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ネオスティアの勇者 4

今日はちょっと短いです。


……暑くてイマイチ頭が働かないとか、そんな理由で短いわけではないです。

ええ、断じて違います。

街へ行き、ギルドでお二人から送られたメモと材料を受け取ると、私はすぐに家へとUターンした。

受け取った際に、ギルドのおじさんがなんだか何かを言いたそうな顔をしていたように思ったけれど、結局何も言われなかったから、気のせいだったのかもしれない。







「……う~~ん……」


調合室で、私はメモを凝視し、ひたすら唸っていた。

唸る度、隣で調合しているシヴァくんが、チラチラと私を見る。

シヴァくんが作業に集中するのを妨害している自覚はある。

ただメモを眺めて、唸り声を上げ、一向に調合に取りかからない私を、気にするなというほうが無理だろう。

しかし、アレク様やフェザ様の言うところの"大事な大会"で使う装備の作成を任されたのだ。

アレク様もフェザ様も、大切な友人だ。

故に、ただ指定された物を作るのではなく、少しでもお二人にとって使いやすい物を作りたい。

しかもフェザ様からは、"他へも頼んでいて、一番出来のいい物を使う"と言われている。

勝ち目は薄いかもしれないとわかっているけれど、できれば私が作った物を選んで、使って貰いたい。

その為には、どうしたらいいか。


「……ねえ、シヴァくん。ちょっと、聞いていいかな?」

「はい、何でしょう?」


やがてシヴァくんが一品を作り終えたのを見計らって、私は声をかけた。

シヴァくんはすぐに私の横に来てくれた。


「前にシヴァくんに作った、双竜の牙なんだけど、シヴァくんの提案で、刀身を細くしたでしょう? あれ、どう? やっぱりツインエッジより使いやすい? 剣自体の攻撃力は、もちろん高いだろうけど……扱いやすさって点で、違いはあるかな?」

「……扱いやすさ、ですか。そうですね……」


私の問いに、シヴァくんはしばしの間考え込んだ。


「クレハ様がお知りになりたいであろう事に、どう答えたらいいか、迷いますが。使いやすいのは確かです。俺の戦い方には、やはりあのほうがあっているかと思います」

「戦い方……かぁ。……う~~~ん……」


シヴァくんの言葉に、私は今まで見た、アレク様とフェザ様の戦闘時の姿を思い浮かべた。

……あの戦い方に合った武器、そして防具。


「……ああ、駄目だぁ。今まで皆の装備を作ってきたとはいえ、そういう点での知識とか経験とかは、確実に鍛冶師さんとかのほうが上だよ……。アレク様はとにかく、フェザ様に使って貰うのは無理に近い気がするよ……」


私はそう言って、作業台にぱったりと伏せた。

シヴァくんはそんな私を見て、苦笑した。


「そうですね……確かに、通常であればクレハ様には不利かもしれません。けれど今回に限って言うなら、クレハ様には、その鍛冶師さん達などにはない強みがあります。十分、勝ち目があると思いますよ」

「……強み? え、何、それ?」


聞こえた言葉に、私は伏せたまま顔だけをシヴァくんに向けて尋ねた。


「……クレハ様の、友人を大切に思う心、です。今そうして悩んでいらっしゃるのも、大切な友人に少しでも良いものをと、思ってらっしゃるからでしょう? そんなクレハ様がお二人の為に作る品です。きっとフェザ様に選ばれると、俺は思います。少なくとも、俺なら必ず、クレハ様の品を選びます」

「……シヴァくん……」

「王都に行くまで、まだ時間はあります。どんなものがいいかをじっくり考えて、クレハ様の心が籠った品を、お作りになって下さい。そうすれば、きっと選んで貰えます」

「……。……うん。ありがとうシヴァくん。ギリギリまでゆっくり考えて、頑張って作るね!」

「はい」

「よぉし……まずは、お二人の戦う姿を思い返して、分析するところからだね! やるぞ~~!!」


シヴァくんに励まされ、なんだか自信が出てきた私は気合いを入れ直した。

シヴァくんはそんな私を見ると、満足そうに頷いて、そっと、調合室をあとにしたのだった。


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