ネオスティアの勇者 1
今日も一更新です。
……私が再び複数更新する日は果たしてくるのでしょうか……
秋が終わり、冬が訪れた。
今年の冬は雪が多い。
辺りは一面真っ白で、連日、身を切るような寒さが続いている。
そんな中、ようやく晴れた日に、私は十分に暖かい格好をして、アージュの家に遊びにきた。
「ふふふふふふ」
「……アージュ……今日は一体、どうしたの? その笑い方、もう10回目だよ?」
お昼過ぎに遊びにきた時から、アージュは何があったのか、すこぶる上機嫌で、時々とても嬉しそうに笑いだしている。
そんなに嬉しい事があったならここぞというタイミングで話してくれるのだろうと何も言わずに待っていたが、アージュは一向に話してはくれず、10回目となった笑いをきっかけに、私は思いきって尋ねてみた。
「あ……ご、ごめんねクレハ。えっと、ね。嬉しいけどなんだか恥ずかしくもあったから、クレハが帰る直前で言おうと思ってたんだけど、ね」
「うん?」
嬉しいけど、恥ずかしい?
何だろう?
「あのね……春になったら、アレク様、学院を卒業されるの。それで、ね……"この街に、住む事にした"って、"これからは、毎日のように会えるよ"って、昨日そう言ってくれたの……!! お兄さんにも、許可を貰えたんだって!!」
「えっ、あ、ああ、そっか……もうご卒業なんだね。そっか、アレク様、この街に来るんだ。良かったねアージュ! 遠距離恋愛、卒業だね!」
「うんっ!」
「それで、アレク様、この街で何の職に就くの? 街の騎士? 冒険者? それとも……動物屋の店員?」
「えっ?」
嬉しそうなアージュに、からかいまじりにそう尋ねると、アージュは目を丸くして動きを止めた。
「……アージュ?」
「え……えっと……そ、それはまだ、聞いてないや……。街に来るって聞いて、浮かれちゃって……」
「あ……ああ、そうなんだ。まあ、アレク様なら、ちゃんと何らかの職には就くつもりなんだろうし、きっとまた今度にでも、教えてくれるよ」
「う、うん、そうだよね! あ、それでねっ、卒業式の三日後に、王都で大きな大会があるんだって。アレク様、それに出場するらしいの。それで、"大事な大会だから応援に来て欲しい"って言われたから、クレハ、準備しておいてね!」
「え? "準備"って……私も行くの?」
「え? ……行かないの? だって、アイリーン様も行くんだよ?」
アージュはそう言って不思議そうに首を傾げた。
どうやらアージュの中では、当然のように私も一緒に行く事になっていたらしい。
いや、もしかしたら、アイリーン様の中でもそうなっているかもしれない。
そして当然、アレク様の中でも……。
まあ、私にとって、アレク様は友人だし。
その友人がわざわざ"大事な大会"と言った上で、更に"応援に来て欲しい"と言ったなら、これは行くべき、だよね。
「……わかった、私も行くよ。行くのはいつ? 卒業式の三日後なら、春になってからだよね?」
「わ、そうこなくっちゃ! アレク様、きっと喜ぶよ! 一ヶ月後だよ! アイリーン様は卒業式から出席なさるんだって!」
「そう、わかった。ならまた数日、王都に滞在する事になるんだね。それならまた、採取地に足を運べるかな」
「あっ。クレハ、"私と一緒に王都散策"も予定に入れておいてね?」
「うん、わかった。……それじゃアージュ、そろそろ外に出て、雪遊びに突入する?」
「うん! まずは雪合戦だよクレハ! 私はギンファちゃんをパートナーにもらうよ!」
「了解。なら私はシヴァくんと組むよ! フレンさん、フレンさんは」
「僕はここにいるよ。外寒いし。臨時の店員としてアーガイルさんの手伝いでもしてるから、気にせず遊んできて」
「あ、はい、わかりました。それじゃアージュ、シヴァくん、ギンファちゃん、行こっか!」
「うん! 負けないからねクレハ、シヴァくん! ギンファちゃん、手加減なしでいこうね!」
「はい! 頑張りましょうアージュちゃん!」
「む、こっちこそ、負けないよ? ね、シヴァくん!」
「はい。勝ってみせます」
そう言い合いながら、私達は外へと向かって駆け出して行った。
「やれやれ……子供は元気だね。晴れてるとはいえ、こんなに寒いのに」
背後から、フレンさんの呆れたような声が聞こえた。




