お別れ、そして……。 1
今日も一更新です。
翌朝。
今日はシヴァくんに早朝の魚釣りをお願いした。
"この家での最後の勤めとして! ねっ、お願い!"と手を合わせて頼むと、シヴァくんはあっさりと頷いてくれた。
そうしてシヴァくんが出かけたのを確認すると、私はギンファちゃんとイリスさんに声をかけた。
「よし……! ギンファちゃん、イリスさん! シヴァくん出かけたから、私は畑の水やりに行くね。後はよろしく!」
「はい、お任せ下さい。クレハちゃん」
「すぐに終わらせますね!」
「うん。私も急いで終わらせるよ!」
そう言うと、私は駆け足で動物小屋を出て、畑に向かった。
「お待たせしましたフレンさん! どこまでできました?」
「お疲れ様、クレハちゃん、ギンファちゃん、イリスちゃん。こっちはあと少しでリビングの飾りつけが終わるよ」
「そうですか、わかりました! じゃあ私、急いで料理を作りますね!」
「お手伝いします、クレハ様!」
「では、私はリビングの飾りつけをお手伝いします! フレンさん、あとはどこを飾りつけますか?」
「ありがとう。じゃあ椅子にそこの花飾りをつけて貰おうかな」
「あ、はい。あれですね? わかりました!」
畑と動物の世話を終えた私達は、すでに準備に取りかかっていたフレンさんに合流した。
実は私達は少し前から、シヴァくんには内緒で、今日という日に"シヴァくん一年ありがとう会"を開こうと計画していたのだ。
"お別れ会"だとなんとなく寂しさが増しそうなので、名称は"一年ありがとう会"になった。
リビングを飾りつけ、シヴァくんの好きな料理のみを作る。
今日のこの食事が最後だから、"最後まで楽しかった"という思い出をシヴァくんに残せたらいい。
私達との思い出は、シヴァくんが成人して戻って来てくれるまで、もう、作れないから。
「よし、完成だね」
「はい! クレハちゃん、飾りつけ、終わりました!」
「あ、うん、ありがとう! 料理も、もうすぐ一品できるよ!」
「私のももうすぐできます!」
「あ、はい。では私、テーブルに運びますね」
「……あ。クレハちゃん、もうすぐシヴァくん、帰って来るよ。探索魔法に引っかかった」
「ええっ!? 嘘、今日早い……!! まだ料理できてないのに!!」
「……仕方ないね。僕が足止めして来るよ。その間にお願い」
「は、はい! よろしくお願いしますフレンさん!」
「うん」
フレンさんは軽く頷くと、リビングを出て行った。
「さて……! 急ごうギンファちゃん! イリスさん、料理を運んで、テーブルのセッティングをお願いします!」
「はい、クレハ様!」
「わかりました!」
私達は大急ぎで料理を作り上げた。
「…………!!」
シヴァくんは、一歩リビングに足を踏み入れた途端、目を見開いて動きを止めた。
視線の先には、"シヴァくん一年ありがとう! これからも元気で、そして幸せでいてね!"と書かれた垂れ幕がある。
動きが止まったシヴァくんを見て、サプライズ作戦は成功だねと、私達は顔を見合わせて微笑み合った。
「シヴァくん、魚釣りお疲れ様。さぁ、こっちに来て座って! 今日の料理は、シヴァくんの好きなものだけを作ったんだよ!」
「私とクレハ様で作ったんですよ! たくさんありますから、いっぱい食べて下さいね!」
「飾りつけは、フレンさんがしたんですよ、シヴァくん。私も少しだけ、お手伝いしましたけれど」
「今日はシヴァくんの帰りが早かったから、料理が間に合わなくてね。だから僕が足止めに出たのさ。つき合わせて悪かったね、シヴァくん」
「クレハ様……皆さん……。……嬉しいです。ありがとうございます……!!」
そう言って、シヴァくんは目を潤ませ、顔を歪めた。
どうやら、泣くまいとしているようだ。
「ふふっ。さあシヴァくん、座って座って! "シヴァくん一年ありがとう会"、始めようよ!!」
「そうですね! 始めましょう!!」
「シヴァくん、これの主役は君だからね? 君は座ってるだけで、いいからね?」
「その通りです! おかわりは、私にお言いつけ下さいね!」
「……はい。ありがとうございます……!!」
そう言ってシヴァくんが席につくと、私達もそれに続いた。
そのあと、皆でこの一年の思い出を語り合い、笑い合いながら、食事を楽しみ、この会は幕を閉じた。
そして……私達は、灰色猫さんが待つ、奴隷商館へと、向かった。
今日はちょっと短いですが、このあと短編集を立ち上げて、イリスとコタの避暑中エピソードをまず書きます。
今日中……には、書き上げられるといいなぁ……。




