくれれば問題ないんだよ?なのに家事全般をやって貰うのは逆に申し訳ないし!ね?ねっ?」
「…護衛…ですか」
「う、うん、そう!護衛!」
「…わかりました」
「あ…!」
よ、良かった、納得してくれた!
「と、そうだ!はいこれ、双剣!シヴァくんの武器、作ってみたから、使って!」
「作った…?」
「うん、錬金術でね」
「…ありがとう、ございます」
シヴァくんはそう言って双剣を受け取ってくれた。
反応が薄くて、喜んでくれてるのかどうかわからないけど…受け取ってくれたんだから、良しとしよう。
「あとで、防具も作るね!」
「…防具、も?」
「うん!」
「すみません~!クレハ様~!セイル様方がおみえです~!」
「あっ、はーい!…それじゃあシヴァくん、悪いけどお風呂掃除、お願いするね!」
シヴァくんがこくりと頷くのを確認して、私は玄関に向かった。
「いらっしゃいませ、セイルさん!」
「やあクレハちゃん、お邪魔するよ。立派なおうちだね」
「ありがとうございます。迷いませんでした?」
「うん。ライルくんが森の途中まで迎えにきてくれたおかげでね」
「あ、そうなんですね。ありがとう、ライルくん」
「えっ。…い、いえ!大した事はしてませんから!」
「はは。…そうそう、クレハちゃん。いい報告だよ。早速君のあとをつけてた輩が二人いてね。捕まえたから、他の一味の居場所もじきに判明して、そうかからずに全員捕まえられると思うよ」
「えっ、本当ですか!?良かったぁ!」
「うん。もうしばらくの辛抱だよ。それまでは、騎士団からは俺と彼女が泊まり込ませて貰うよ」
セイルさんはそう言って、一歩横にずれた。
「紹介するよ。彼女はミュラ・カーライトだ」
「初めまして。ミュラ・カーライトよ。ミュラと呼んでね」
わぁ、女性騎士だ!
「初めまして!クレハ・カハラです。よろしくお願いします、ミュラさん!」
「こちらこそよろしく。クレハちゃん」
「はい!…えっと、うちに泊まるのは、これで全員ですね。なら、二階の各部屋を二人ずつで使って貰えば大丈夫そうですね。ミュラさんは、私と一緒でお願いします」
「あら、私と一緒でいいの?」
「はい」
「そう。わかったわ」
「なら俺は、フレンと使おうかな。で、シヴァくんとライルくんで一部屋使って貰えばいいだろう。歳も近いし」
「あ、はい。そうですね。…さて、じゃあ私、そろそろ夕飯、つくりますね」
そう言って、私はキッチンに足を向けた。
「ああ、待ってクレハちゃん。それは僕とライルでやるよ」
「えっ?…フレンさん?でも、フレンさん達はお客様で」
「それは違う。僕達はお世話になる居候だよ。だから、何かしら手伝いはさせてくれないかな」
「えっ、そんな!居候だなんて」
「事実だよ?ねえライル」
「はい」
「えええ…!?」
「というわけで。食事を作るのは任せて貰うよ。ライル、行くよ」
「はい!では皆様、少々お待ち下さい!」
そう言うと、フレンさんとライルくんはキッチンへ行ってしまった。
「い、いいのかな…?」
「…いいと思うよ。本人がああ言ってるんだし。俺も何か手伝うかな。あとでねクレハちゃん」
「え」
「それじゃ、私は夕飯まで少しだけ仮眠を取らせて貰おうかしら。クレハちゃん、部屋へ案内して貰える?」
「え?あ、はい!」
私は戸惑いを覚えたまま、ミュラさんを案内して部屋へ戻った。




