防衛作戦 2
今日も一更新です。
ピンコンッ。
「あっ!?」
「えっ? ……クレハ様? どうなさいました?」
「突然、どうしたのですか? クレハちゃん?」
LINE音が聞こえ、私が声を上げると、ギンファちゃんとイリスさんが不思議そうに私を見た。
「あ、ごめん、二人とも。……えっと、もしかしたら、盗賊、近づいて来てるかも……」
「ええっ!?」
「た、大変……! 私槍を取ってきます! シヴァくんにも声をかけますね!」
「うん、お願い! イリスさん、急いで動物達を小屋にしまいましょう!」
「は、はい!」
ギンファちゃんが家に駆け込んで行くのを視界の端に捉えながら、私とイリスさんは放牧スペースの柵を開けた。
アイリーン様が来て、フレンさんが盗賊退治に経った日から、既に数日が経過している。
私達は盗賊の襲撃に備え、用心しつつ日々を過ごしていた。
迎え撃つ準備は、既に整っている。
あの翌日、私は神秘の粉を無期限での取り寄せで無事再入手していた為、"親愛の水晶"を二つ作り、一つをアイリーン様に渡した。
もちろん、盗賊の襲撃があった場合、すぐに知らせる為だ。
街に襲撃があった場合、街の守りは駐屯軍の騎士様に任せて、私達は家への襲撃に備える。
そして家に襲撃があった場合、騎士様を数名派遣して貰い、強制退去のスキルで時間を稼ぎ、騎士様の到着を待って打って出て、前後で挟んで捕縛する手筈になっている。
「これでよし、と。イリスさん、外は危険ですから、家に入っていて下さい」
「は、はい、わかりました。クレハちゃん、どうかお気をつけて……!」
動物達を小屋にしまい終えると、私はイリスさんにそう声をかけた。
イリスさんはそれに返事を返し、何度か心配そうに私を振り返りつつ、家に向かって歩いて行った。
そんなイリスさんと入れ代わりに、シヴァくんとギンファちゃんがこっちに向かって駆けてくる。
「クレハ様、親愛の水晶を持って来ました!」
「……近づいて来ているのは、人のようですね。複数います」
「そう……だとするとやっぱり、盗賊の可能性が高いね。やっぱり来ちゃったかぁ」
私の危険察知スキルとは違って、シヴァくんやフレンさんが使う探索魔法は、探知したものが何であるか、までわかる。
これで、もしかしたら魔物かもしれないという考えは消えた。
複数の人だというなら、盗賊の可能性が濃厚だろう。
ピンコンッ、ピンコンッ。
聞こえるLINE音は、段々早くなってきている。
それだけ、近づいて来ている証だ。
「……クレハ様、来ました。全部で10人です」
「ここまで近いと、私でも気配を察知出来ます! どうやら、木の影に隠れているようですね……!」
シヴァくんとギンファちゃんはそう言って、森のほうを見据え、武器を構えた。
「……10人、だね。わかった。アイリーン様に連絡するね。二人とも、そのまま見張ってて。敷地に入ったならすぐにスキル発動させるから」
「「 わかりました! 」」
私は親愛の水晶を両手で持ち、アイリーン様の顔を思い浮かべて口を開いた。
「アイリーン様、アイリーン様! 応答して下さい、アイリーン様!」
水晶に向かって呼びかけると、すぐにアイリーン様の姿が水晶に映る。
どうやら、アイリーン様はすぐ気づく距離に水晶を置いていてくれてたみたいだ。
「クレハちゃん? ……これを使ったって事は、来たのね?」
「はい。森の木の影に隠れているようなので、間違いないかと思います。人数は10人です」
「そう、わかったわ。すぐに騎士を行かせるから、それまで頑張ってちょうだい。イザーク、イザーク! すぐに騎士に知らせを出しなさい! 全速力でクレハちゃんの元へ走らせて!」
そう聞こえたのを最後に、アイリーン様の姿は水晶から消えた。
「シヴァくん、ギンファちゃん、聞こえた? 騎士様が来るまで、頑張ろうね!」
「「 はい! 」」
盗賊達は、まだ森の木々に隠れている。
騎士様が来るまで、このままずっとそうしていてくれるなら、楽なんだけどなぁ。




