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雪鬼

 大雪の日には雪鬼が現れる。だから大雪の日は外に出てはいけない。

 雪鬼は子供が好物だ。だから大雪の日は子供を一人にしてはいけない。


 朝からしんしんと雪が降っている。ここのところ大雪が続いて外に出れない日が続いていた。

 かよは、まだ小さい息子と二人きりで過ごしていた。息子が熱を出してしまったが薬がない。この雪では商人はしばらく村に来ない。夫は町に仕事に出てあと数日は戻らない。

 かよは、雪が弱まった瞬間を見計らって、息子を残し、薬を分けてもらいに出かけた。息子は離れないでと手を握ったが、かよは、すぐだからと言い聞かせて外に出かけた。まだちらほらと雪が舞っていた。


 かんじきを履いて雪の上を歩いていると、大した距離でもないのに、いつもよりも随分と道のりが遠く感じられた。向かう先からざくざくと雪をかきわけて歩いてくる大柄な影があった。近づくとそれは雪鬼であった。

 雪鬼に背を向けて逃げては行けない。喰われてしまう。母の教えを思い出す。

 雪鬼は、かよに話しかける。

「おめ、喰っでいいのが」

 かよは、震えながら、声をふりしぼった。

「わしは病気でうまぐない。あっちさうまそうな人がいだ」

 かよは民家のない適当な方向を指差そうとしたが、気づけば周りには雪原がどこまでも広がり、自分が来た道すらわからなくなっていた。

「わがった。んだらば、別なやつば見づけで喰う」

 雪鬼は何もない方向に向かってざくざくと大股で歩いて行った。


 かよは途方に暮れながら雪原を歩き続けると、見覚えのある民家に辿り着いた。村外れの猟師の家であった。薬を分けてもらい、また雪鬼に会うのではないかと怯えながら、急いで帰路についた。


 家に着くと、息子がいない。

 息子の布団がずたずたになっていた。囲炉裏の周りが血に濡れていた。

 かよはおんおんと泣いた。

雪が降っていたので書いた。昔話っぽくしようと思ったらどこかの民話のパクリみたいになってしまいましたね。

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