表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/125

契約 3

本日の更新三回目。

奴隷商館をあとにした私達は、再び馬車に乗り込み、ハイヴェル邸に向かった。


「さてと。…それじゃあ、それぞれ自己紹介をしましょうか。屋敷に着くまで、少しかかるもの」

「あ、そうですね!お互い、名前以外、何も知らないですからね。じゃあ私から。クレハ・カハラ、9歳。錬金術士だよ。よろしくね、シヴァくん」

「…シヴァ」

「え?あ、名前?」

「…違う。…ます。…シヴァでいい、です」

「えっ?…あ…」


呼び捨てにって事か。

それに敬語になってる。

さっきは普通に話してたのに……主従契約したからかな?

だとすると、安易に『敬語なんて使わなくていい』と言うわけにも…いかないかなぁ…。

うぅん……よし、これに関しては、しばらくして打ち解けてきた頃に話をしてみよう。


「わかったよ、シヴァくん」

「…………」

「ふふ、わかってないわよ?クレハちゃん」

「大丈夫です。わかってますよ、アイリーン様」

「あら、そう?ならいいけれど。…私は、アイリーン・ハイヴェルよ。年齢は、内緒ね。一応貴族よ」

「一応って…侯爵夫人が何を言ってるんですか、アイリーン様」

「ふふふ。…それじゃ、次はライルくん、お願いできる?」

「あっ、はいっ!ラ、ライル・ウォルロフです!13歳です!よ、よろしくお願い致します、ご主人様!」

「あら。私の事は、アイリーン様、と、呼んでちょうだい?うちの子達は皆そう呼ぶから」

「えっ……は、はい、かしこまりました!アイリーン様!」


あっ、様づけなら頷いて貰えるんだ。

…でも、一応試してみようかな?


「シヴァくん。私の事は、クレハ、か、クレハ様、かの、どちらかで呼んでね?」

「…かしこまりました。クレハ様」


あ、様呼び。

やっぱり呼び捨ては駄目だった…残念。


「…」

「……」

「………」

「…………何ですか?」


自己紹介はシヴァくんの番になり、皆で見つめていると、シヴァくんはそう尋ねてきた。


「ねえ、シヴァくん?最後に、貴方の自己紹介をして貰えるかしら?」

「あ…はい。…シヴァです。12歳です」


………。

……えっ、それだけ?


「ねえ、シヴァく」

「クレハちゃん」

「えっ?」


せめて苗字を聞こうとして口を開いたら、アイリーン様に軽く首を振って止められた。

…無理に聞くのは良くない、って事かなぁ。

ならこれも、打ち解けてから聞こう。

よし、じゃあ話題を変えよう。

話題、話題……あ。


「…ところで、アイリーン様。私ギルドのおじさんから、精霊召喚師についてなら、アイリーン様に聞くといいって言われたんです。アイリーン様が、精霊召喚師だから、って」

「え?ええ、そうだけれど…。…クレハちゃん、精霊召喚師を戦闘職に選んだの?」

「あ、いえ、それはまだ。ただ、どんなのかなって。私でもなれますか?」

「うぅん…それは、精霊次第ね。精霊が応えてくれるかどうかだから」

「あ、そっか。…あの、アイリーン様。こういう聞き方は、違うかもしれませんが…精霊って、可愛いですか?」

「まあ。…ふふ。ええ、可愛いわよ?とぉっても」

「と、とぉっても…!?」

「ええ。それに、とっても頼りになるわ。あらゆる面でね」

「頼りに…」

「…クレハちゃん。屋敷に帰ったら精霊が呼べるかどうか、試してみる?」

「…は、はい!やってみます!」


精霊召喚師、やってみよう!

まずは、精霊。

呼べるといいなぁ。






ハイヴェル邸に戻ると、私は早速アイリーン様監督の元、精霊を呼ぶ事にした。

呼ぶのは、水の精霊。

アイリーン様曰く、『クレハちゃん毎日畑に水を撒くでしょう?それを水の精霊を呼んで水魔法でやれば、ほんの少しずつだけど経験値が得られるから、レベルも上がりやすくなるわよ?』との事だ。

その原理で言えば、料理する時は火の精霊を呼べば更に経験値が入るはず。

水の精霊を呼べたら、次は火の精霊を呼びたい。


「えっと…"清らかなる水の眷属、水の精霊よ。我が声が届いたなら応え、そして来たれ。我は汝との契約を望む者。…来たれ!水の精霊よ!"」


水道から水を出し、私はアイリーン様から教わった文言を言った。

……………。

……あれ?


「…あの、アイリーン様。何も起こらないんですけど…これって、駄目って事ですか…?」

「…うぅんと…。…大丈夫!クレハちゃんに向いてる戦闘職が他にあるわよ!元気出して?」

「…つまり、駄目って事なんですね…」


アイリーン様の遠回しな駄目だしに私が項垂れると、突然、バシャッという音と共に、水道から出る水の量が増えた。

そして、水の中から、青い髪に青い瞳の小さな小さな女の子が現れた。


「へ?…ア、アイリーン様?これって…!」

「あら…!」

「…遅くなり、大変申し訳ございません。かの方のご加護を受けし貴女様との契約に、適当な者を行かせる訳にはいかず、引き止めながら参りましたもので…。どうぞ、お許し下さい」

「え」

「…かの方の、ご加護?」

「あっ!あああの、来てくれてありがとうございます!や、やりましたよアイリーン様!私できました!!やったね!!」

「……………」


うっ……アイリーン様の視線が痛い……!

や、やっぱり駄目?

ごまかせない?

でも、"かの方"っていうのはきっとラクロさんの事だろうし、まさかラクロさんの事を説明するわけにいかないし…!


「…そう、ね。…やったわねクレハちゃん!おめでとう。これで貴女は精霊召喚師よ!」

「…えっ?アイリーン様…?」

「あら、どうかした?」

「……。…いえ。…ありがとうございます、アイリーン様」

「まあ。ふふ、何に対するお礼かしら」


…それはもちろん、誤魔化されて下さった事に対するものですとも。

無理に聞かないでくれるって、ありがたいな。


「…えっと。…水の精霊さん、お名前は?」

「ミウと申します」

「ミウさん、ですね。私はクレハ。よろしく」

「はい。よろしくお願いします、クレハ様」


アイリーン様の言っていた通り、ミウさんはとても可愛い。

精霊召喚師、なれて良かったかも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ