魔窟出現 3
本日2回目の更新です!
冒険者さん達を見送った後、私は売買カウンターで残った薬とアイテムを売った。
「ほらよ嬢ちゃん。今回の買い取り金だ」
「はい、ありがとうございます。……ねえ、おじさん。魔窟って、いつまで街の近くにあるんですか?」
「ん? ……さあなあ。ただ今まで現れた期間は、一番短くて1週間、長くて1ヶ月だったらしいぞ」
「1ヶ月……じゃあやっぱり、私が行くのは無理ですね。これから頑張ってレベルを上げても、魔窟に行っても問題ないレベルにするのは間に合わなそう」
「何だ、諦めたわけじゃないのか」
「……いえ、諦めますよ。死にたくはないですから。…けど、次にこういうチャンスがあったらもう逃したくないなぁ。……レベル、上げようかな」
「おっ! そうか、その気になったか! 賛成だぜ嬢ちゃん! 嬢ちゃんは自分で身を守れたほうがいいからな! ……で? 何になるんだ? 剣士か? 魔法使いか? 回復術師か? 精霊召喚師か?」
「え? ……ああ、そっか、戦闘職も色々ありますもんね……う~ん」
「……嬢ちゃんに向いてるのは、後衛職だと思うぞ? 魔法使い、回復術師、精霊召喚師あたりだな」
後衛職かぁ……確かに、魔物と接近するのは怖いから、そっちのほうがいいなあ。
魔法使いに、回復術師に……精霊召喚師……?
「……ねえ、おじさん? 精霊召喚師、って? 精霊を召喚できるの!?」
「おっ、出たな、嬢ちゃんの物知らず。そうだ。精霊召喚師は自分と契約した精霊を召喚できる」
「……自分と契約した、精霊?」
「ああ。だから精霊と契約できなきゃ精霊召喚師にはなれないんだ」
「……その契約は、どうやってするんですか?」
「簡単だよ。契約したい精霊の力の源を目の前に置いて呼びかけりゃあいい。火の精霊なら火を、水の精霊なら水を、な。風の精霊なら風が吹いてる日に、光の精霊なら晴れてる日に屋外で、って具合だな。精霊が呼びかけに応えてくれりゃ契約できる」
「へえ……」
精霊かぁ……可愛いかな?
「……嬢ちゃんは精霊召喚師がいいのか?」
「え? ……えっと……」
「……もし興味があるなら、ハイヴェル夫人に話を聞くといいぜ」
「え……アイリーン様に?」
「ああ。夫人は確か、自衛の為に精霊と契約してたはずだからな」
「へえ、そうなんですね……! なら早速この後行ってきます!」
「は? ……おいおい嬢ちゃん、錬金術士の中級ランク承認試験は受けなくていいのか? 後日に回すってんなら、それでもいいが」
「あっ!」
「どっちを先にするんだ?」
「……承認試験を、先に受けます……」
「よし、わかった。……おーい誰か! ちょっと店番頼む!」
「あ、はーい!」
おじさんが声を張り上げると、すぐに他の職員さんがやって来た。
「よし、行くぞ嬢ちゃん!」
私はおじさんに連れられ、ギルドの奥へ向かった。
「……ねえおじさん……試験、簡単過ぎない? いいの? あれで?」
試験が終わり、無事に中級へとランクアップした私は、おじさんを見て言った。
試験内容は、いくつかの調合アイテムを作る為に必要な材料の名前と、そのアイテムの効能などの特徴を聞かれ、それを答えるだけで終わった。
むしろ試験より、中級ランク承認証の発行に時間がかかった。
「はは、いいんだよ。初級から中級に上がるのは比較的簡単なのさ。けど、上級に上がるのはそうはいかないぞ? 何しろ、実際に自分で調合した物を数種類持ってきて、それが全部、定められた品質値を超えてなきゃならないからな」
「……へえ、そうなんですね……」
「……まあそれでも、嬢ちゃんならすんなり上級になりそうな気がするがな」
「へっ?」
「……なあ、嬢ちゃん。さっきも言ったが、嬢ちゃんは自分で身を守れたほうがいい。……今までずっと、俺も夫人も気を揉んでたんだぜ? 嬢ちゃんは無自覚過ぎるからな」
「……はい?」
「今日はもう帰るんだろうから、明日。明日必ず夫人の所に行けよ? ……頼むぜ、嬢ちゃん」
「あ……はい。わかりました……?」
「よし。じゃあ、またな、嬢ちゃん」
「はい。また数日後に。さようなら、おじさん」
「気をつけてな!」
私はギルドを出て、街門に向かって歩き出した。




