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ネオスティアの勇者 8

大会の日がやってきた。

私は護衛の皆と共に、会場である剣武錬へとやって来た。

アイリーン様とアージュは、もうひとつの会場、魔導錬に向かった。

フェザ様とアレク様では、行われる会場が違うらしい。


「さぁどうぞ。こちらでございます」


前を歩いていた騎士様はそう言って、扉を開けた。

開けられた扉をくぐると、壁がガラス張りになっている部屋に出た。

部屋の中央には横並びに三つ置かれた椅子が二列置かれている。

私は正面に進んで、ガラス越しに斜め下を見た。


「わ、凄い。よく見える」

「ええ。この部屋は、その為の場所ですから。それでは、私はこれで失礼致します。どうぞ心行くまでお楽しみ下さいませ」

「あっ、はい! 案内、ありがとうございました!」


私がそうお礼を言うと、ここまで案内をしてくれた騎士様は深々と一礼して去っていった。

扉が閉まると、私は再び下を見た。

一般の観覧席にはもの凄い数の人々が、席を求めてうごめいている。


「はぁ、凄い人。……落ち着いて見られるのは助かるけど、本当にいいのかな? こんな場所借りちゃって」

「いいんじゃない? フェザ様の厚意なんだから、受け取っておこうよ」

「そうですね。入り口で突然声をかけられた時には、驚きましたけど」

「特別席、と言っていましたね。そんな場所を用意して提供できるとは、さすが王子殿下というところでしょうか」


今だに恐縮する私をおいて、フレンさん、ギンファちゃん、シヴァくんは椅子に座ってしまった。


「ほら、クレハちゃんも座りなよ。もうじき始まるよ?」

「……はい」


フレンさんに促されると、私は観念して椅子に座った。


「……それで、結局、装備品についてはどうなったの? フェザ様、誰が作った物を選んだのさ?」

「……わかりません。フェザ様は、今日発表するって、言ってましたけど」

「え、今日、ですか? ……大会のあとって事でしょうか?」

「……大会のあとは、王城の広間に移動して、優勝者の祝賀会が催されるはずです。……もしかしたらフェザ様は、ご自分が優勝する自信があって、その祝賀会で発表されるのかもしれませんね」

「え、ええ!? そ、それだと、大勢の人達の視線の中で告げられるって事だよね!?」

「……うん、そうなるね」

「そんなぁっ!!」


そんな事になったら、間違いなく目立つよ……!!

フェザ様の装備に選ばれたならいいけど、そうじゃなかったら恥ずかしい思いをするのは確実だよ!?

い、嫌だ……逃げたい……!!


「……大丈夫だよ、クレハちゃん。"王子殿下"が衆人環視の中、職人にただ恥をかかせて終わらせるような真似はしないよ」

「あ……まぁ、そう、ですね。しかも、その"王子殿下"は、フェザ様ですし……」


うん、大丈夫……かな。

フレンさんの言葉に落ち着きを取り戻した私は、ホッと息を吐いた。


その後、メイドさんが飲み物や、軽く摘まめるお菓子を運んできて、私はまた恐縮しつつそれを受け取った。

そしてメイドさんが退出すると、まるでそれが合図であったかのようなタイミングで、大会が始まったのだった。

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