防衛作戦 3
今日も一更新です。
盗賊達のかくれんぼは、暫し続いた。
陽は段々傾いてきている。
このまま陽が落ちるのを待って、暗闇に乗じて襲撃を開始するつもりなんだろうか?
でも、そんなもの待っても意味はない。
「キラリちゃん、おいで! 周囲を照らして!」
「はい、マスター!」
私はキラリちゃんを呼んで、薄暗くなってきた周囲を光で照らして貰った。
これで、たとえ夜になっても周りが見えないなんて事はない。
それに何より、夜になる頃には騎士様もここに到着するだろうし、そしたらすぐに決着はつくはずだ。
「クレハ様。動きがありました!」
「……この光景を見て、夜を待っても無駄と気づいたんでしょうね。クレハ様、ご準備を」
「うん!」
シヴァくんとギンファちゃんの声に、私も気合いを入れ直す。
直後、木の影から人影が飛び出した。
「……たっ……たのもーー!!」
「……へっ?」
飛び出したその子は、大きな声でそう言った。
…………"たのもー"?
え、何それ、この状況で上げる声としては、ちょっと違くない?
なんとも微妙なその台詞に、私はぱちぱちと目を瞬いた。
すると、その子の近くの木の影から男性が飛び出し、その子の頭をゴンッという音をたてて殴った。
「痛ぁっ!?」
「馬鹿野郎、違うだろうが! ったく……! 容赦はいらねえ、かかれ野郎共!!」
「へいっ!」
「ほれ、おめえもとっとと来い!」
「はっ、はいっ……!!」
男性が声を上げると、盗賊達は一斉にこちらに向かって駆けてくる。
な、なんかあの子の一言で一瞬気が抜けたけど、スキル発動の準備しなきゃ……!
ああ、でも、あの男性とあの子、駆け出すのが他より少し遅かったから、その分距離に多少の差があって、このままだと全員敷地に誘い込むには厳しいかなぁ。
「……シヴァくん、ギンファちゃん、念の為もう少し下がろう。ここだと全員が敷地に入る頃には先頭がたどり着いちゃう」
「あ、はい」
「わかりました」
私達は盗賊のほうを見据えたまま、家の前まで後退した。
盗賊達は順調に家の敷地に侵入してきている。
あと、四人。
あと、三人。
二人、一人…………よし!
「強制退去!!」
一番後ろのあの子が家の敷地に入るのを見届けて、私はスキルを発動させた。
次の瞬間、向かってきていた盗賊達の姿は煙のように消え、元いた森の木々の周りに現れる。
「なっ、何だ!? 何だこりゃあ!?」
突然の事に驚いた盗賊達が大声を上げ、キョロキョロと周囲を見回した。
けれど私達は、そんな盗賊達を見る事はなかった。
「あ……あれっ?」
「な……!?」
「う……嘘、どうして……!?」
私達の正面、家の敷地である庭に佇む、ひとつの姿。
あるはずのないその姿を見て、私達は揃って目を見開き、驚愕の声を上げた。
「え? え!? えっ!?」
ただ一人残ったその子は、困惑したように私達と盗賊達を何度も交互に見ていた。




