捕獲作戦 3
本日一回目の更新です。
今日も頑張ります。
はぁ、いい天気。
そんなに寒くなくて良かった。
…歩いて行くなんて、最初に街に出た日以来だなぁ。
私はてくてくと街道を歩きながら、空を見上げた。
「…上向いて歩くと、危ないです」
「ん?…ああ、ちょっと見上げるくらいなら大丈夫だよ。でもありがとうシヴァくん。気をつけるね?」
「…後ろ向いて歩くのも、危ないです」
「あはは、うん、わかった」
現在、私の前にはライルくんが、後ろにはシヴァくんとフレンさんが並んで歩いている。
なので、注意してきたシヴァくんのほうを向いて返事を返すと後ろを向く形になる。
そこをまた注意され、私は苦笑して前に向き直った。
「…う~ん。それにしても、本当、便利だよねそれ。乗って空を飛ぶだけじゃなく、そういう使い方もあったとは驚きだよ」
「え?」
今度はフレンさんに声をかけられ、フレンさんを見上げた。
フレンさんは、私の横でふよふよと漂う魔法のじゅうたんを見つめていた。
魔法のじゅうたんの上には、昨日買ったコッコと、布団や食器、お米、お肉などの食材が乗っている。
「今朝その荷物を見た時、歩いて行くのにどうやって持って行こうかと思ったんだけど。便利だよね、その魔法のじゅうたん。荷物を乗せて浮いたのを見て、メイドさん達が欲しがってたよ」
「え、そうなんですか?なら作ってプレゼントしようかな…。いつもお世話になってるし」
「あ、待って。それならプレゼントじゃなく、格安で売るって形にしてくれるかな?でないとアイリーン様に怒られてしまうから」
「え…。…アイリーン様なら、怒らないんじゃないですか?」
「…そうだね。もしかしたら怒らないかもしれない。けど、良くは思われないと思うよ。だから、無償でプレゼント、には、しないで欲しい」
「…わかりました。ならそうします」
「うん、ありがとう、クレハちゃん」
「フレンさん、何か来ます!」
「え?」
警戒するように声を上げたライルくんは、立ち止まって前を見据えている。
私はちょっと緊張してライルくんの視線を追う。
すると、前方に馬車が見えた。
「え、あれって…乗り合い馬車?」
「…え?…の、乗り合い馬車、ですか?」
「うん、そうだよライル。あれが乗り合い馬車だ。見るのは初めてかい?」
「は、はい…失礼しました…」
そういうとライルくんはちょっと顔を赤くして、俯いた。
耳と尻尾がくたりと垂れる。
…か、可愛い…!!
垂れたふさふさ尻尾…もふりたい…っ!
ああでも駄目、ライルくんはわんこじゃなく獣人、わんこじゃなく獣人……!!
呪文のように心の中でそう唱え、目を剃らすと、剃らした先には、シヴァくんがいた。
さらさらとした銀髪が目に映る。
う……っ!
前方のもふもふ、後方の銀髪。
私は何かを試されているような気がして、そのあとしばらく、魔法のじゅうたんを見つめながら歩いた。
ピンコンッ。
「あっ!」
街道を過ぎ、森に入って少しすると、LINE音が鳴った。
それは危険察知のスキルが発動した事を意味する。
私は身を固くして周囲を見回した。
「クレハちゃん?どうかしたかい?」
「あっ、えっと……な、何かの気配を、感じたような気がして…」
「気配を?…いや、僕の探索魔法には何も引っ掛かっていないから、大丈夫だよ」
「はい。何の気配もしません。…気のせい、かと」
「え…」
そ、そんなはずは、ないんだけど……。
「…いえ。右斜め前方にキャタビーが三匹いますよ。かなり先ですが」
「えっ」
フレンさんとシヴァくんの言葉を、ライルくんが否定した。
「そうなのかい?かなりって、どれくらいかな?」
「…1キロくらい、です」
「…ああ、それでか…。僕の探索魔法は80メーターが限度だからなぁ。…けど、獣人のライルはともかく、そんな先の気配を感じ取れたんだね、クレハちゃん。すごいな、どうやったの?探索魔法が使えたのかい?」
「えっ!…えっと~…!」
…どうしよう。
スキルだって事、言っていいのかな?
「ん?…ああ…ごめん。…えっと、キャタビーなら弱いから、レベル上げの為に戦ってみる?」
「えっ?」
『ごめん』…って?
私が不思議そうに見つめると、フレンさんは苦笑した。
「…アイリーン様からの言いつけでね。君が返事に詰まったなら、無理に聞かないように、って」
「…アイリーン様が…」
「うん。で、どうする?キャタビーと戦ってみるかい?」
「あ…。…はい!」
レベルは、上げなくては。
「よし、なら行こうか。ライル、案内を頼むよ」
「はい、わかりました!」
私達はキャタビー目指して歩き出した。
「クレハちゃん、契約した精霊は何かな?」
「あ、火と、水の精霊です」
「火と水か…。なら、火はもし外すと怖いし、水かな。キャタビーを水球で包んで圧縮させて潰すか、高く持ち上げた所で水球消して地面に叩きつけるかだね」
う、怖い説明きました……。
…でも、仕方ない。
フレンさんは魔物の倒しかたを教えてくれてるんだから、聞くのを嫌がってなんかいられない。
「…わかりました。その方法、両方やってみます」
「うん、頑張って」
しばらく歩くと、前方にキャタビーが見えた。
私は覚悟を決め、キャタビーとの戦闘に臨んだ。




