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ネオスティアの勇者 7

翌朝、フェザ様が大剣を取りに来た。

まだこれを選んだわけじゃないはずなのに?

そう思って私が首を傾げていると、『とりあえず使ってみる』とだけ言って帰って行った。







「あ、あの、アレク様、いいんですか? ここ、お城なんですよね?」

「うん、そうだよ。大丈夫、許可は取ってあるから」


そう言って、アレク様は平然とお城の中を進んでいく。

午後になって現れたアレク様に、"面白いものが見れるから"と誘われ、連れてこられたのがこの場所だった。

私もアージュもギンファちゃんも、本当に入っていいのかとビクビクしながら歩いている。

ほぼいつも無反応なシヴァくんでさえ、困惑した様子だ。

何故かフレンさんだけは気にした様子もなく堂々と歩いているけれど。


「ほら、そこが目的地だよ。面白いものはあれ。見てごらん」


そう言って、アレク様は正面を指差した。

この先は建物の外に繋がっているようで、開け放たれた扉からは明るい日射しが射し込んでいる。

アレク様の後について外に出ると、そこはだだっ広い空間だった。

草ひとつない土だけの地面。

遥か端のほうには、木で出来た何かが一列に並んでいる。

……ここは、何だろう?

そう思って周囲を見回すと、中央にフェザ様の姿を見つけた。

その周りには、まるでフェザ様を取り囲むように立つ四人の騎士様がいる。


「あの、アレク様? あれ、何をしているんです?」

「ふ、すぐにわかるよ。見ててごらん」

「はい……?」


私は首を傾げ、視線をフェザ様に向けた。


「殿下、よろしいですか?」

「ああ、いつでもいいぞ」

「は。では……参ります!」


フェザ様の真正面にいた騎士様がそう告げると、四人の騎士様方が一斉に剣を手に、フェザ様に斬りかかった。


「えっ……!?」


騎士様方が持ってるあれ、木刀とかじゃなく真剣だよね!?

相手が騎士様なら訓練って事なんだろうけど、王子殿下相手に真剣で訓練なんて、やっていいの!?

もし怪我させたら責任問題にならない!?


「ア、アレク様、あれ、止めなくていいんですか!?」

「いつもの事だからね」

「……いつもの……?」


な、なんかその台詞、前にも聞いたような……。


「お。来たかクレハ!」

「あ。こんにちは、フェザ様……って!?」

「? どうした?」

「い、いえ、何でも……」


私達に気づき、こちらへ駆け寄って来たフェザ様の背後で、四人の騎士様が倒され、膝をついていた。

私がアレク様と会話したあの短い時間に倒したんだろうか?

言わば瞬殺?

……相手、仮にも騎士様だよね?

それも四人。

フェザ様が強い事は知ってたけど、騎士様四人を瞬殺って……どんだけですか?


「フェザ、どう? その剣の調子?」

「ああ……やはり軽くてイマイチ勝手が掴めないな。帰って来てからずっと慣らしているが、まだ騎士四人を相手にするのが精々だ」


その剣?

軽い?

アレク様とフェザ様の言葉に、フェザ様の手元を見ると、手にしているのは今朝渡した、私が作った大剣だった。


「そう。まぁ、大会まではあと4日あるし、そう焦る事もないんじゃない?」

「そうだな。だが、早く調子を掴んでおくに越した事はない。アレク、お前も加われ。ギンファ、お前も相手を頼む」

「えっ!?」

「はいはい。ギンファちゃん、ごめん。一緒にフェザの相手を頼むよ」

「え……は、はいっ……!」


フェザ様に突然指名され、ギンファちゃんは戸惑いながらも前に進み出た。


「シヴァ、フレン。もう少し慣れたなら、お前達も加わってくれ。よろしく頼む」


そう言うと、フェザ様はアレク様とギンファちゃんを連れ、訓練に戻って行った。

騎士様四人+アレク様+ギンファちゃんが相手となると、フェザ様も今度はさすがに瞬殺とはいかないようだ。


「フェザ様の訓練相手か……さすがに面倒だとは断れないな。ねえクレハちゃん、明日の午後から大会までは採取地に行こうよ? そうすれば魔物相手に訓練して貰えるしさ」

「え? そ、それって、またフェザ様も私の採取に…………ついて、来られるでしょうね……やっぱり」

「そうですね。そう思います」

「うぅ……。……でもまあ、もう今更かなぁ」


初めて王都に来た時に付き合って貰った採取に、シュピルツの街での盗賊退治と、もう二回も危険な事にフェザ様巻き込んじゃってるもんね……。

もし採取地への同行を断っても、ついてこられるんだろうし。

私はため息をひとつ吐くと、目の前で繰り広げられる一対多数の訓練を眺めた。

やがてフェザ様がシヴァくんを、そしてフレンさんを呼んで訓練に参加させた頃には、私はその場に座りこんでいたが、見学し続けた。


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