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避暑に行こう!  16

今日も一更新です!


今日はちょっとだけ長いかもです。

午後の美青年コンテストと、美少女コンテストはそれぞれただ一人の独壇場で幕を閉じた。

美少年の中の美少年であり、この国の王子殿下であるフェザ様。

そして代々領民に慕われる領主の家の一員であり、美貌の持ち主であるアイリーン様。

誰もこの二人に対抗などできるはずもなく、優勝はあっさりと決まった。

アイリーン様は、『あらあら。"美少女コンテスト"なのに、私が優勝なんていいのかしら? 私、さすがに"少女"と呼ぶには、無理があると思うのだけれど』と言って笑っていた。

ちなみに、同じく領主の家の一員であるアイリーン様の息子のアレク様も出場はしていたが、さすがに王子殿下の人気には敵わなかったようだ。







そして夜になり、いよいよカップルコンテストが開催される時間になった。

私はフレンさんの隣に立ち、やや緊張した面持ちで見学席を見つめていた。

各コンテストを見学している人が多くいる事はもうわかっていたけど、出場者側から見ると、本当にたくさんいる事が改めて見てとれて、徐々に緊張は高まっていく。

うぅ、緊張しすぎて変な事しないように気をつけなきゃ……。

横目でちらりと周りを見ると、フレンさんやミュラさん、アレク様は平然としていた。

ギンファちゃんとライルくんは、もうお互いしか見えていないようで、緊張はしてないらしかった。

いや、とりあえず今は、正面の見学席を見ようよ、と心の中だけで突っ込んでおく。

セイルさんはどこか困惑したような表情で、口元だけになんとか笑みを浮かべている。

アージュは私と同じく緊張しているようで、アレク様の袖を摘まんで固まっていた。


「皆様、お待たせ致しました! これよりカップルコンテストを始めます! こちらには夏の暑さにも匹敵するほどの熱々カップル、8組がずらりと並んでおります! 判定方法は、見学席の皆様にどのカップルが一番熱々だったかを、最後に投票するという形で決めさせて戴きます! 優勝するベストカップルは果たしてどの組か……まずはこて調べ、お互いの事をどこまで知っているか、質問をしていきたいと思います!」


そう言って、司会者は出場者のほうを振り返った。


「では女性の方にお聞きします! 貴女の彼氏の一番好きな料理は何ですか? 右端の方からお答え下さい!」


司会者は言いながら右端の女性に近づき、手にしたマイクを向けた。

女性がそれに答え、男性が事前に書かされた大きな回答用紙を広げる。

見学席から拍手が沸き起こった。

無事に正解したらしい。

……フレンさんの、一番好きな料理かぁ。

フレンさんは、辛いものが好きなんだよね。

でも……一番好きなものってなんだろう?

どうしよう、わからない。

これがシヴァくんなら、きのこと鶏肉のソテーハーブ入り、なんだけどな……。

辛いもの、辛いもの……フレンさんが一番美味しそうに食べてたものって何だっけ……?

私は必死に記憶を辿った。


「お待たせ致しました! さあお嬢さん、貴女の彼氏の一番好きな料理は何ですか?」


必死に考えていると、あっという間に私の番になったらしく、司会者は私にマイクを向けてそう尋ねた。

う……っ、こ、これで合ってるかな?

私はひとつの料理を思い浮かべたけど、確証が持てず、不安げにフレンさんを見上げた。

するとフレンさんは私を見つめて微笑み、頭を優しく撫でてくれた。

その目はまるで、"君は間違えないから大丈夫"と言っているようで……私は今度はプレッシャーを

感じた。

けれど、いつまでも黙ってるわけにはいかない。

私は意を決して口を開いた。


「……チ、チキンカレー……?」


あ、しまった、語尾が疑問形になっちゃった……!


「チキンカレー、ですね! 疑問形の自信なさげな返答ですが、さて彼氏さん、正解は?」


司会者がフレンさんに視線を移し、私も恐る恐る再びフレンさんを見上げた。

フレンさんはにっこりと笑い、回答用紙を広げた。

そこに書かれていたのは。


「おお、チキンカレー! 正解です!」


あ、当たってた!

良かったぁ……!!

そっか、フレンさん、チキンカレーが一番好きだったんだ!

覚えておこう。


「では、次の質問です! 今度は男性にお聞きします! 貴方の彼女の、一番大切なものは、何ですか? 今度は左端の方からお答え下さい!」


左端。

つまり私達からだ。

私の一番大切なもの……それは家族と友人、つまりうちの動物達やシヴァくん達、アージュやアイリーン様、セイルさん達だ。

なんだけど……フレンさん、わかるかなぁ?

錬金術とか答えたらどうしよう……。

私の大切なものなら、それでも間違いではないし。

ただ、"一番"ではないだけで。

フレンさんは一度私を見ると、すぐに視線を司会者に戻し、口を開いた。


「そうだね……周囲の人間。……家族や友達、ってところかな」

「はい、家族や友達、ですね! では彼女さん、正解は?」


フレンさんの回答に、私はホッと安堵の息を吐きながら回答用紙を広げた。


「家族と友人! 正解ですね!」

「良かった。合ってたね。……けど、クレハ? いつかは、この答えが"僕"になってくれると、嬉しいんだけど?」

「えっ!?」


フレンさんはそう言って、私の頬を撫でた。

私はカチンと固まる。


「おやおや、お熱いですね。火傷をしてしまいそうなので、次の方に参りましょうか」


司会者が次の人に質問する為に移動しても、フレンさんは面白そうにクスクスと笑って私の頬を撫で続けた。

……そ、そろそろやめて下さいませんかフレンさん……?

私は声に出さずにじとっとフレンさんを見つめる事で抗議した。

するとフレンさんは仕方なさそうに肩を竦めて、私の頬から手を離してくれた。

その間も司会者による質問は続いていたようで、時折拍手と落胆の声が上がっていた。


「さて、最初のこて調べはこれにて終了です! それでは次に移りましょう! 次は……これは恥ずかしいと言われる方もいるかもしれませんね。……キスをしていただきます!!」

「っ!?」


きす……って、魚の?

魚のだよね!?

夫婦や恋人がするやつじゃあないよね!?

魚のきすを、二人で調理するんだよね!?

何を作ろうね~!?

そんなふうに私が現実逃避に入ると、見学席からガタッという音がした。

見ると、シヴァくんが赤いような青いような顔で立ち竦んでいた。

……シヴァくん……?

どうしたんだろう?

私は目をぱちぱちと瞬いた。


「あ~あ……どうしようね、これ。……クレハちゃん、ちょっとだけ我慢できる?」

「へっ!?」


フレンさんは小声で呟くと、司会者に声をかけた。


「ねぇ、僕達からやっていいよね?」

「はい! 結構ですよ、どうぞ!」

「ありがとう。……じゃあ、クレハ。目を瞑って?」

「え!? えっっ!? フ、フレッ」


フレンさんは私の後頭部に手を回し、その顔を近づけてきた。

ちょっ……ちょちょちょちょっと!?

フレンさん~~~!!??

逃げる事もできずに、私は身を固くしてギュッと目をきつく閉じた。

そして……柔らかいその感触は、私の頬に落とされた。

………………えっ?

私が目を見開くと、フレンさんは微笑み、次いで司会者に視線を向けた。


「これでいいよね? 場所の指定はなかったんだし。これ以上の事は、この子がもう少し大きくなってからだって、この子の保護者に止められてるんだ。なのに手を出したら、僕、八つ裂きにされるだろうし。……そこに棒立ちしてる、兄代わりの子……とかにね?」


フレンさんがそう言うと、司会者はもちろん、見学席にいる人達の視線がみんな、シヴァくんに集まった。

注目されて我に返ったのか、シヴァくんは気まずそうに席についた。


「え……あ、ああ、なるほど。そうでしたか。確かに、その彼女はまだ可愛らしい女の子ですしね。ええ、構いませんよ。ですがその場合、両頬にと言われていますが」

「両頬、ですか。わかりました」


司会者の言葉に頷くと、フレンさんは私のもう片方の頬にも同じようにその行為を繰り返した。

その後、どの出場者も、これだけの人数の前ではやはり恥ずかしいのか、本当にすることはなく、両頬へのキスで済ませた。

司会者が困ったように、『う~ん、これではあまり意味がありませんねぇ』と呟いた。

私はかつてないほど顔の熱さを感じながら、それを聞き流した。


「さて、それでは気を取り直して! いよいよ最後です! 最後は、貴方達の愛を試させて戴きます! 一組ずつ、異性の魔法使いに魅了の魔法をかけさせて戴きます。もちろん、心の底から愛する人がいる人にはかからない程度に加減をして、です。つまり、恋人を思う気持ちが軽いものだと、魅了の魔法にかかってしまうという事です!」


えっ、嘘……!?

それじゃあ、私もフレンさんも魅了されちゃうって事じゃない!?


「魅了されても、数時間で効果は切れますが、恋人以外の異性に迫る事になりますからね~。あとが大変ですよ? さぁ、それでは、魔法使いのお二人に登場して戴きましょう!」


司会者がとても聞き流せそうにない事をさらりと言うと、見学席の後ろから男女各一名の魔法使いが現れた。

……そのあとは、もうグダグダだった。

私達以外の出場者はほとんどが賞金目当ての即席カップルだったらしく、まともなカップル、つまり魅了されなかったカップルは一組しかいなかった。

なんとセイルさんも魅了されてしまい、ふらふらと女性の魔法使いの元に歩いて行き、膝をついてその手を取り、なんと求婚しだした。

男性の魔法使いの魅了にかからなかったミュラさんはその様を見て、悲しそうな目をしていたものの、『まだセイルの心を掴んでいたわけじゃないから仕方ないわ。でも、諦めないわよ』と言っていた。

アージュとアレク様、ギンファちゃんとライルくんは魅了されず、その気持ちの強さを証明した。

そして、私とフレンさん。

フレンさんは魅了されかかったけれど、一、二歩、魔法使いの女性に近づいただけで、他の人のように求婚したり抱きついたりなどの醜態は晒さなかった。

根性か、プライドか……どっちかな?

最後に、私はと言えば……何故か、魅了されなかった。

"心から愛する人がいる人はかからない"って事だったけど、私にはまだそんな人はいないはずなのに……おかしいなぁ。


そして、このカップルコンテストは、なんとギンファちゃんとライルくんが優勝した。

まあ、普段からこの二人のラブラブぶりは凄かったから、当然と言えば、当然かな。

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