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契約 2

本日二回目の更新。

話が重くならないようにしたけど…ちょっとやり過ぎたかもしれません。

「それではまず、奴隷についてご説明させて戴きます」


灰色猫さんは、奴隷に視線を向けた私の横に来ると、そう言った。

あ、説明して貰えるんだ。


「既にご存知かもしれませんが、奴隷には二種類ございます。永続奴隷と、契約奴隷です。檻の中にいるのが永続奴隷、敷物に座っているのが契約奴隷です。貴女様には、契約奴隷の中から奴隷を選んで戴きます。…永続奴隷は、過酷な労働現場にのみ売る事が許されておりますので、ご了承下さい」


か、過酷な労働現場にのみ……。

…永続奴隷って確か、重度の犯罪を犯した人…だったよね。

…うん、そんな人には関わりたくないので、契約奴隷で結構です…。


「又、契約奴隷には二週間の試用期間がございます。その間の契約奴隷への扱いによっては、契約じたいを無効化し、その後の売買取り引きをお断りさせて戴きます。更に、試用期間を無事に終え契約しても、その後の扱いが酷ければ罰せられますので、十分に、ご注意下さいますよう、お願い申し上げます」

「は、はい」


『十分に』の部分を強調された…。


「説明は以上です。では、お好きな奴隷をお選び下さい」

「…はい…」


『お好きな奴隷を』と言われても…。

私は改めて、シートの上に座っている奴隷達を見た。

皆、だいたい私と同じか、少し上くらいの年齢に見える。

……この中から選ぶのかぁ。

片目に眼帯をしてる子、獣耳にふさふさした尻尾のある獣人の子、背中に茶色の翼がある獣人の子、赤毛の子、銀髪の子に、金髪の子……って!

ぎ、銀髪の子!?

私は銀髪の子を凝視した。

さらさらと柔らかそうな銀髪に、紫の瞳の男の子。

歳は私より少し上だろうか。

はぅ……さらさらの銀髪……触りたい……。

…白状しよう。

私は銀髪萌えだ。

某牧場経営ゲームでは、婿候補に銀髪キャラがいれば、必ずセーブデータのひとつには、その銀髪キャラと結婚したデータが入っている。


「…その子がお気に召しましたか?」

「はぇっ!?」


私が銀髪の子をガン見していると、灰色猫さんに声をかけられた。

驚いてうっかり変な声が出てしまった。

恥ずかしい。


「その子は名をシヴァといいます。護衛として買うなら、双剣を買い与えるといいでしょう。双剣を扱う二刀流の才能があります」

「に、二刀流…!?」


銀髪の二刀流剣士!!

な、なんて格好いい……!!

そんなものを見た日にはもう眼福ものです。


「こっ、この子、おいくらで…!」


ハッ、待て待て私!!

これはゲームじゃないんだ、もっとちゃんと考えて決めなくては…!!

(ぎんぱつ)に流されちゃ駄目でしょう!!


「二刀流の才能、ね。それで、今現在、剣はどの程度使えるのかしら?」


そ、そう、それ!

それを聞かないと!!

何せ身の危険は目の前に迫っている。


「そうですね…この辺りの魔物相手であれば問題はございません。ただ、現在出現しているらしい魔窟に行くのであれば確実に力不足でしょう」

「あ、魔窟はもう諦めてますから問題ないですけど…あの、この辺りの魔物の他に、盗賊とか、そういう相手に関しては…?」

「…盗賊ですか。さて、それは…相手の強さと、人数によりますので、お答えしかねます」

「あ、そっか……う~~~ん……」


単純に何も考えず好みや趣味で決めるなら、迷う事なくこのシヴァくん一択なんだけど……。


「…あの、ちなみにこの中で、一番強いのは?」

「それならば、彼ですね」


そう言って灰色猫さんが指差したのは、獣耳にふさふさ尻尾の獣人の子。


「名をライルといいます。買い与える武器は槍がいいでしょう。獣人ならではの素早い動きで繰り出す突きは見事の一言につきます。またライルは力も強いので、拳での肉弾戦もできます」

「へぇ…!」


ライルくんかぁ。

獣耳にふさふさ尻尾……もふりたい。

…って、そうじゃなくて!!

あぅ…思考が変な方向に飛ぶ……。

う~ん、二刀流のシヴァくんか、槍使いのライルくんか……どっちがいいかな……?


「…あの、アイリーン様は、どっちの子がいいと思います?」


判断に迷った私は、アイリーン様に助けを求めた。

するとアイリーン様は何故かクスクスと笑う。


「アイリーン様?」

「ふふ、クレハちゃんたら、何を言っているの?貴女、さっき即決しかけていたでしょう?」

「へ…」

「剣の腕がまだ低いなら、うちの子をしばらく貸し出してスパルタ式に鍛えて貰おうかと思ったけれど、どうやら問題なさそうだし。迷う事はないんじゃないかしら?」

「え…で、でも、盗賊…あの人達の問題が…!」

「それは、セイル達騎士に頑張って貰うわ。だからとりあえず今のところは、周辺の魔物を倒せる腕があれば大丈夫よ。もちろん、今後の精進も必要だけれどね?」

「え……じゃ、じゃあ……!」


それなら。

……銀髪のシヴァくんと眼福の護衛生活突入……!?


「…では、お買い上げはシヴァでよろしいでしょうか?」

「うっ…!…あ、アイリーン様…?」

「クレハちゃんに任せるわ」

「あぅ……え、えっと……」


私はちらりとシヴァくんを見る。

シヴァくんは無表情に私を見ていた。


「…あの、シヴァくんは、私でいいかなぁ…?」

「…俺を買うの?」

「う、うん、シヴァくんが、私でもいいなら…。…どうかな…?」

「…どうって…さぁ…?初対面だし…」

「あっ、そっ、そっか、そうだよね!うん、初対面だもんね!……えっと、じゃあ、試用期間で判断かな!私でいいって言って貰えるように頑張るね!」

「…まあ、クレハちゃん…それは逆よ?」

「えっ?」


逆って、何が?


「…頑張るのは俺。…貴女は、酷い扱いさえしなきゃいい」

「へっ?」

「その通りです。シヴァ、本契約して貰えるように頑張るのですよ?」

「…はい」

「あ…な、なるほど…そっか、逆なんだね…」

「では、仮契約をします。二人共、腕を出して下さい」

「え?あ、はい」


私は灰色猫さんの前に腕を出した。

シヴァくんもそれに倣う。


「奴隷商人、灰色猫の名において、クレハと奴隷シヴァの仮契約を執行する!」


灰色猫さんがそう言うと、私とシヴァくんの腕に腕輪が現れた。


「それは奴隷との契約の腕輪です。街などに出入りする際、その腕輪が奴隷の身分証がわりになります。奴隷が主人に逆らったり危害を加えようとすればその腕輪が奴隷の腕を千切れるほどきつく締め付けますので、ご安心下さい」

「ええ!?」


な、何それ、ちっとも安心できないんだけど…!?


「あ、あの、ちなみにこの腕輪、外したりとかは…?」

「外す?………主人であれば、装着も脱着も可能ですが…」

「あっ、そうなんですね!」

「ですが、お薦めはできません。今も言いました通り、その腕輪が奴隷の身分証がわりですし、それに…」

「あっ、そっか、なくしたら大変ですね。ならつけておくべきなのかな」

「………。…そうですね」

「ぷっ、クスクス。…灰色猫さんもクレハちゃんにかかればこうなるのね…ふふっ」

「え?」

「………ずいぶん、風変わりなご友人をお持ちなのですね、ご夫人」

「可愛いでしょう?」

「……。…ええ、そうですね」

「???」

「それでは、シヴァの代金をいただきましょうか。今は仮契約なので、とりあえず半額をお支払いください」

「あ、はい………あっ!?」


わ、私財布持ってない!!

急いで支度したし、今日は買い物の予定もなかったから、うっかり置いてきちゃった…!!

どっ、どどど、どうしよう!?


「…クレハさん?どうなさいました?」

「あっ…!…ええと~…!」

「…クレハちゃん?もしかして、慌てて飛び出して、お財布忘れちゃった?」

「うっ!!」

「ああ、やっぱり。なら、私が立て替えておくわね。クレハちゃんが望んだ奴隷が予算外だった時の為に、たくさん持ってきたから大丈夫よ」

「アイリーンさん…!すみません、後日必ず返します!!」

「ええ。…それと、灰色猫さん。私の新しい契約奴隷だけれど。ライルくんをいただくわ。合わせておいくらかしら?」

「…ライルとシヴァの仮契約分ですね。承知致しました。すぐに計算致します」

「ええ、お願い」


その後アイリーン様が提示された金額を支払うと、灰色猫さんは『ちょうど二週間後にまたいらして下さい』と言った。

私とアイリーン様は頷き、シヴァくんとライルくんを連れ、奴隷商館をあとにした。

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