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避暑に行こう! 17

今日も一更新です!

カップルコンテストも終わり、お祭りはいよいよフィナーレの、花火を残すのみとなった。

よく見える場所に移動してのんびり見学しよう、という話になった……のだけれど……。


「ほら、セイル! 移動するわよ! 来なさい!」

「嫌だ! 俺はこの人と一緒に行く! 結婚を承諾してもらうまでアタックし続ける!!」

「何馬鹿な事言ってるのよ! いいから来なさい!」

「嫌だ! 俺の恋路の邪魔をするなミュラ!!」

「するに決まってるでしょうが!! 私は貴方が好きなんだからっっ!!!」


コンテストの最後で女性の魔法使いさんの魅了の魔法にかかってしまったセイルさんは、同じく魅了にかかった他の男性達同様、女性の魔法使いさんから離れようとしない。

魔法のせいとはいえ、好きな人が他の女性に言い寄る様を見せられているミュラさんが、哀れでならない。


「……ど、どうしようか、この状態……?」

「……困りましたね……」

「花火が始まるまで、あんまり時間ないけど、セイルさんをこのままにしていけないしねぇ……」

「……仕方ないね。皆は花火が見える場所に向かいなよ。セイルの事は、僕とミュラさんでなんとかするから」

「え……いいのかい? フレン?」

「はい。花火より、こっちのほうが後々面白くなりますから。この先しばらくは、この醜態のネタでセイルをからかいつくせますし。シヴァくん、クレハちゃんをよろしくね」

「はい、わかりました」


シヴァくんの返事を聞くと、フレンさんは私達にひらひらと手を振って、セイルさんとミュラさんの所へ歩いて行った。


「……フレンさんとミュラさんがついてるなら、大丈夫でしょうか?」

「そうだね。時間もないし、フレンの言葉に甘えて、移動しようか」

「はい、アレク様」


私達は花火を見る為にベストスポットを探して、移動した。

これにより、かなり長い期間、セイルさんはフレンさんにこの時の事で手酷く"からかわれる"事になるんだけれど……魅了にかかって多少なりともミュラさんを悲しませた罰です、甘んじて受けるといいです、セイルさん。







夜空に色とりどりの花が次から次へと咲き乱れては儚く消えていく。

その様はとても綺麗で、私達は言葉も交わさずただただそれに見入っていた。

やがて、最後の花火が空高く咲き誇り、お祭りは終了した。


「はぁ……綺麗だったね~花火……!!」

「そうだね~! 私達の街でもお祭りの時は花火上がるけど、こんなにたくさん上がったのは初めて見たよ~!」

「いや、母上の提案で、今回はいつもより多めにしたんだよ。だからいつもはアージュちゃん達の街と、上がる数はそう変わらないはずだよ」

「へえ、そうなんですね……!」

「……さて、それじゃあ帰るか。祭りはなかなか楽しかったし、今日はいい夢が見られそうだな」

「そうですね! カップルコンテストでは優勝できましたし……嬉しかったぁ!!」

「うん、本当だよね。僕とギンファちゃんの仲の良さがこうして形になって、嬉しいな」


ライルくんはそう言って、手にしている優勝トロフィーを見た。


「……カップルコンテスト……。……思い出した。……クレハ様、失礼します」

「えっ?」


シヴァくんはいつもより少し低い声でそう言うと、突然、服の袖で私の頬をごしごしと擦った。


「な、何? シヴァくん? 何か、ついてた? あ、もしかして、さっき買って食べた焼き鳥のソース?」

「…………はい。そんなところです」

「えっ、うわ、本当に? は、恥ずかしい……ごめんねシヴァくん。ありがとう」

「……いえ……」

「けど、お祭り、本当に楽しかったね! 色々参加して、いい思い出ができたよ。途中ちょっと大変な事は起こったけど、それを差し引いても、いい旅行になったよね!」

「……そうですね。……俺も、今回の事で自分の気持ちをはっきり自覚しましたし……色々な意味でいい旅行になりました」

「へ? 自分の気持ち? 自覚? 何、それ?」

「……いえ。……ただ、クレハ様に出会えて良かったと、そう思いまして」

「ええ? 何それ、まるでお別れの言葉みた……あっ……!?」

「……あと、約、二ヶ月です」

「……。……そうだね……そうだったね」


シヴァくんの契約終了まで、残すところ、あと二ヶ月。

その事を思い出すと、私の胸に一気に寂しさが広がった。

ああ、駄目。

契約期間が終われば、シヴァくんはやっと故郷へ帰れるんだから!

本当の家族に、会えるんだから!!

私は勢いよく首を振って、その寂しさを振り払う。


「……シヴァくん! 残りあと約二ヶ月、よろしくね! あと少しだけど、今日のような楽しい思い出、まだまだ作ろうねっ!!」

「……はい」

「…………」

「…………」


そのあと、別荘に帰るまで、私とシヴァくんは無言で歩いた。

何かを話そうと思うのに、何故か話す言葉が見つからなかった。


そして、夜が明けると、私達は数日過ごしたシュピルツの街に別れを告げて、自分達の住む街へと、帰路についた。


やっと避暑終わりです。

……長かった。

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