表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/19

黒わらし

 僕の実家は山形県T市の田圃だらけの平地にある集落の旧家だった。蔵のある古い家で、もとは地域一帯の地主だったらしい。家は非常に裕福で、不自由ない生活を送らせてもらった。

 僕の父親は、いつも何かに怯えていた。

 父は、毎日、奥の間に大切に祀られている黒いこけしのようなものに、高級な和菓子や飲み物をお供えしていた。

 父からは、そのこけしに絶対にいたずらしないように言われていた。僕も弟や妹も、何かそのこけしにはおぞましいものを感じており、いたずらしようなどとは一切考えなかった。


 僕が高校に入ったとき、父がそのこけしのようなものについて教えてくれた。

「こいづは黒わらしだ」

「こいづば祀ってるから、うちは栄えてる。家長が世話する慣わしだ。粗末にすっと不幸が起こる」

「たまに夢さ出て、ああしろこうしろと指示してくんだ。人には言えんようなこともしとる」

「おっがないもんだ。こんなもん捨ててしまいたいが捨てられねえ。戻ってきちまうし、そのたび悪いことが起こる。んだがら、お前らにはうちば継がせたくねえ」


 僕は、東京の大学に出て、そのまま就職して実家には帰らなかった。弟も実家には残らなかった。父がそうさせたのだ。

 ある日、地元の警察から電話があった。実家が全焼したのだ。父がやったのだとそう思った。

 父の遺体は、黒い棒のようなものを握りしめていたらしい。こけしくらいの大きさの。


 母も僕も弟も、父の財産を一切相続しなかった。これは生前に父と約束していたことだ。

 父の目論見どおり、僕らは黒わらしから解放されたはずだと思った。


 父の葬式からひと月。実は最近転職に悩んでいた。疲れて仕事から帰ると、一緒に暮らしはじめた母が真っ青な顔で立っていた。僕の部屋のテレビの上に黒いこけしのようなものが立っていたのだ。

 次は僕が選ばれたようだ。

なんでこけしになったんだっけ。座敷童ってなんか怖いイメージがあります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ