改めて、よろしく。
今日も一更新。
なかなか時間が取れず、ちょっと遅くなってしまいました。
しかも少し短いです。
帰り道、魔法のじゅうたんに乗ってふよふよと空を漂いながら、私はシヴァくんを見て、口を開いた。
「ねぇシヴァくん。聞いても、いいかな? 今までの……私に会う前の事を」
「……クレハ様に会う前の事……ですか?」
「うん。その……一年前、私に会う前に、既に何回か……その、契約奴隷として、働いていたんだよね……?」
私は遠慮がちにそう尋ねた。
「……はい。……最初に売られたのは、七歳の時でした。その時の期間は三年で……次が二年。そして一年の期間で売られた時に、クレハ様に……」
「七歳から……そっか。……どんな、所だったの? その二つの、雇われ先」
「……最初は、貴族の屋敷でした。その時は護衛じゃなく、使用人として雇われました。まだ、剣なんて使えませんでしたから。日々、家事や雑用をこなして過ごしました。ただ、旦那様と奥様は時々、俺に読み書きや計算などはもちろん、その他にも、色々な事を教えてくれました。"将来、役に立つだろうから"、と」
「読み書きや、計算を……そっか。いい雇用主だったんだね」
「はい。……次は、商人の所に雇われました。また、使用人として。そこは貴族の屋敷にも出入りする、大商人の家だったようで、旦那様も奥様も忙しい方で……けれど、そこで護衛として雇われていた男性が、俺に剣術を教えてくれました。"男は強いほうがいい"と、そう言って」
話し始めたシヴァくんは、懐かしそうに目を細めた。
その様子から、どちらもシヴァくんにとって決して辛い日々ではなかった事がわかる。
まあ、契約奴隷は、"大切に扱われる場所"に売られるんだから、当然といえば、当然なんだけどね。
「……そっか……。……なら、私もその人達に負けてられないね」
「え?」
私がそう言うと、シヴァくんはきょとんと目を丸くした。
私はそんなシヴァくんに、笑顔を向けて、更に言葉を紡ぐ。
「楽しく過ごそうね、シヴァくん! これからまた、うんと楽しく!!」
「……クレハ様……! ……はい。はい、クレハ様。また楽しい日々を過ごしましょう。改めて、これからまた、よろしくお願い致します」
「うん! またよろしくね、シヴァくん!」
「はい」
私の言葉に、シヴァくんは嬉しそうににこりと微笑んで、頷いた。
「……それじゃ、僕からも改めて。またよろしくね、シヴァくん」
「あ、私も! よろしくお願いします、シヴァくん!」
「では、私も。またよろしくお願い致します、シヴァくん」
「はい。皆さん、またよろしくお願いします」
フレンさん、ギンファちゃん、イリスさんも、それぞれ改めて挨拶して、シヴァくんがそれに返事を返した。
こうしてまた、私達は五人での生活を、再スタートさせた。




