魔窟出現 7
今日三回目の更新。
これで今日はラストです。
今日も読んで戴いてありがとうございました。
応接間に通された私は、昨夜の出来事をアイリーン様とセイルさんに話した。
「そう……そんな事があったのね。人拐いか、盗賊か……どちらにしても、困ったものね」
「君が会ったその三人の他にも、仲間がいるのか……これは、大捕物になるかな」
「ええ、そうね。……セイル、やはりお願い事をしなければならないようだわ。貴方だけじゃなく、駐屯軍の力も貸して貰わなければいけないわね。……軍団長さんを、呼んできて貰えるかしら?」
「はい、アイリーン様。かしこまりました」
「どのくらいで来られそう?」
「……そうですね……遅くとも、昼過ぎには」
「そう、わかったわ。なら私の用事を先に済ませておくわね。……けどその前に。ねえクレハちゃん? こういう人達が現れた以上、街の外に一人暮らしは危険よ。街に住む気はない? もしあるのなら、うちに住んでもらってもいいのよ? 部屋はたくさん余っているもの」
「……あ……あの、それは……」
「……嫌?」
「……ごめんなさい。私、あの場所が気に入ってるんです。丘からの眺めが凄く良くて。季節毎に違う景色が見れるし……。それに、動物や、畑の事もありますし」
それに何より、あそこは、ラクロさんが私にくれた大切な土地で、大切な家だ。
そこを出て他に移り住むなんて考えられない。
「そう……それなら、打てる手はひとつね。……クレハちゃん、護衛を雇いなさい。これは拒否は受け付けないわよ?」
「あ……はい。私も、その事をアイリーン様にご相談をしようと思っていたんです」
「あら……! まあ、そうなの? なら話は早いわ。行きましょうか、クレハちゃん」
「え? ……えっと、どこにです?」
「……アイリーン様……! まさかクレハちゃんを、あそこに?」
「あそこ……?」
「ええ、そのまさかよ。クレハちゃんの人柄は私が保証できるもの。問題はないわ。あそこの人材なら裏切る心配もないし、下手な冒険者に護衛をお願いするより安心だわ。……クレハちゃんに何かあったら、私が困るもの」
「……。……まあ、確かに、クレハちゃんなら……。……わかりました。では、私は一旦これで失礼します。またあとで、参ります」
「ええ。お願いねセイル。さぁ、行きましょうクレハちゃん。……それから……クレビス」
「……はい」
「……あ、クレビスさんが今日のお供なんですね。よろしくお願いします、クレビスさん」
クレビスさんは、アイリーン様に仕える、ハイヴェル家の使用人さんの一人だ。
「……ああ……よろしく、クレハちゃん……」
……あれ?
なんかクレビスさん、元気ない?
「……あの、クレビスさん? どうか、したんですか?」
「……いや? ……何でも、ないよ」
「え……」
何でもないようには、見えないけど……言いたくない事なのかな?
なら、無理に聞くのは良くないよね、うん。
「あの、アイリーン様? これからどこへ行くんです? あそこ、って?」
私はクレビスさんからアイリーン様に視線を移し、尋ねた。
「……ふふ。な、い、しょ。着くまで秘密よ、クレハちゃん」
「ええっ?」
「大丈夫よ。私を信じて、ついてきて?」
「……はあ……」
私はアイリーン様の後について、馬車に同乗させて貰い、再び街へ向かった。
「さあ、着いたわ。ここよ」
しばらく馬車に揺られたあと、アイリーン様のその言葉と同時に馬車の扉が開かれた。
馬車を降りると、そこは黒い外壁の建物の前だった。
「さあ、行きましょう。クレハちゃん、決して離れずについて来てね?」
「はい……?」
何故かそう念を押され、私はアイリーン様に続いて建物の中へと入って行った。




